「見えぬ声、聞こえぬ言葉」
              『マラソン・リーディング2002』朗読作品
                   
2002年7月6日、於・浜離宮朝日ホール(小ホール)



   聞こえますかわたしの声が あなただけが見ているはずの景色の中に

   まるで死んでいるのと同じようにして色を失い、弾まなくなり

   声は、でも意味だけを伝えようとして景色の底でふるえています

   見えますか仔馬のような瞳もつあなたにならば木々の匂いが

   枝鳴らす風の軌跡とたゆみない時の流れの交わるところ

   空中に生まれるはずの新しい音楽が天の赦しのように

   形なきものの力はわたしには及ばないただの光、まぼろし

   声にしてみるんだ 見えぬわたしにだけ見えている言葉伝えるために

   聞こえますかわたしの声が やがて来る最後の夜の闇の中でなら

   失った光のことも思い出す夜明けまで目は閉ざしたままで

          

  聞こえますかわたしの声が
  あなただけが見ているはずの景色の中に
  まるで死んでいるのと同じようにして
  色を失い、弾まなくなり
  声は、でも意味だけを伝えようとして
  景色の底でふるえています

  見えますか
  仔馬のような瞳もつあなたにならば
  木々の匂いが
  枝鳴らす風の軌跡と
  たゆみない時の流れの交わるところ
  空中に生まれるはずの
  新しい音楽が

  天の赦しのように
  形なきものの力は
  わたしには及ばない
  ただの光、まぼろし
  声にしてみるんだ
  見えぬわたしにだけ見えている言葉
  伝えるために

  聞こえますかわたしの声が
  やがて来る最後の夜の闇の中でなら
  失った光のことも思い出す

  夜明けまで目は閉ざしたままで

 


   「居酒屋しろねこ亭」「爆心紀行」「生誕前夜」「未来史稿」「ひかりの季節」 「やさしい神」「どん」
   「青髭公異聞」「第五間氷期まで」「不自然淘汰説」「木々起立」「花の綺想曲」「ある帰郷」「はつゆめ枕」
   「僕らの時代」
   目次 歌集『風見町通信』より 『アンドロイドK』の時代歌集以後発表の新作一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中)
   
うみねこ壁新聞 作者紹介