FIREWIND & KAMELOT.
<2007年10月14日: 横浜BLITZ>
「Mystic Prophecy」にて頭角を表した後、「NIGHTRAGE」と「Dream Evil」を掛け持ち、
同時期に「ARCH ENEMY」のツアーをサポートと、同じミュージシャン仲間からの評価が
非常に高く様々なバンドに引っ張りだこだったことから、「世界一多忙なギタリスト」
と呼ばれていた男、ガスG率いるメロディック・パワーメタル・バンド「FIREWIND」、
そのライブを見に、みなとみらい線は「新高島駅」の横浜BLITZまで行ってまいりました。
ちなみにこの日はわざわざ2Fの固定座席から観戦。いや、スタンディング中心の会場で
2Fのチケがゲットできるなんてなかなかないことだし、そういった会場で一度くらいは
ゲストっぽく2Fからの見下ろし観戦してみたかったもんで、つい。
あ、今回は米メロパワ勢の代表格「KAMELOT」とのカップリング・ツアーでもあったんで、
「FIREWIND」を見たついでといっちゃなんだけど「KAMELOT」もしっかり楽しんできました。
<FIREWIND>
で、まずはスペシャルゲスト扱いの「FIREWIND」から登場。
冒頭の"Allegiance"にて絶賛とまではいかないけれど程よくイケてる曲メロ美を、
続く"Insanity"にてこれまたド派手ではないけれどそれなりに魅せるソロを挨拶代わりに
まず披露。全然悪かないんだけどメチャ印象深いってわけでもない、そんな微妙な按配の
ステージングを序盤はそのまま展開。
実際、このガスGってギタリストは、その後の"Ready To Strike"で魅せたシェンカーばり
の泣きソロといい、"Destination Forever"で披露した怒涛の鬼弾きといい、とんでもない
テクの持ち主であることは確かなんですが、そのわりにゃ佇まいといい雰囲気といいどうにも
地味なんですよね。リーダーのわりに自ら前に出ようとする「押し」の姿勢が弱いというか、
どうもその辺りがバンドカラーにも出ちゃってるみたいで。でもまあ謙譲美をこよなく愛する
典型的日本人のミーにとっちゃ、ギタリストとしてあるまじきその奥ゆかしさもまた彼の魅力
の一つだと思うし、俺が俺が俺だけが!的な人種が多いギタリストの中にあって1人くらいは
こういうタイプがいてもいいんじゃないかなって。
そんな彼の地味さ加減を積極的に補っていたのが今ツアーのみの助っ人ボーカル、ヘニ。
最初にそのフォルム見たときは「何このブタ?」ぐらい思っちゃいましたが、その熱さ迸る
歌唱力といい、曲の流れをちゃんと理解した上での盛り上げ方といい、短期ヘルパーのわりにゃ
異様なまでに他メンバーと息ぴったりな馴染みっぷりといい、実はかなり「デキる」奴でした。
本来の所属は「メタリウム」というバンドだそうですがちょっと聞いてみようかなという気に
させるくらい見事なパフォーマンスと高いテンションを終始キープし続けていましたね。
そしてもう1人、キーボードに加えてサブギタリストをも兼ねていたボブのその技巧っぷり
にも特筆すべきものが。特にキーを打鍵しつつその合間にソロを爪弾くというマルチタレント
っぷりをいかんなく魅せつけていた"Fire & The Fury"でのパフォーマンスには、ガスGの
ギターワークの絡みと合わせて、相当に目をみはるものがありました。
そんな彼等の好プレイにも引っ張られますます冴え渡るガスのソロ、それにより観客自体
のテンションも更に上昇するというポジティブスパイラルの鎖がステージの内外をしっかり
と繋ぎ止めたところで繰り出された"Deliverance"後半のシンガロング、そこからほぼ息継ぎ
なしで繰り出された"Brother's Keeper"の出だしと、またガスの紹介が入るとともに刻まれ
始めた"Falling To Pieces"のリフの入りが特に格別。
そこで掴んだ上質のグルーヴを、彼等の代表曲である"Between Heaven And Hell"でなお
昇華させ、"I Am The Anger"のコール&レスポンスで更に煽って、フィナーレを飾る怒涛
の疾走チューン"Tyranny"へと繋いでいった終盤の流れも、その絶妙なライティング効果と
相まって、見ごたえ・聞き応えともに十分な内容だったと思います。
後で感想サイト巡ってたら、なんかラウパー06の時より全然出来が良かったそうですね。
ひょっとしてコレかなりの割合でヘニ効果? だとしたら今度は正規ボーカルでもう1回ちゃんと
聞いてみたいなあ。
01:Allegiance
02:Insanity
03:Ready To Strike
04:Destination Forever
