平泉高館周辺写真集24
  

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平泉周辺の写真をみることによって、高館をめぐる景観の意味について考えてみたい。
(少しずつ増やしていきます。また文章も追加されますので、随時ご覧下さい。)



金鶏山を見下 ろす温泉付き分譲住宅

  大泉が池の借景となる塔山付近の温泉付き分譲住宅地

大泉が池の借景となる鈴懸森付近の温泉付き分譲住宅地
(2003年12月30日佐藤撮影)

分譲地の左下には、毛越寺の墓地が見える



かなり急斜面に宅造が行われているが崩れる恐れはないのか?

聖山 を見下ろす位置に住まいして恐くはなしや仏罰のこと


景観条例がない悲劇か?!

−コアゾーン金鶏山の対面に温泉付分譲地−

この附近は、かつて鈴懸の森と呼ばれ、栄華を誇った奥州藤原氏が経塚を埋めた聖地であった。そこに今「藤原の 里」という温泉付き分譲住宅が、どういう訳か、あっという間に、開発され、40ほどの分譲地が売り出された。土地は100坪から200坪ほど、値段は 980万から2980万だった。現在その半分ほどに買い手がついていると聞く。

世界遺産にノミネートされている平泉が、いったいこれでいいのか。なぜ、このような地の開発許可が簡単に下り てしまっのか。おかしい。疑問だ。冷静に考えれば、景観に関する条例が、平泉町にない結果、このような悲惨なこと になってしまったということになる。

問題の分譲地は、昭和30年代、日本経済の急成長に伴って起こったブームによって、平泉にも遊園地などが造ら れ、 やがてブームは去り、そのまま野ざらし状態となっていたものだ。それを、目ざとい関東の不動産業者が目をつけて、今回の温泉付分譲地の販売にこぎ着けてし まったというのが真相のようだ。それにしても、日本には、平泉に限らず、数多くの景勝地が、心ない不動産 業者の乱開発のために、考えられないほどかつてそこに存在した景観が台無し になったり、傷つけられてしまっている。

さてこの分譲地の斜真向かいには、聖なる山金鶏山がある。金鶏山といえば、昨年2003年11月に、文化審議 会で、国指定の史跡になるという答申を受けたばかりだ。そして金鶏山そのものが、平泉が世界遺産として登録される際に、コアゾーン(核心地域)に加えられ たのである。

とすると、この「藤原の里」なる温泉付き分譲地は、間違いなく、バッファゾーン(緩衝地帯)に該当するはず だ。分譲地を買った顧客は、さぞかし世界遺産の金鶏山を見下ろして温泉に入るのだから、気分がいいかも知れないが、その前に、世界遺産委員会のメンバー が、この地を訪れて、ふっとこの宅造地の傷跡を見つけた時にどのような反応をするだろうか。おそらくは、びっくりするに違いない。まったく手つかずの奥州 の黄金都市平泉がそのままの形で遺っていると聞かされてきた人が、高館の景観を台無しにした「平泉バイパス」やこの温泉付分譲地を見るのである。世界中の 遺跡を見てきた目の肥えた世界遺産委員会のメンバーである。彼らのその時の眉に浮かぶ皺(しわ)が目に浮かぶ・・・。

周知のように、この鈴懸の森や塔山という一帯は、中尊寺と毛越寺の中間点に位置しており、金鶏山とこの附近を 結ぶ線は、都市平泉を考える上で、重要な位置を占めている。金鶏山の背後に日が沈むのを三代秀衡公は、あらかじめ想定して無量光院を造営したのであるが、 まさにこの附近は、日の没する処に当たっている。またこの附近は、毛越寺大泉が池の借景を形成している。

そもそも、世界遺産の精神は、戦争や乱開発による遺産の保護を目的として作られたものである。しかしながら現 在、残念ではあるが、世界遺産は、目的と手段が取り違えられ、誤解されている傾向か強い。慢性的な予算不足に悩む自治体は、これをもって、観光開発をし て、国からの補助を受けようとする。また箱モノを造り、ひと儲けを企む連中は数え上げればきりがない。こんな状況で、どうして平泉が世界遺産たり得よう か。まず、早急に、景観条例を策定し、平泉を今後どのような町にしていくのか、という手順(マスタープラン)を示すべきだ。それもどっかの中央の業者に丸 投げしたような首を傾げたくなるような作文では駄目だ。かつての美しい都市「平泉」を知りこの町を真に愛する人の手でそれは策定されなければならない。し かも現実に見合った方向でだ。今のままでは、コアゾーン「金鶏山」を見下ろす地に温泉付住宅が許される「平泉」が、世界遺産になる可能性はかなり厳しいと しか言いようがない。2004年1月4日 佐藤



 
   金鶏山を見下ろす位置に分譲地はある

無量光院から見れば金鶏山の背後の分譲地に夕日は沈 む
(2003年12月30日佐藤撮影)


大泉が池の裏では分譲住宅開発が野放しだ

山頂の松は紛れもなく毛越寺大泉が池の借景だ
(2003年12月30日佐藤撮影)





 

分譲地の斜面は急である
(2003年12月30日佐藤撮影)

おそらく、少し雪が降ったら、この斜面は、車はかなり危険である。雪かきのブルが必要になるだろう。


分譲地には、家が建ち始めている
(2003年12月30日佐藤撮影)






 
これからも続々と家が建ちそうだ!!
(2003年12月30日佐藤撮影)



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2003.11.25
2004.1.5 Hsato