ハラをなくした日本人

高岡 英夫 =著

1992年6月5日 初版発行

発行者 麻田 平草

発行所 恵雅堂出版株式会社

定価 1,000円








感想
著者 高岡氏は、最近のNiftyserve FBUDOでの話題でご存じの方も多いことと 思われます。私の氏との出会いはこの本でした。氏はこの本の冒頭で、すごく 興味深い研究を披露しています。それは、歴代の大相撲史上の強豪力士ベスト テンを紹介していることです。
それによると、史上最強といわれた千代の富士がベスト5に入っていないこと です。ウエイトトレーニングをやっていなかった過去の相撲取りの技が、どん なにすぐれていようと、現代の相撲取りの強大な筋力の前にはほとんど通用し ないのではないかという見方に対して、真っ向から異論を唱えているのです。 つまり、「現代のパワーは昔の技に通用しない。」ということです。その理由 はハラに関係するのですけれど。。。
この中に出てくるたとえ話は、わたしの初伝に加えさせて頂いたほど私には衝撃的でした。それは、まっすぐ押せない技術です。 この技術をつかった昔の栃錦クラスの相撲取りにかかったら、小錦や曙や武蔵 丸など、百回やってもただの一度もまともに押すことすら出来なかったという わけです。
この本を呼んで、氏の理論に耳を傾けたなら、剣道においても非常に共通点が あることに気がつきます。直線的な力とスピードの多用される今の試合中心の 剣道からうまく脱却できるヒントが相撲にあるように思ったのです。これは、 私だけの考えかも知れませんが、興味のある方は是非ご覧下さい。
それから、もう一つこの本のなかで興味をもったのは、双葉山のなんとも素晴 らしい立ち姿が写真で紹介されていることです。どこにも、力がはっていない。 まさに自然体の中に品格があり、人を圧倒してしまうような雰囲気があり、ず うずうしくも自分もあんな姿になりたいと思ってしまうほどです。といっても、 最近ハラが出てきたのはそれとは別の事でしょうね。きっと。。。