HAREM SCAREM & SILENT FORCE.


2007年9月27日: 渋谷クワトロ>

「地味」と「渋さ」がそのコンセプト。(←勝手な思いこみ)
商業的にはさほど成功していないかも知れないけど、キラリと光る魅力は確かに持っている…
そんな地味だけど良質なバンドを招聘することに定評のある「Melodic Power Metal Night」。
その「Vol.10」、「Silent Force」と「Harem Scarem」のカップリング・ライブを見に、渋谷は
クワトロまで行ってきました。


Silent Force

まず最初に出てきたのは元「ROYAL HUNT」のVO、D.C.クーパーと、元「SINNER」のギタリスト、
アレックス・バイロッドによる、ドイツのメロパワ系バンド「Silent Force」。

開幕前、ステージ裏から「ハァァァ〜」というオペラ歌手ばりな練習シャウトが聞こえてきた
時点で既にテンション上がり気味でしたからね。眼鏡に3つボタンのジャケという、この手の
系統らしからぬインテリっぽい出で立ちでいざD.Cが登場してきて、ジューダス新VOの候補に
その名が上がったといわれる程のご自慢ハイトーンを鳴り響かせるやいなや、すかさず場内は
熱狂の渦に… と思いきや、盛り上がってるのは前3列ぐらいでそれ以降の客はわりと引き気味
という、実にアンバランスな光景が展開されることに。あっれー?

まあ、オーバーアクション全開で客を煽るこの姿や、パワーコード多用なその曲展開は、確かに
思いっきしベタだけれど、でもそういうのこそをカッコいいと思う我等メロスパーの思考回路と、
「Harem Scarem」ファン層の正統派メロハーこそをこよなく愛する方向性は、どうやら相容れな
かった模様です。加えて「このツアーをもってハースキャ解散」というニュースが事前に伝えら
れていた事もあってか、場内のファン層比率は圧倒的にハースキャの方が上でしたからね。
正直「Silent Force」にゃアウェイもアウェイ、かなり厳しい環境だったことは確かでしたね。

それでもD.C.頑張ってました。ウケが悪すぎて単なるピエロと化しても尚、最後の最後まで自分
のスタイルを貫き通しましたからね。中盤以降、眼鏡はずしてジャケ脱いでそれまでのインテリ
さんから単なる野人と化し、更に動作を大袈裟にしつつシャウトをキメまくるその姿には確かに
オーラめいたものを感じました。実際、この日は声も良く出ていたし。

それに比べてもう1人の看板であるアレックスのプレイは若干精彩を欠いていたかも。
手癖弾きが多かったりギター音が小さめだったりしたせいで原曲の再現性がいまいちだったのを
筆頭に、ギターを頭の後ろや口元にもっていってのショープレイ弾きをやろうとしかけて途中で
止めちゃうなどの中途半端な姿勢も手伝ってか、どことなくいい印象は持てませんでした。
だけど常に笑顔なところ(「JUNP」のプロモにおけるエディばり)だけは良かった。あとD.C.に
しなだれかかって恍惚顔で弾く様とその801臭が、数少ない女子のハートを射抜いたか、彼に
対する黄色い歓声はかなり多かったですね。

ライブ展開におけるハイライトとしては、"Once Again"時に客との間で綺麗に揃ったコールと、
後味を残す叙情メロが魅力な"Heroes"から、その「ひな祭り」イントロが圧倒的印象的を誇る
"Ride The Storm"へと繋げた「締めくくり」が上げられるかと。サード「WORLD APART」からの
楽曲はやっぱし名曲揃いだなと再実感。それにひきかえ新譜からの曲が"Walk The Earth"以外、
ほとんど目立っていなかったのは寂しいかぎり。従来のそれと比べてメロがつまらなすぎだと
思うんですよね。まあ元々のポテンシャル自体は高いバンドな筈なので、次回作に期待かなと。

 01:Man & Machine
 02:Walk The Earth
 03:Point Of No Return
 04:Once Again
 05:Goodby My Ghost
 06:In From The Dark
 07:Key Solo 〜 G Solo
 08:The King Of Fools
 09:Save Me From Myself
 10:Hold On
 11:Heroes
 12:Ride The Storm

 13:Message To God(ROYAL HUNT)


