RATT & WINGER.


2007年11月8日: 渋谷O−EAST>

80年初頭、キラ星のごとく現れ一世を風靡したLAメタル勢の代表格「RATT」、
またAORの流れを汲む正統派ロックバンドとして80年代後半に人気を博した「WINGER」、
音楽性的に同ジャンルなようで実は若干ズレてるこの二組のカップリング公演を見に、
渋谷は「O-WEST」まで行ってまいりました。
そりゃまあ「Quiet Riot」に「Dokken」、「Rough Cutt」に「Motley Crue」と、当時の
LAメタルブームに影響を受けてメタル道に入信することとなったミーとしては、こんな
原点回帰のチャンス、見逃せるわけありません。

それにしても最近この手の形式のカップリング公演が妙に増えてきましたね。
自分が今年見にいったライブの中で、その手のを数えてみたら
 ・アルカトラス & ジョー・リン・ターナ
 ・ラスト・オータムズ・ドリーム & マスタープラン
 ・ハーレム・スキャーレム & サイレント・フォース 
 ・ファイヤーウィンド & キャメロット 
と、4つもありました。
単独だといまいち集客が難しそうなバンドを二つ組み合わせることによってまず損益分岐点を
成立させ、なおかつ互いのバンドファンをも取りこむ可能性を増やせる一石二鳥の素晴らしい
アイデアだと思うので、今後ともどんどん行ってもらいたいですね。


<WINGER>

最も知名度が低いと思われる「Pull」からの"Blind Revolution Mad"をオープニングに
持ってきたせいか最初の盛り上がりこそイマイチだったものの、代表曲"Easy Come Easy Go"で
一気に火が点いて以降の展開は、全盛期を思わせるがごときキップのハリある声とフロント全員が
常にメチャ笑顔という空気が作り出したアットホーム感も手伝って場内の反応は尻上がり。

そしてレブ。堅実かつ着実に曲展開を司りつつ、それでいて前に出過ぎないいぶし銀なフレージング
の数々、であるからこそメインソロ時に一際目立つ流麗タッピング、そしてここぞという場面に
おいての掻き鳴らし弾きや、その場小走りなどのお茶目ネタと、決して派手ではないものの要所を
きっちり抑えたプレイでもって常にミーの視線を釘付けにしてくれていましたね。
特に"Madalaine"でのソロとか感嘆が普通にダダ漏れるレベル。これだけ巧いのに何故今年6月の
Night Ranger」ヘルプの時はトチっていたんでしょう? 
あ、ひょっとして「ジェフ・ワトソン>>超えられない壁>レブ・ビーチ」?とかそういうこと? 
来年4月のNR再来日公演においては、この図式が間違っていたことをレブが証明してくれるのを
切に望むものであります。

中盤のハイライトとしては、"Hungry"から"Miles Away"と初期のハードバラード系を
2曲連発で並べて存分に聞かせておいて、印象的なイントロに哀愁色漂う曲メロでもって
更に叙情感を煽ってから、スリリングな展開を誇る後半ジャムパートへと繋げた"Rainbow
In The Rose
"辺りが挙げられるかなと。
特にジャムね、これ新機軸テイスト香る"Generica"や、隠れた佳曲"You Are The Saint…"
などでも披露してくれていたんですが、そこで垣間見せる個々の演奏力の高さとその絡み合いが
生み出す展開美があまりに絶妙すぎたというか、こう、眺めてるだけで体温が自然と上昇して
きちゃうとでもいうか… 
音を塊としてみたその連鎖感が半端ないロッドのドラムリズムに、前述したレブの堅実かつ
流麗なプレイと、強弱の間や押し引きの妙で勝負するジョンの「味」が乗っかって、特に注目すべき
見どころの一つとなっていましたね。
この間、キーボードを担当していたキップのそれがショルダータイプなら見映え的にも完璧で
更に言うことなしだったんですが、フロントマンが椅子に座っちゃったせいでステージの絵ヅラが
妙に地味な感じに映ってしまったことだけが残念だったかなと。

そして「Winger」持ち弾の中じゃ個人的には一番好きな"Headed For A Heartbreak"から
"Madalaine"におけるレブのタッピング神技を経て、お約束の"Seventeen"へと繋げた終盤の
たたみかけもまあ良好。これでキップが若かりし頃みたいに足を上げつつクルクル回ったりして
くれたら絶賛レベルだったのですが、お歳のせいもあってか流石にそれはナシでした。
あ、歳っていえば「I'm Only Seventeen〜」のところを「Thirty Five〜」と変えて歌ってたけど、
レブが1963年生まれだからキップだってもう40過ぎだろうに、と微苦笑させられたりも。

地味ではあれど、卓越した演奏技術といい、それをより際立たせるクリーンな音質といい、
AORをHR風にアレンジしたアメリカンロックのダイナミックさをハードとソフトの両面において
存分に知らしめてくれた70分間だったと思います。

 01:Blind Revolution Mad
 02:Easy Come Easy Go
 03:Your Great Escape
 04:Down Incognito 〜 Guitar Solo:John Roth
 05:Hungry
 06:Miles Away
 07:Rainbow In The Rose
 08:Generica
 09:〜 Guitar Solo:Reb Beach 〜
 10:You Are The Saint,I Am The Sinner
 11:〜 Drum Solo:Rod Morgenstein 〜
 12:Headed For A Heartbreak
 13:Can't Get Enuff
 14:Madalaine
 15:Seventeen


