「癒されぢごく」
『遊子』2号(1996年2月)掲載
縁側はこの世のふちか 托鉢の僧通りゆくまどろみの外
に せ
似而非アリスは鏡の国では生きられないどこの誰にも似ていないから
人質を殺しえざりしこと悔いてピカレスク隠し読む未決囚
おのが身を賭するごとくに地に坐してしずかなり囚われの博徒は
身も凍る寒さ逃れて地下駅に夕刊紙広げいたる放火魔
あつ
時満ちて宿り初めにし魂を収むべくこけし職人街へ
ねぐら
エジプト
塒もとめカプセルホテルに迷いこむ埃及から来たミイラ盗人
だま
操作係の青年月に誑されて楽し堂々めぐりの木馬
時を駆ける少女と知らず青年は来るべき明日の夢を語りき
恥ずかしがらず真直ぐに見てやらなくちゃ あんなにも僕らとちがうのだから
治癒言い渡されし白昼 ハテ、俺ハイツカラコンナ男ダッタカ
しんじつを知りてしまいし人の名のまたひとつ神の指にて消さる
おとめ
適わざりし夢は処女のかたちして夜ごと来るソラリスの海より
ビル街にてふと振り返る風の午後昔むかしのあだ名で呼ばれ
頭なでられながら心はうわの空 もうやめて、イヌという差別語は
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目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ / 短歌作品(2003〜07年)
/ 短歌作品(2008年以降) /
一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中)
/うみねこ壁新聞
/ 作者紹介