平泉高館直下の近景 (2004年4月18日撮影) ![]() 高館・平泉バイパス工事による眺望の崩壊 無量光院を後にして、高館に向かった。大きな高館義経堂の看板を曲がると、およそ観光地には似つかわしくない東北電力の変電所がどっかと腰を下ろしているのが見えた。でも少し眺望が変わっている。ふと見れば、高館に向かって真っ直ぐに参道が新設されていたのだ。またバスの停留所も設置されている。来年のNHKの大河ドラマ「源義経」にあやかっての配慮だろうか。
新高館橋から高館と焼石岳遠景 今、平泉は春真っ直中である。夜中に電話があり、「佐藤さん早く来ないと、平泉の桜は散ってしまうよ」と言われた。矢も立てもたまらなくなった。始発列車に飛び乗って、春たけなわの古都平泉に着いた。でも思ったような人出はない。ゴールデンウィークに予定されている藤原まつりを控え、花満開の平泉なのに、むしろひっそりとしている。とても東北有数の観光地とは思えない。まず一本の枝垂れ桜の待つ柳の御所に向かった。見事に咲いていた。しかしかつてこの時期になると雪解け水を満々と湛えて青く流れる大河北上川は、その影すら見えない。枝垂れ桜の背後には、巨大なカステラのように見える黄色の土塊が横たわっているだけだ。こんな醜い姿を晒す原因はもちろん平泉バイパス工事にある。世界遺産にならんとする古都平泉に安易に建設された負の工事のツケは余りに大きい。
北上川の東岸から平泉バイパス工事の先端部(衣川)越しに焼石岳を見る 巨大な新高館橋を渡り、北上川の東岸部に着く。そこには見渡す限りの水田地帯が広がっている。遠くで、トラクタに乗った農夫が田植え準備に余念がない。烏の群れが田んぼの真ん中で会議をしているのか、ガーガーと騒ぎ立てている。束稲山の裾野に広がったこの辺り一帯には、古来より、毎年定期的に訪れる洪水こそが自然の恵みだった。それが、今はすっかり人の認識も変わってしまった。今洪水と言えば、水害と同義語だ。元々、川の神の領域だった所に人々が家を作り、権利を主張するようになった。かつて人間は、神の土地を使わせて頂くという感謝があった。豊穣を祝う秋祭りは、この神への感謝祭であった。金鶏山の上には、尖った帽子の形に見える栗駒山の白い姿がちょこんと見え、中尊寺から衣川を見れば、焼石岳が、なだらかな山容を見せて白く輝いていた。もう直、山の神は田んぼに降りてきて、田の神となる。営々と営まれてきた景色の中に、明らかに違和感のある傷跡が見えた。それは平泉バイパスの黄色い盛り土だった。工事の突端は、衣川の直前で止まっている。あとは19年開通に向けて、16年度の予算が決められのを、受注待ちのゼネコン各社は、瀕死寸前の肉食獣のようにノドを鳴らして待っているのだろうか。 ![]() 衣川の岸辺から平泉バイパスの先端部越しに南に中尊寺方向を見る |
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2003.11.25
2004.4.18 Hsato