私が訪ねた世界遺産

タブリーズ

絨毯バザール

シルクロードの要の町
 タブリーズは、イランではテヘラン、シーラーズ、イスファハンとともに四大都市の一つに数えられています。  イラン西部のアゼルバイジャン地方の中心都市で、アゼルバイジャン人が多いのも特徴です。  シルクロードの要ともいえる場所にあるので、歴史的にはさまざまな勢力が覇権を争った場所でもあります。

絨毯バザールの店舗

世界遺産のバザール
 タブリーズで世界遺産に登録されたのは、「タブリーズの歴史的バザール複合体」です。  前述したようにタブリーズは、東西交易路の要ともいえる宿場町として古来より機能してきました。必然的に人や商品が集まり、現在のような大きな町が形成されました。
 世界遺産としてバザールは、「歴史ある複合体(complex)」と表現されています。
 タブリーズのバザールには、金や宝石など貴金属を取引するアミル・バザールと絨毯を取引するモッザファリエ・バザールが有名ですが、ここには金曜モスク(マスジェデ・ジャーメ)や学校(マドラサ)、商店街が併設されていて、すべて一つの建物でつながっています。この建物はすべてがレンガ造りとなっています。タブリーズのバザールは13世紀にはすでに広く世界に知られていたということです。
 私は2010年の秋にタブリーズを訪れたのですが、水曜日で残念ながらバザールは休業日でした。
 モッザファリエ・バザールは、通路が高い屋根で覆われていて、その両側に絨毯を扱う店が軒をつらねているという構造です。屋根はアーチ構造で曲線と直線がバランスよく配置されているのでとても美しいという印象を持ちました。もし営業していたら、中央の広い通路にも商品の絨毯が展示されるなどして、商人や買い物客などで人があふれるのだろうと想像します。  貴金属を扱うバザールは迷路のような細い路地があちこちに延びていました。

金曜のモスク内の礼拝室

金曜のモスク
 また、金曜のモスクは、バザールの裏手にイーヴァーンがあり、そこを入ると、イランの他の地方で見たような大きな礼拝堂はなく、大広間をいくつも平行につらねたような仕組みになっていました。天井は低いのですが、壁や天井、窓が幾何学模様をなしてとても美しいと感じました。部屋がたくさんあるのは、バザールが大きくなるに従い継ぎ足していったという事情のほかに、様々な国や地域から人が集まるので宗派も異なるため、それに対応したのではないかとも思われます。

金曜のモスク内の礼拝室
 このバザールは、数世紀にわたっての一般的な商取引のほかに、集会や学校、宗教施設などの機能を備えた珍しい場所であり、それが世界遺産登録の大きな根拠になっているようです。

ブルーモスク内陣

ブルーモスク
 タブリーズは、地震の多い地域のようです。歴史的な建物としてはほかにブルーモスクがあります。外観はドームを備えたごく普通のモスクに見えるのですが、一歩内部に入ると、壁や天井の青いタイルがつぎはぎだらけのことに驚きます。地震のために幾度も崩壊を招き、その都度修復を重ねた結果が現在の姿となっているのでしょうが、戦禍のために崩壊したこともあったのではないかと悲惨な内部を見て想像もしました。
 タブリーズの町は、私が訪れたときは活気にあふれていました。町を歩く人はおそらく観光客ではなく市民で通りの様子もどこかヨーロッパ的な雰囲気を漂わせていました。

タブリーズの通り