「撮影禁ズ」
       『Esさざめき』第11号(2006年5月)掲載
         
−「特集・今どきの写生」参加作品−



   裁かるる以前の罪も浮かばせて法廷画家は描けりその顔

   真相は世界に向けて語るのだ “I can speak English a little.”

   喉深く呑まれゆく見ゆ感情も認否述べらるべき罪状も
                       
くだり
   身に覚えあるのかどうか 手を下す件にてひひと被告は笑う

   言い訳はしない代わりに何ものか虚空より手に千切っては投げ

   緘黙と黙秘は違う さはされどただに坐しおり声なき者は

   人たらむ意思もなければ他力にて引き立たされし姿勢にて佇つ

   それ以外あるはずもなき結末を待ちおり次の段階として

   佯狂と決まりしのちに裁きやらむ昔なしたる狂気の沙汰は

   かつて鬚ありしあたりの襟元に見えてかっさばきたき喉笛


   「地球図」「明日」「街角の定型論」「運ばれゆくもの」「蠢」「あやはべる、くせはべる」
   「描かれざりし絵」「季のめぐり」「名無しの刑」「戻る日」「初雪以前」「ひとでなし」「転生祈願」
   「僕の実験」「水辺の街にて」「話ぎらい」「箱の中身」「ペンは強いか」「うそ童心」 / 「遠い地平」 /
   
「バスケットケース」 / 「けるかも」
  
目次歌集『風見町通信』より『アンドロイドK』の時代『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ / 短歌作品(2008年以降)
   
一首鑑賞新作の部屋(休止中)うみねこ壁新聞作者紹介