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「不自然淘汰説」
         『Esパラディウム』第3号(2002年5月)掲載



   革命家自死なす前の銃口のうつろ裸形の王は狙わず

   聖断など聞かず僕らは両耳にイヤホンの丸き玉突き刺して

   サアミンナ輪ニナリマショウ。オドリ踊リ、歌ウタイ、手ト手取リ合イマショウ。
       
  せきし
   すべからく赤子に還る年経れば人は新しきことより忘れ
     
  よ
   椿散る夜の奥の間におそらくはあらむ一幅の人魚の絵

   若き死の葬儀ののちに残さるる悲しみをついに知らぬ悲しみ
                          
   いちにん
   聖餐にうから集えるその中にいたく病みたる一人のあり
 
  エヨウエイガ
   栄耀栄華望まざれども薄き身を焦がしおりじりじりと火取り蛾

   あさつゆの露命しみじみ惜しむがに草の緑を吸うるりしじみ

   しかすがに雨はやさしき 人あらぬ野にはしろつめくさ敷きつめて

   空に焦がるる者多き世にひとり異をあおむしはあおむしのままにて唱う

   絶滅種思い出さるる耳尖らせ夜ごと欠けゆく月聴きおれば
                            
  せな
   ゆうらりとからだを揺らすしのびつつ泣くための背もたぬ駱駝は
                
  つま           のぼ
   イブならぬわれにひとりの夫あるかかの皇統を遡りし果てに
                   
  くだ
   天蓋は夜ごと日ごとに遠ざかり降るべき神の声も聞こえぬ


   「居酒屋しろねこ亭」「爆心紀行」「生誕前夜」「未来史稿」「ひかりの季節」 「やさしい神」「どん」
   「青髭公異聞」「第五間氷期まで」 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」「木々起立」「花の綺想曲」「ある帰郷」「はつゆめ枕」
   「僕らの時代」
   目次 歌集『風見町通信』より 『アンドロイドK』の時代歌集以後発表の新作一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) うみねこ壁新聞
   
作者紹介