「はつゆめ枕」
『Es脈』第5号(2003年5月)掲載
─「特集・神への後退」参加作品─
亀の歩みふとも止まりてアキレスと肩を並べむまで後ずさる
造物主おわさぬ地にて人なるは人の生みたるものより生まれ
ひ
振り返ることなく退きしもののふの影千尋の谷へと引かる
へい
生きてあれば幣いそいそと奉る死とともに不死得たる御霊に
つわものも虫も眠れる奥つ城に晩夏くさばなたちが見る夢
先住民絶えて久しき島なれば諸人住まわむとて来たりませ
あ な
人として立つ者あらぬ野に生れて果てしなし百鬼並み行く夜は
水鏡に映る麗姿を引き剥がし鳥は揚がれる水面を乱し
め お て
七人の女男福耳をふりかざし追い風に帆掛けて首都へ首都へと
とりけもの
湯屋廃業の危機に臨みて土臭き鳥獣木々の精らも集う
・「居酒屋しろねこ亭」
/ 「爆心紀行」 / 「生誕前夜」 / 「未来史稿」 / 「ひかりの季節」 / 「やさしい神」 / 「どん」 /
「青髭公異聞」 / 「第五間氷期まで」 / 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」 / 「木々起立」 / 「花の綺想曲」 / 「ある帰郷」 /
「僕らの時代」
目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『アンドロイドK』の時代 / 歌集以後発表の新作 / 一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) /
うみねこ壁新聞
/ 作者紹介