ZYKLON & DAATH .


2007年9月28日: 渋谷クワトロ>

SMASH主催の「Extreme The Dojo」。

同SMASH招聘の「TASTE OF CHAOS」(2005、2006、2007)、
M&Iの「Melodic Power Metal Night」(Vol.1〜Vol.10)、
クラブチッタの「THRASH DOMINATION」(2004、2005、2006、2007)、
クリエイティブマンの「FINLAND FEST」(2005、2006、2007)や、
同クリマンとHMVの共同開催「BRITISH ANTHEM」(Vol.1〜Vol.4)などと並び、
テーマを絞って開催されるミニ・フェスティヴァルの一つ。

WIKI説明を覗いてみたら「単独公演では興行的に難しいデスメタル系のバンドを中心に、
毎回(基本的に)3バンドを集めて行われるライブイベント」と、若干後ろ向きな紹介の
仕方をされていましたが、個人的にはこの「DOJO」、エクストリーム・シーンにおける
ブレイク前のバンドを先取りするそのアンテナ感度や、あまりに集客が読めなさすぎて
他の呼び屋が招聘を渋るようなバンドをわざわざ呼んでくれることにかけてはかなりの
ものがあると思ってて、Vol.17開催時の「Brutal Truth」「Vader」「Cryptopsy」という
魅力的ラインナップを「ASIA」復活公演との日程もろカブりという理由で止む無く諦めて
以来、次こそはと密かに思っていたりしたわけです。

そこで今回の「Vol.18」ってわけですよ。
ちなみに出演メンツは「Zykron」「Dying Fetus」に「DAATH」。
このストライクゾーン外角ギリギリもいいところな、あまりにマニアックすぎるチョイスを
見て、すかさずアンダーグラウンド魂に火を灯してしまったミー。流石は「DOJO」ブランド、
予想の斜め上をいってのけるゥ、そこに痺れる憧れるゥ的なジョジョ・テンションでもって、
渋谷はクワトロまで行ってまいりました。

で、会場着後、フロアにてボーっとしていたら、このイベントの責任者と思わしき「南部」
なる人物が出てきて「Dying Fetus」が急遽キャンセルとなったことを説明し始めるという、
自分的には予想外、イベ的には前提外な展開を目の当たりにさせられ、早速ハト豆顔となる事に。
その謝罪によると、一部メンバーのパスポートに不備があって出国できなかったとの事で、
ドラッグと軽犯罪がお約束なこの手のバンドにありがちといえば、まあありがちな理由、
周囲もそれじゃ仕方ないね的な、どちらかといえば主催者側に同情的な反応を示している
ようで(一部じゃ拍手まで起こってました)、僕は改めてこのイベに対する求心力の高さを
知るのでありました


DAATH

で、まずは「DAATH」。(これ「ダース」でなく「ドス」と読むそうです)
今やメタル系レーベルの代名詞、良質なデス系バンドを見つけることにかけては定評のある
「ロードランナー」が、自信をもって07シーンに送りこんできたアトランタ出身の6人組。
シンガーにギター2人とベース、合わせて4人が、ただでさえ狭いクワトロ・ステージ上を
飛ぶわ吠えるわ四方八方にツバ吐くわとやりたい放題しまくりだったパフォーマンス自体は、
その賑々しさ・騒々しさが見映えに繋がってて、まずまずグー。

デビュー盤の中でも一押し曲と思われる"Hinderers"を出だしにもってきて、のっけから
場を一気にアゲていくつもりが、皆の様子見感が強すぎたせいで空振ってしまった辺りは、
知名度低い日本じゃまだ苦しいかなという感も否めませんでしたが、そこからデス3巨神
のうちの二つ「CANNIBAL CORPSE」と「MORBID ANGEL」のカヴァーをメドレー形式で放って
半ば力技でフロアを強引に盛り上げたその組み立て、今の自分等に足りない部分(この場合、
キラーチューン)を他の手段ですかさず補った辺りは、その見た目とは裏腹に案外クレバーな
バンドだなという印象を受けたりも。

その音楽性の方も、デス声や高速スラッシュビートなどのデス基本型をきっちり抑えつつも、
その中に時折メロデス的な叙情性を感じさせるソロが顔を覗かせたり、インダストリアル的な
ビートの切り口があったり、かと思えば次の瞬間、トンデモなブラストが猛然と火を吹いたりと
(ドラマーが元Dying Fetusらしいです、道理で)一筋縄ではいかない多彩さ、一概に「デス」
とくくれないような懐の深さが感じられて、なかなかに刺激的でした。

一番特筆すべきはそれだけの複雑さを内包しているにもかかわらず、普通のデスメタルよりも
はるかに聴きやすいというその普遍性。テンポの変化に一貫性やメリハリを強く持たせている
点が大きく寄与していると思うんですが、その辺りにはメタルコアからの影響も感じられたり。
こういうの今風のハイブリッド・デスとでも言うんですかね?
こういった、いわゆる「クロスオーヴァー」が、よりマニア度の高い「デス」ジャンルの裾野
を広げるような展開になってくれれば、少しはメタルも復権するんじゃないかなという。
その一端を担う存在となりうる可能性があるバンドだけに今後ともしっかりチェキっていきたい
と思います。

