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「犬帰る」
             『遊子』第8号(2001年4月)掲載



   信薄き懦夫にてあれば嬉々として神も仏もなき街に住む

   コノげーむニハ終ワリトイウモノハアリマセンはるまげどんナド迷信ナノデス

   <ヒト>オ好ミニヨリ如何ヨウニモ調製シマス。壊レタ時ハ修理イタシマス。

   粛清を逃れ燦たる王国に生き継ぐ無知蒙昧を糧とし

   短からぬ一生にして味方なるはやがて重たからむゆえ拒む
                  ふるさと
   捨てられしかの日棄てたる故郷に笛吹きは笛捨つべく帰る

   復讐ノシ方教エマス生キ残ッテシマッタ可哀ソウナアナタノタメニ

   あれは捨てたはずの母、両手いっぱいに語るべき人生ぶら下げて

   遠からぬ冬来るべき暗闇に勝者たるべく目を慣らしおく

   景色ふと遠のく刹那兆したる遮音ガラスの外側の濡れ

   憐れみに延べしどの手も払われて縋りくる声す コロサナイデ

   そんなあなたであるから誰もが殺したくなくなる コノママジャトテモコワイ

   もう死んだも同然の者らうようよと居てくれるから コワクナイ、モウ

   恥ずかしいからって顔を俯せながら媚びてるように言うの コロシテ

   眠らぬ街いよよ華やぐ必ずしも忠義ならざる犬を放てば


   「居酒屋しろねこ亭」「爆心紀行」「生誕前夜」「未来史稿」「ひかりの季節」 「やさしい神」「どん」「青髭公異聞」
   「第五間氷期まで」「不自然淘汰説」 「見えぬ声、聞こえぬ言葉」「木々起立」「花の綺想曲」「ある帰郷」「はつゆめ枕」
   「僕らの時代」
   目次 歌集『風見町通信』より 『アンドロイドK』の時代歌集以後発表の新作一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中) うみねこ壁新聞
   
作者紹介