「さよなら天使」
『遊子』創刊号(1995年5月)掲載
イコン展行きそびれ心憧るる背くべき神います荒野に
潔い手つきにいつも手を引いて僕たちは誰も裏切らなかった
白き細き手より硬貨を恵みやるとき胸逸らし隠すロザリオ
握手ようやくほどかれしのちあたたかき掌に残さるる一沫の疑義
正しさは街に溢れてやすやすと暴かるる心からなる嘘も
翼掲げ降りてくるいつもエンゼルは救くべき弱き者らの上に
かたち
陽にまぎれゆきし少女らもろともに風去りて象のみのオルガン
懺悔はや為し終えし夕われついに犯しえざりし罪を忘るる
信ずれば救わるる神の御言葉を聴くとき僕ら瞼をふさぎ
ぬか う
みどり児の定まりがたき首押さえ額にするどき聖水を点つ
葉擦れ止む刹那やさしく降りきたる声 今ハマダ信ジテハダメ
銃向けて立たしめておくぎくしゃくとしない四肢もつ人と為すまで
もう見向きもされぬまで嬲り尽くされし今なれば きみ、庇いてやれる
街ぐるみ楽土を指して翔ちゆけり百万対の靴を残して
孤児ひとり未来見ており落雷に断たれしものの立つ岸辺より
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目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ / 短歌作品(2003〜07年)
/短歌作品(2008年) /
一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中)
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