城郭都市カルカソンヌ

シテ
カルカソンヌは、南フランスのラングドック地方にある小さな街です。ラングドック地方で最も大きな都市はモンペリエで、そこから約130キロ南西にカルカソンヌはあります。
世界遺産リストには、「歴史的城郭都市カルカソンヌ」として登録されています。現在の城砦のあるところには、ローマ時代より前から砦のようなものはあったと考えられていますが、中世の城砦都市の典型的な形を現在に伝えています。因みにこの城砦は通称「シテ」と呼ばれていますが、フランス語で都市を意味します。

二重の城壁で囲まれた街
私は、2008年初夏にこの歴史的な城砦を訪ねました。
城郭への入り口は東側にあるナルボンヌ門です。門の前には城を守る門番のように、大きな女性の半身レリーフがあります。
まず、驚いたのは、街が二重の防壁によって完全に囲まれていることでした。いわゆる市壁というもので、例えばイスタンブールのテオドシウス二世の城壁が有名ですが、そのような規模の壁で街を囲んでいるのです。城壁はほぼ完全な形で保存され、望楼にあたる塔もきれいに残っています。

▲城内の街の様子
また、城壁の内側には石畳の道路が不規則にあり、ホテルやレストランそしてゴシック様式の聖ナザレ教会があります。

コンタル
さらにこれが中世城郭都市の特徴だと思われますが、円錐屋根の塔をいくつも備えた城コンタルが深い堀に守られて最奥に佇んでいます。

典型的な中世城郭都市
中世城郭の典型的な形とは、このカルカソンヌ城のように、中心に王侯貴族の城がありその周辺には市民が暮らす街があり、そして城と街を守る城壁があるという構造を示すのだろうと思います。
ほぼ完全な形で中世城郭都市カルカソンヌを見ることができるのは、19世紀の建築家ヴィオレ・ル・デュク(1814-1879)による修復のおかげです。彼は先ごろ火災で焼け落ちたパリのノートル・ダム聖堂の修復でも知られています。

丘の上の城郭
この城郭の城壁狭間から外を見下ろすと、城砦の外側には赤い屋根の家々の現カルカソンヌの街を見渡すことができます。
現在のカルカソンヌ市街は、城郭の北側に広がっていますが、南に回るとそこは一面のぶどう畑でした。

カタリ派
城郭内にある聖ナザレ聖堂キリスト教会はゴシック様式とされていますが、聖堂の屋根の破風には、ロマネスク教会にしばしばある魔除けの彫像があります。また、聖堂内部からは美しいステンドグラスを見ることができます。ラングドック地方は、中世に、カタリ派と呼ばれるキリスト教の勢力が強かったところで、ローマ教皇による十字軍(アルビジョア十字軍)に対する戦争でも果敢に戦ったことで知られています。カルカソンヌの教会も、カタリ派の影響を受けているのかもしれません。