 01:The Hinderers
 02:War Born(Tri-Adverserenade)
 03:〜Medley〜
    Praise The Lord(DYING FETUS)
    Hammer Smashed Face(CANNIBAL CORPSE)
    Day Of Suffering(MORBID ANGEL)
 04:Sightless
 05:SE(Hitler)〜Festival Mass Soulform
 06:SE(Piss)〜Placenta
 07:Ds Solo 〜 Emil's G Solo
 08:From The Blind
 09:Cosmic Forge
 10:Ovum
 11:Blessed Through Misery
 12:Subterfuge


ZYKLON

「DAATH」終了後、20分ほどのセットチェンジを経て、いよいよトリ。
これまでのHM/HR史においては最も狂気をはらんでいたといわれるノルウェーのブラック
メタル・シーン、その一端を担っていた「EMPEROR」のメンバーであるサモスとタリムが
新たに作りあげたエクストリーム・メタル・バンド「ZYKLON」の登場です。

しかしながら、ドラムのタリム叩きだすその比肩なきブラストの洪水に溺れまくって存分に
脳内トランスを楽しむ予定だった筈が、実際のところは物理的レベルで比類なきモッシュの
大海に放りこまれ、前半20分はただ生き残るのに必死だったというのが実状でした。
とりあえず全身を覆いつくす脂肪壁をブルンブルンとわななかせながらそこらを楽しそうに
走り回っていたアキバ系ピザ様が、デス系ライブにおける僕の目指すべき方向性であることは
存分に理解させていただきました。そんなこの日のMVM(Most Valuable Mosher)は妥協なき
筋肉を誇る歴戦のモッシャー達に幾度となく跳ね飛ばされながら、絶対に最前線を退くことなく
最後まで屈託のない笑顔で踊り狂っていたツインテールお姉さんに差し上げたいと思います。

そんなこんなで、音を楽しむ余裕が出てきたのは、周囲が暴れ疲れてきた中盤以降から。
物理側面における暴力がようやく止んだかと思いきや、今度は絶え間なく響き渡る轟音
ブラストとその中に時折挟まれる不協和ソロの暴虐ハーモニーが、残り少なくなった体力
を更に奪い、意識を徐々に混濁させしめていくというね。そんな狂気のデス・スパイラルに
思う存分前頭葉を揺らされて、デス系本来の魅力たる陶酔感と恍惚感にただただ身を任せ
始めるミー。そのタイミングで放たれた"Ways Of The World"におけるシンガロングが、
この混沌としたフィールドに一体感と秩序をもたらしてくれたところで、満を持して投入
された"Psyklon Aeon"、ここが本日一番のハイライトだったかなと。ブラック的な荘厳さ
を匂わせる出だしからの重厚リフと超速ブラストによる畳み掛け展開を前に、ひたすら
圧倒され尽し、どこまでも蹂躙されていくというこの感覚、音による擬似レイプを存分に
楽しめた時間帯だったと思います。

そこまでアグレッションに満ち溢れたサウンドなわりには、その中心を司るサモスから
感じられるオーラが案外と優しげでフレンドリーという、妙なアンマッチさも見所の一つ
でしたね。そもそもがこの人、教会とか燃やしてタイーホされちゃったこともある生粋の
ホンモノさんな筈ですからね。そんな彼が笑顔でペットボトルから水撒いてる姿なんて、
なかなかお目にかかれるもんじゃありませんって、実際。
そんなサモスさんと反比例して、ドラムのタリムさんはどこまでもコワモテ。
一瞬たりとも笑顔を見せることのないまま、終始「らしさ」全開な氷のオーラを全身から
放たれていらっしゃいました。

 01:Subversive Faith
 02:Core Solution
 03:In Hindsight
 04:Disintegrate
 05:Transcendental War - Battle Between Gods
 06:Ways Of The World
 07:Psyklon Aeon
 08:The Prophetic Method
 09:Underdog(Incl Ds Solo)

 10:Subtle Manipulation
 11:Hammer Revelation


<今日の一枚>

 The Hinderers / DAATH

2007年にリリースされた「DAATH」の記念すべきデビュー作。
スラッシュという幹から芽生え、ハードコアという枝と交わって以来、時代の流れとともに、
正統派デス、グラインドコア、ファストコア、メロディックデス、ニュースクール、デスラッシュと
様々な枝を作りだしてきた「デスメタル」という一大ジャンルに、新たなる枝を派生させうる
可能性を秘めた一枚。スラッシュ、ブラック、インダストリアにメタルコアと闇鍋的要素が強い
その特徴を本編ではハイブリッド・デスと呼称したけど、一番影響力の濃いパートからあえて名づけ
直すとするなら「メタルコア・デス」が適名?聴き易い「デス」を探しているならまずはお試しあれ。


<今日の無駄T>



#そのバンドカラーに相応しいサタニズム溢れるデザインはなかなかステキ。
 底部にバンド名ロゴを配置したバックプリントも特徴的、かなりお気に入りな一枚かも。


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