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「地球図」
        『Es空の鏡』第6号(2003年11月)掲載
                ─「特集・層」参加作品─



  遠心力の向きに頭を打ちそろえ羊歯なびく星夜赤道直下
                   みなも
  釣り糸はしずかに垂らす水面より空いちまいを剥がしてみたく

  法則によりて昇りし風船が空の真青にするどく刺さる

  街路樹の葉末病む夏地中なる甘き泉に根はしのび寄る

  鉄の船虜囚とともに放つべく海にまっすぐ向く滑走路
                                     お
  しののめの気圏の中を硬派なる星は燃え尽きながら隕ちくる

  列島の危機を伝えて地下深く四周に及びゆける地震波

  幾億の地層を穿ち球心よりときおり熱きものの噴き上ぐ
          
  新しき種は生れ初めむ寒暖のふたつ海流ぶつかるところ

  大海に注ぎたる美酒 水よりも少し重たきものは沈みぬ

 


   「明日」「街角の定型論」「運ばれゆくもの」「蠢」「あやはべる、くせはべる」「描かれざりし絵」
   「季のめぐり」「名無しの刑」「戻る日」「初雪以前」「ひとでなし」「転生祈願」「僕の実験」
   「撮影禁ズ」「水辺の街にて」「話ぎらい」「箱の中身」「ペンは強いか」「うそ童心」 / 「遠い地平」 /
   
「バスケットケース」 / 「けるかも」
   目次 歌集『風見町通信』より 『アンドロイドK』の時代『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ 短歌作品(2008年以降)
   
一首鑑賞 新作の部屋(休止中) うみねこ壁新聞 作者紹介