「けるかも」
『Es叉路』第14号(2007年11月)掲載
−「特集・盗作」参加作品−
さかしらなみ
最上川逆白波のたつ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ
隅田川逆白波のたつ宵をひとつ妓楼に啼く鳩時計
大井川逆さ睫毛のぬすびとが渉りゆくなり月夜の晩を
て
天の川越すに越されぬ川なれば月は東に光るほかはなく
面の皮さつま白波呑むほどにゆるむゆふべのこのていたらく
かささぎの渡す橋あるひと夜さを自動ピアノの鳴りにけるかも
さか ま も
子はなべて賢しらなるを人として近く目守りてゐたりけるかも
かはづ
人間にだけは渡さぬ覚悟もて蛙なにやら産みにけるかも
い
産みたるは子にはあらざる何かにてそのままにして去ににけるかも
大きなる手があらはれて命をばうへからむんずとつかみけるかも
・「地球図」 / 「明日」 / 「街角の定型論」 / 「運ばれゆくもの」 / 「蠢」 / 「あやはべる、くせはべる」 /
「描かれざりし絵」
/ 「季のめぐり」 / 「名無しの刑」 / 「戻る日」 / 「初雪以前」 / 「ひとでなし」 / 「転生祈願」 /
「僕の実験」 / 「撮影禁ズ」 / 「水辺の街にて」 / 「話ぎらい」 / 「箱の中身」 /
「ペンは強いか」 /
「うそ童心」 /
「遠い地平」 / 「バスケットケース」 /
目次 / 歌集『風見町通信』より / 『アンドロイドK』の時代 / 『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ
/ 短歌作品(2008年以降) /
一首鑑賞
/新作の部屋(休止中) / うみねこ壁新聞 / 作者紹介