05:The Fire & The Fury(Incl Key,Guitar & Ds Solo)
06:Till The End Of Time
07:Deliverance
08:Brother's Keeper
09:Falling To Pieces
10:Between Heaven And Hell
11:I Am The Anger
12:Tyranny
<KAMELOT>
およそ20分ほどのセットチェンジを経て、今度は「KAMELOT」の面々が登場。
イベ的にはヘッドライナーですが、まあミーにとっちゃ単なるおまけ以外の何者でも
なかったので「FIREWIND」の時とはうって変わった「抜き」モードで観戦することに。
…の筈が、中世時代の貴族然としたオーラを身にまとうロイの見映えの良さや、妖艶かつ
耽美的なその歌いっぷり、それを引き立てる芝居っけたっぷりの身振り手振りを眺めて
いたら、いつのまにか気分はわりと前のめり、ふと気づけば体そのものも普通に前のめり、
何気にやる気にさせられてる自分をそこに再発見してしまい、ロイのもつ魔性の魅力と、
速いでも遅いでもないその独特なメロディーにまずは一本取られた形と相成ることに。
そんな「何気に」な姿勢を中盤におけるハイライトの一つ、"Center Of The Universe"
から迸る疾走感とベタ路線全開だけども超絶カッコいいメロにより「すっかり」に変え
させられて以降の壮大かつ雄大さ溢れる展開、特に大曲"Memento Mori"での複雑さをも
併せもったそれが「KAMELOT」の魅力の何たるかを知らしめてくれたパートは☆3つレベル
で鳥肌もの。それを超えうるレベルで更に「いい…!」と思わせてくれたのが本編終了前
の熱気をなお押し上げる推進剤として絶大なる威力を発揮していた"Forever"。
疾走するリフにドラマチックな展開、その中に切り込んでくるクールなソロ、仰々しさを
演出するオーケストレーション、宝塚チックな何かを感じさせるロイの妖艶ヴォーカルと、
それら全ての要素が押し上げた熱気の臨海飽和点たるシンガロングは、到底アメリカ出の
バンドとは思えないほどの北欧オーラ、それも超一流クラスのみがまとっている「らしさ」
溢れる貫禄に包まれていました。
その後、「FIREWIND」の連中がサービスボーイに扮してとっくり片手に乱入、双方メンバー
が入り混じったところで乾杯という日本最終公演らしいお祭りパフォーマンスや、ロイが2F
まで上ってきて1Fフロアを悠然と見下ろしつつ"Don't you cry"を歌うなどの(僕のような
2F客には背中しか見えないのであまり嬉しくない)サービスにより、ステージ内外ともに
高いテンションを維持したまま迎えたフィナーレでの"Karma"、その導入部を飾るイントロが
神秘的な装いをたたえて鳴り響いた瞬間が今日一番の盛り上がりどころだったかなと。
よい曲とそうでない曲との差が激しすぎる辺り、バランスが取れているとはお世辞にもいえない
けれども、そういった部分をも「個性」と感じさせるだけの力を持っているバンドだとも思い
ましたね、「KAMELOT」。よーしパパ、今度は単独にチャレンジしちゃうぞー
01:Solitaire(SE)〜Rule The World
02:When The Lights Are Down
03:Soul Society
04:Human Stain
05:Descent of The Archangel
06:Abandoned
07:Instrumental
08:Center of The Universe
09:Memento Mori
10:The Haunting
11:〜 Keybord solo 〜
12:Forever
13:Ghost Opera
14:Don't you cry
15:Karma
16:March of Mephisto
<今日の一枚>
Allegiance / FIREWIND
ギター仕事人「ガスG」がそのバイト生活に終わりを告げ、自らの持てる力を全て注ぎこんで
作り上げた「FIREWIND」、ここからがいよいよ本番だと言わんばかりの気概に満ち溢れている
4作目。メロパワ路線を基本に据えつつも、その疾走感のみに頼ることなく常にしっかりした
リフとメロ作りを心がける彼等らしい、安心して聴ける作りに仕上がっているかと。
従来からのネックであった、あまりに正統派すぎて面白みに欠ける点や、どこか地味で垢抜け
ないところもしっかりと踏襲しているけど、それはもうこのバンドの「味」と好解釈するしか。
<今日の無駄T>
#そのバンドカラーと相反するこのデーハーっぷりたるや…!
ここ最近の駄目Tの中じゃ一番気に入りました。
バンド自体のステージングもこのデザインぐらい、はっちゃけてほしいものですね。