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「第五間氷期まで」
         『Esパラディウム』第3号(2002年5月)掲載
        
─「特集・液体」参加作品─


                     くうげ
   死なむ気もなきわれらには供華さえ無縁にて空に流す賛美歌

   くろぐろと日ごと濁れる湖に陽はいちまいの鏡を沈め

   いかに蘊蓄あらざれど聴く太古より届く微かな風のおわりを
                           
うみ
   そのための穴をぞ抜けてここよりは見えぬ湖より釣れるわかさぎ

   幾億の昼夜はめぐりいのちあるものらふたたび眠る氷河期
          
  くだ                     し
   光年の距離より降るはらはらとあまた歳月経し光の屍

   進んでは見むとせざりしわれらゆえ死してのち目は恥じつつ開く

   いにしえより浮かぶ球体しんしんと冷気湛えいたるガラス器に

   物なべて眠れる夜に惑星はひともとの知恵の生る木を宿し
             
    そら
   螢限りもなく飛び交える宙にありてひっそりと昇華してゆく地球


   「居酒屋しろねこ亭」「爆心紀行」「生誕前夜」「未来史稿」「ひかりの季節」 「やさしい神」「どん」
   「青髭公異聞」 「不自然淘汰説」 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」「木々起立」「花の綺想曲」「ある帰郷」「はつゆめ枕」
   「僕らの時代」
   目次 歌集『風見町通信』より 『アンドロイドK』の時代歌集以後発表の新作一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) うみねこ壁新聞
   
作者紹介