<RATT>

さて、20分のセットチェンジを経て、いよいよ「RATT」登場。
照明を一旦落としてその間に「RATT」のバックドロップを準備、再び明るくしたところで
それを華々しく披露するとともにSEをクイーンの"We Will Rock You"に切り替え、曲終了と
同時にメンバーを登場させるという、いかにも往年のヘアバンドっぽい演出にいきなりアガら
されたところで、まずは音量のデカさと音質の汚さにびっくりですよ。
先程のウィンガーの音作りが非常にクリーンだっただけにことさら目立っちゃってる感じで、
開始早々からブライトばりに「PAなにやってんの!」と叫びたい気分に駆られるミー。

そしてただでさえ悪いその音質に更なる拍車をかけていたのが、「Motley Crue」ヴィンスの
甘ったるい声をよりこもらせたようなスティーブン・パーシーの異常に抜けの悪い声。
歳相応にデブデブしてるかと思いきや、むしろ全盛期よりも引き締まった?っていうくらい
絞りこんであるそのボディをわななかせつつ、ラットの象徴たる変わらぬ「美声(笑)」を
80年代のあの頃ばりに披露してくれていました。
そんなスティーヴンとは対照的に、こちらは歳相応のファット化が極めて顕著だったウォーレン、
お馴染みのスネーク模様ギターを抱えつつ、そのビビッドでありながらアーシな独特フレーズを
音質のこもったサウンド面に上塗っていくその姿はまさに「野卑」そのもの。
そして鋭いバッキング上に、その輪郭を徐々にさらけだしていくルーズきわまりないメロディ。
このグダグダ一歩手前な泥臭さ、雑然としたカオス感、その中に漂う憧憬として見た「ワル」の
イメージ。これ、これですよ、これぞラットンロールですよ。
や、数年前の「DIO」加入テスト時のプレイは駄目駄目だったと聞いていたもんで、今公演じゃ
ウォーレンの仕上がりが一番心配だったんですが、それはまったくの杞憂でしたね。

ライブ進行の方も、初期中の初期に出したミニアルバムの中からの定番ナンバーをまず挨拶
代わりに2曲、続いて"I'm Insane"に"Dangerous and Worth the Risk"という、その当時に
メタルをかじり始めたミーのような小僧にゃもろ直撃だった初期2作からのナンバーでもって
更に圧倒と、三十路過ぎの人種にはありがたすぎるこの選曲により、ホール全体に加齢臭まじりの
熱気をまず伝播。
その勢いを更に一段階上のレベルまで引っ張ってくれたのが1stからの隠れた人気ナンバー、
"Back for More"、もう恥も外聞も忘れてフィストバングしまくりながら自分を含む周囲の
オヤジ達とともにサビを絶叫ですよ。その後に切れ味鋭く続いた"Lack of Communication"
からLAメタル系では屈指のカッコ良さを誇ると思われる"Lay it Down"出だしのリフへと
繋がった必殺コンボでほぼ完全KOを喫した直後、そのノリとドライヴ感にかけてはラット持ち曲
の中でも筆頭格クラスと思わしき"You're in Love"・"Body Talk"の畳み掛けにより、完璧に
仕上げられる顛末に。この古き良き懐古感と時代錯誤的なズレが生み出す陶酔感…!断じて現役
ティーンズなメタルコア厨には分かるまい!(と誇らしく胸をはる)

勿論、最大の見せ場はラストの"Round and Round"。
メンバー紹介をスッ飛ばして「みんなでラウンドアンドラウンドしようぜ!」と先走った
スティーヴンのボケっぷりから始まって、ラットンロール臭たちこめまくりのヴァース部、そして
お馴染みのキャッチーなサビから、ウォーレン懐かしの骸骨ギターとともにコラビとのユニゾンが
冴えまくった後半のツインソロに至るまで、これぞLAメタル!なステージングを存分に見せつけての
フィナーレ。「WINGER」とは対照的に「演奏力?そんなの関係ねぇ!」とでも言わんばかりな
華のあるパフォーマンスでもって場の空気を常に牽引してくれた80分だったと思います。

 01:Sweet Cheater
 02:Walkin' the Dog
 03:Dangerous and Worth the Risk
 04:I'm Insane
 05:You Think You're Tough
 06:City to City
 07:Slip Of the Lip
 08:Wanted Man
 09:Nobody Rides
 10:Way Cool Jr
 11:Back for More
 12:Dirty Job
 13:Lack of Communication
 14:Lay it Down
 15:You're in Love
 16:Body Talk

 17:Round and Round


<今日の一枚>

 「Out Of The Celler」 / RATT

前年のミニアルバムに続く、84年発表のフルレンス1枚目。
甘くてクドくてアクあるわりにどこか輪郭がはっきりしないスティーヴンの声、
小気味良いバッキングの中にのたうつグダグダ感混じりの中速リフ、その中に突如
割り込む電撃ソロと、ラットをラットたらしめているその理由の全てがここに。
ロビン亡き今、残されたメンツでこの作品を越えうるものを作ることがおそらく
難しいであろうことを鑑みるに、彼の早すぎた逝去がただただ残念でなりません。


<今日の無駄T>



#今回の日本&オーストラリア遠征だけの為に作られたツアーTシャツ。
 間に合わせっぽいデザインだけど、結構気に入ってます。


[ MenuNext ]