「アンドロイドK」
『遊子』第6号(1999年4月)掲載
弱ケレバ誰デモヨカッタ 強くない僕がはじめてささえるために
愛してると一度ぐらいは言われたくて支えきれない人を支えた
脚よわき踊り子だから僕のほか誰も愛さないから愛した
幻の革命前夜一度きり裏切るために人を愛した
無二なるといつしか決めて、その人をいつか裏切る前に殺した
はじめてだったからいくたびもいくたびも生き返らないように殺した
愛の結晶などと言われてあらかじめありふれた過去を持って生まれた
あお
ぶくぶくと腹太らせて致死量に満たぬ美味なる毒を呷った
言葉より先に思いを伝えくるその肉声に耳を塞いだ
三日三晩降りつのる雪 ドウシテモ裏切ラレタクナクテ殺シタ
いちばんいい時代もあったあの日々を忘れてしまおうとして、殺シタ
バモイドオキ 僕だけのための神だから僕だけのために僕が名づけた
思い出してはいけないことを思い出し夢の中過去へ過去へと逃げた
わ ら
ひさかたの光降りしく雨上がりあたりまえのことにふいに微笑った
ねじ一本自ら抜けば心持たぬアンドロイドのように壊れた
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目次 / 歌集『風見町通信』より
/ 『見えぬ声、聞こえぬ言葉』のころ / 短歌作品(2003〜07年) / 短歌作品(2008年以降) /
一首鑑賞 / 新作の部屋(休止中)
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