「大丈夫さ」 直彦は半ば自分に向けてそう言い、力なく笑った。 美衣は直彦が笑うのを見てすっかり安心しきった。 「良かったぁ。やっぱり二千年問題なんて嘘だよね」 直彦は内心穏やかではなかったが、笑顔を崩すのが恐かった。 美衣は笑いだした。気がつくと曽根川教諭までつられて笑っていた。三人の声は狭くて長い廊下に響き、切り忘れられた視聴覚室のマイクを通って、四百キロメートル先の誰もいない教室をわずかながらどよもした。
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