「大丈夫さ」
 直彦は半ば自分に向けてそう言い、力なく笑った。
 美衣は直彦が笑うのを見てすっかり安心しきった。
「良かったぁ。やっぱり二千年問題なんて嘘だよね」
 直彦は内心穏やかではなかったが、笑顔を崩すのが恐かった。
 美衣は笑いだした。気がつくと曽根川教諭までつられて笑っていた。三人の声は狭くて長い廊下に響き、切り忘れられた視聴覚室のマイクを通って、四百キロメートル先の誰もいない教室をわずかながらどよもした。

-了-
- 9 -

設定資料

written: 1996.5.2
uploaded: 1996.6.22
revised: 1997.3.22
uploaded: 1997.12.2

この物語はフィクションであり、登場する人物・団体等は実在のものと一切関係ありません。
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