ひそ ひら
風の行く手仰げば見ゆるほの白き遠花火そこに寂かに咲き
罪なき死尽きせぬ糧として存ればさこそ若々しけれ宇宙は
天心より蝶湧き出づる真夜あるをそのかみ人も神も夢見き
懺悔こそ馬鹿馬鹿しけれただわれは踏絵強いられざれば踏まずと
おわ も
焉りなる今日とし思えば桜木は硬きひと粒の種子を掲げて
水という水身中に響り出づる夕べ恋い初めたり樹医は樹を
兵役拒否権行使したれば君のための闘いはいつも君が始めよ
讃うべき歌にてあれば八千代なるその歌は春の風に千切れて
やがて来らむ終末ののち伝説の巨人国境をまたぎてゆかむ
しじま
終わりたるのちの静寂をどん一つ届きて空に花火闇閉づ
・「居酒屋しろねこ亭」
/ 「爆心紀行」 / 「犬帰る」 / 「生誕前夜」 / 「未来史稿」 / 「ひかりの季節」 / 「やさしい神」 /
「青髭公異聞」 / 「第五間氷期まで」 / 「不自然淘汰説」 / 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」 / 「木々起立」 / 「花の綺想曲」 /
「ある帰郷」 / 「はつゆめ枕」 / 「僕らの時代」
目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『アンドロイドK』の時代 / 歌集以後発表の新作 / 一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) /
うみねこ壁新聞
/ 作者紹介