「花の綺想曲」
『Es黒月』第4号(2002年11月)掲載
─「特集・裂く」参加作品─
あさ さ
初夏、やわき花唇に刺さるさらさらと朝な朝な降る光の塵は
平和主義者のヤコブその朝豆の木より下りてきて銀の梯子を外す
あお
おもむろに広き世界を浸しゆく青葉闇より碧き花影
はちす ひら ひら
蓮なる浄土の花はひそやかに自らを剖くごとくに咲く
お
蝉鳴とともに焉えたる声ありて言霊は翅の緑にやどり
十六夜にセイタカアワダチソウ炎えて低きなだりは人を近づけぬ
いまだ冬近からざるに物言えば寒き唇は縦に結ぶ
はっしとぞ両の耳たぶ掴みたる手にて引き裂かれゆくシンバル
瞼より切り離されし角膜のやがて映さむ未来のために
ろ な
顱頂より湧き出づる楽ばらばらとまろびて街に響るカプリツィオ
・「居酒屋しろねこ亭」
/ 「爆心紀行」 / 「生誕前夜」 / 「未来史稿」 / 「ひかりの季節」 / 「やさしい神」 / 「どん」 /
「青髭公異聞」 / 「第五間氷期まで」 / 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」 / 「木々起立」 / 「ある帰郷」 / 「はつゆめ枕」 /
「僕らの時代」
目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『アンドロイドK』の時代 / 歌集以後発表の新作 / 一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) /
うみねこ壁新聞
/ 作者紹介