Harem Scarem

20分程のセットチェンジを経て、いよいよ本日の主役「Harem Scarem」登場。
80年代に全盛を誇った正統派HR勢の正しき進化の姿であり、ミュージシャン受けする堅実
なテクニックと、その類稀なるソングライティング力でもって、一部ファンに熱狂的人気を
誇るカナダの雄。本来なら第2のジャーニ、もしくはニッケルバック以上のチャートブレイカー
になってもおかしくないバンドだった筈が、時流に乗り損ねたか、あまりに華がなさすぎたか、
そこそこのヒットは飛ばしたものの、結局大輪を咲かせるまでには至らず、此度の来日ツアー
をもって、その20年に渡る活動に幕を下ろすとのこと。そんな解散騒ぎも絡んでか、場内は
かなり混雑してました。

出だしに持ってきたのはファンの間じゃ不評だった「OVERLORD」からの"Dagger"。
個人的にはメチャ好きな曲なんだけど、コアなファンからしてしてみれば意外だった筈のこの
選曲、蓋を開けて見れば大盛り上がり。その勢いを引き継いで、次曲"Human Nature"では、
会場中が「It,s Only!」「Huー!」「Man!」「Nature〜♪」の大シンガロング。
先程の「Silent Force」とは音楽性が違いすぎるので、そのまんま比べちゃいけないのだけど、
堅実なプレイや一般受けする曲メロという点だけから見るならば確かにこれは役者が違うなと。
いや、面白みという点から見るなら「Silent Force」の方が上だとは思うのだけれども。

ライブ全編を通してのハイライトを挙げるなら、「1枚目からの曲だよ」というハリーのMC
に続いて演奏された"With A Little Love"と、それによるこれまで以上の過熱っぷり。
またその流れを切らないまま屈指の美旋律を誇る哀愁バラード"Honestly"へと繋げ、そこで
集めたエナジーを、ドラマティズム溢れる展開美にかけては彼等持ち曲の中でも1、2を争う
"Change Comes Around"にて観客のシンガロングとともに爆発させた中盤の流れが最高に神。

第一アンコールでプレイされた"No Justice"におけるコーラスワークと、それに絡まんとする
観客のハモりコールから生まれた一体感もまた鳥肌ものの素晴らしさ。その光景からはどこと
なくデジャブめいたものが感じられたんですが、後でよくよく考えてみたらそこで感じた要素、
例えば、ほぼ全ての曲をともに熱唱とか、まず曲を楽しむことを第一前提においた礼儀正しい
盛り上がり方などのそれって、つい先日みた「GOTTHARD」とすごく似通っていたなって。

あえて不満点を挙げるなら、本編最後に"Voice Of Reason"をもってきたことくらいかな。
自信作だったのは分かるけど、少なくともそのダーク感が本編の締めにマッチしているとは
あまり思えなかったですね。それを抜けば他の部分はほぼ完璧。その経歴を飾るに相応しい
ライブ内容だったと思います。

ちなみにその解散理由ですが、VOのハリーによると、
 
僕達は今後もう1枚スタジオ・アルバムを制作した後、20年というバンド活動の歴史に幕を
 閉じ、それぞれお互いの道を行くと決めました。
 僕達は、日本のファンのみんなが世界で一番素晴らしいと思っているし、日本でここまで
 成功できたことをとても感謝している。

だそうで、音楽活動もこれで終わりというわけではなさそうなので、とりあえず来年出る予定
の新作と今後のソロ活動に期待、といったところですかね。


<今日の一枚>

 MOOD SWINGS / HAREM SCAREM

93年リリースのセカンド。
曲展開、メロディ、ギターワークに全体の統一感と、どこをとっても文句なし、
彼等の出世作にして、90年代正統派HR史における珠玉の1枚。
これを越える一枚を作り出すこと適わず、徐々に迷走していってしまうその後
の彼等の道のりを見る限り、あまりに出来が良すぎるのも考えものなのかも。


<今日の無駄T>



#これまた随分と地味〜な感じのデザイン。
 なにもTシャツにまで、そのバンド・カラーを反映させなくても…



<セット・リスト>

01:Dagger
02:Human Nature
03:Caught Up In Your World
04:The Paint Thins
05:With A Little Love
06:Killing Me
07:Honestly
08:If There Was A Time
09:Change Comes Around
10:Hard To Love
11:Don't Come Easy
12:Mandy
13:Higher
14:Voice Of Reason

15:No Justice

16:Karma Cleansing


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