聞く
ところによると、国土交通省が柳の御所前のしだれ桜を切ろうとしている。
この桜は、地元にあって五十年以上、柳の御所の変遷を見てきた桜だ。戦後の平
泉の生き証人であり、柳の御所のシンボル的な名木である。それを工事の邪魔であるから伐るとは何事であろう。余所に移すというならともかく、国土交通省の
自然に対する情け容赦のない強圧的な発想が見える。
何思ふ桜は独り凛として無言の
抵抗続けて立てり
柳の御所の「しだれ桜通信」1
2003年7月5日。柳の御所のしだれ桜が伐られるかもしれない、というので、一関から車を飛ばして、平泉に向かっ
た。いつもならラジオなどを付けるところだが、とてもそんな気分にはなれない。結局、無音のまま、目的地に乗り付けた。
今まさに平泉バイパス工事は、平泉の歴史的景観破壊のピークとも言える柳の御所から高館直下の工事に差し掛かってい
る。そして、工事の邪魔ということで、残されるとばかり聞かされていた御所前のしだれ桜が、国土交通省によって、伐られるとのニュースが昨日入ったのだ。
行って見れば、柳の御所は、信じられないほど変貌していて、これがあの柳の御所かと思うほどになっている。それにしても日本の中でも有数の史跡が、バイパ
ス工事やら発掘やらで掘り起こした土や一輪車や得体の知らない紙袋が散乱していて、一見するところ、何やら巨大なゴミ集積所のように見えるのだ。しかしそ
の中に在って我がしだれ桜は、少しも威厳と気品を失うことなく凛として立っているではないか。正直、胸をなで下ろす思いであった。
桜の木無事で居てよと念じつ
つ柳の御所にたどり着きたり
今、平泉は、ユネスコ世界遺産にノミネートされている最中の大事な時期である。この一本の桜の木が、たった一人でこの
理不尽な景観を破壊する工事に抵抗を示しているように思えて目頭が急に熱くなった。ふと盛土になった土塊の中に、白い石を見つけて、手にとってみた。その
石は泥だらけになりながら、必死に私に何かを語りかけているように思えた。泥を少し払って耳に押し当ててみると、石の冷たさが、伝わってきて、物言わぬ平
泉の自然たちの悲しみが、白い雲のイメージとなって、心の中に湧き上がってきた。ふと空を見上げれば、今にも泣き出しそうな雨雲が柳の御所に集って来るよ
うに感じだ。
御所の石ひとつ拾いて桜の木
なぜに伐るかと天ふり仰ぐ
東に北上川を見れば、もうすっかり川は遠ざかり、土塊の原っぱが、遠くまで拡がっている。不自然なほど巨大な新高館橋
の袂に道の駅と水辺プラザが造られるということだ。そちこちに工事用具が散乱し、また注意の立て札が並んでいる。土日には、観光客の貸し自転車での走行を
考えてか、残土を運ぶトラックは、走らないことになっているようだ。それにしても汚い。これで世界遺産になろうと言うのだから、何か感覚がマヒしているの
ではないか。平泉をこんなゴミ溜状態にして、水鳥たちは、住処を失って、どこかへ飛び去ってしまったようだ。一方で、どんなところにでも巣を作るというカ
ラスたちが、不吉な鳴き声で、群れをなしているのが、最近極端に目立つようになった。カラスの棲息が目立つということが、いかに平泉の水辺の状況が、急速
に悪化しているかの証明である。
日々壊れ日々
に不毛の地に落ちて高館直下カラス群れなす
皆さん!!
是非、平泉町や国土交通省の出先機関
である岩手河川国道事務所まで、
「反対意見」を寄せて頂きたい!!
平泉町
http://www.town.hiraizumi.iwate.jp/scripts/mgrqispi.dll?appname=hiraizumi&prgname=MakeHiraizumi
岩手河川国道事務所
http://www.iwate.thr.mlit.go.jp/