「ペンは強いか」
       『Es滾滾』第13号(2007年5月)掲載
         
−「特集・社会詠は可能か」参加作品−



   行きずりの本気の恋の責任は取らなくていいもう過去だもの

   打って変わって世界は闇だ自らの瞼の裏を見ようとすれば

   正義なる側の右手に操れば銃に似てくる羽毛のペンも

   はしなくも起こる不幸の数々がひとごとだからよけい気になる

   この平和な宇宙のどこか縁ありて他人同士が撃ちまた撃たれ

   何度でも勝てば流れてくる国歌うたいたいだけうたっておおき

   鬼のまま死んでいったよ罪という生きた証をこの世に遺し

   いくらでもあるのでどうぞご自由に 貧しき子らとその笑顔なら

   あやふやな犯意に支えられながら歴史は次の一線を越ゆ

   敗戦は何の始まり清らかな水がそのとき寝耳にかかり


   「地球図」「明日」「街角の定型論」「運ばれゆくもの」「蠢」「あやはべる、くせはべる」
   「描かれざりし絵」「季のめぐり」「名無しの刑」「戻る日」「初雪以前」「ひとでなし」「転生祈願」
   「僕の実験」「撮影禁ズ」「水辺の街にて」「話ぎらい」「箱の中身」「うそ童心」 / 「遠い地平」 /
   
「バスケットケース」 / 「けるかも」
  
目次歌集『風見町通信』より『アンドロイドK』の時代『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ / 短歌作品(2008年以降)
   
一首鑑賞新作の部屋(休止中)うみねこ壁新聞作者紹介