NIGHT RANGER.


2007年6月15日: 渋谷公会堂(C.Cレモンホール)>

ポップ心のあるハードロック調メロディと、それにのせて掻き鳴らされるツインリードの妙、
それを支えるアームの鬼ことブラッド・ギルスと必殺の8フィンガーを誇るジェフ・ワトソン
の2枚看板でもって80年米ロックシーンを席巻したナイトレンジャー。

今回、約9年ぶりとなる新譜リリースに伴う来日ツアーを行うとのことで、前来日時(03年)
のライブが珠玉の出来だったことを未だ忘れられずにいたこの身としては、こりゃ行くっきゃ、
ない!ない!ない!と早々みなぎっていたところに舞い込んできたニュースがよりにもよって
ジェフ、NR脱退」でしたからね。すっかり萎えさせられた末に「今回スルー」という選択肢まで
考えるほど意気消沈させられてたところへ聞いた次のニュースが「サポート・ギタリストは元
ウインガー、現ホワイトスネイクのレブ・ビーチ」というこれまた想定外すぎる情報。
でもって地味ではあるけどその滑らかなパッセージには定評のあるレブが来てくれるならこりゃ
やっぱし行く価値ありだろと再びやる気になっていざプレリザーブに申し込んでみれば、今度は
よもやの落選をくらう始末。いや、前来日時のクワトロに比べりゃ今会場はキャパ3倍のCCレモン
だからチケ余裕だろと思って若干なめてました。正直、追加公演なかったらヤバかったです。
ってか、NRってこんなに人気あったっけ?と少々首を捻りながら、花金で賑わう渋谷の雑踏
を擦り抜け掻き分け、ライブ会場であるC.Cレモンホールまで行ってまいりました。

でもって、彼等の持ち曲の中でも一歩抜けたカッコ良さを誇る"This Boys Needs to Rock"
から入って途中で"Highway Star"のソロに転調、さんざ弾き倒しまくった末、再び戻るという
盛り上がること必至の導入でもって相変わらずのステージ巧者っぷりを見せつけてくれたのを
皮切りに、"Sing Me Away"ではジャックお馴染み「ベース弾かずに叩いたり回したりしてただ
遊んでるだけ」という、本来なら単なる手抜きを芸の域にまで高めたパフォーマンスでもって、
おバカ極まりないけど、でも底抜けに明るくて抜群に楽しげという独特のヴァイブをホール中に
散布。これ、これですよ。音作りとかプレイ云々とかいう前に見ているだけで多幸感に満たされ
ちゃうようなステージングこそ、彼等最大の持ち味ですよ。

そんな序盤において個人的にグッときたシーンは、そこまでほとんど目立ってなかったレブが
新譜からの"Drama Queen"ソロで魅せてくれた流れるようなタッピングと、次曲の"Rumours
in the Air"にて今度は俺の番!とばかり、アーム使用と同時に左肘をフレットに当ててゴリゴリ
いわせまくってたブラッドの鬼ソロ。この「技」「力」という双極かつそれぞれの方向へ突き抜け
まくった超絶プレイを目の当たりにさせられ、ジェフが抜けた今でもその豪華絢爛極まりない
ギターバトルは未だ健在なりと妙に安心させられたり。(まあ、この思いは最後の最後で裏切ら
れることになるわけですが) その最たる瞬間が初期の名曲"Eddie's Comin' Out Tonight"に
おける後半ツイン・ソロ。それぞれ違うベクトルで際立つ個性を持つこの二人のプレイをユニゾン
で楽しめちゃうこのパートは本当、何度聴いても堪らないものがあると再実感。

その後、中盤過ぎよりライブ展開は、それまでのメロハー中心選曲から一転してバラード・モードへと
突入。2nd「Midnight Madness」において"When You Close Your…"に"Sister Christian"という
バラード系の大ヒット曲を二つも生み出してしまったが故、NR=バラードというイメージが強くなり
すぎて、その後のアルバム作りにおいてもレーベルから必ずその手の曲を入れるよう強要されるように
なってしまい、そのせいで本来の持ち味であるメロハー路線とのバランスを大きく崩してしまったという
経緯は、彼等を語る上で避けて通ることの出来ない逸話となっているわけですが、前来日時と合わせて
その手の曲をここまで固めて堂々プレイしているところから察するに、もはやその苦い過去に縛られて
いないのみならず、逆にそれを見せ場にしているしたたかな部分も伺えたりして、なんかその姿が妙に
眩しく映っちゃったり。

それと若干絡む話なんですが、セカンド以降の最終曲が常にその手のバラードっていうのは当時から
わりかし意識していて(抜粋すると↓な感じ)
 ・2nd:「Midnight Madness」→ "Let Him Run"
 ・3rd:「Seven Wishes」→ "Good Bye"
 ・4th:「Big Life」→ "Hearts Away"
実はこのお約束、当時の彼等に苦々しげな思いがあったかはともかく、個人的にはかなり気に入って
いた趣向だったもんで、その中でも特にオキニーだった"Good Bye"が流れた時にはやっぱしジーンと…
しかも一旦演奏を切ってからの再盛り上げがかなり神展開だったもんでことさらにそう感じたり。

そしてライブの方もいよいよ終盤戦。
新譜から1曲やった以外は前来日時と同じく、息もつかせぬヒット曲連発の畳み掛けモードへ。
今までずっと大人しかったレブがいきなりノリノリになったり、その勢いに呼応するかのごとく
ジャックもドラム台の上から飛ぶわ、ブラッドの首ねっこ掴んで振り回すわとそのハチャメチャっぷり
をさらに加速させてフィナーレへの道筋をしっかり照らしたところで、繰り出したのが彼等最大の
キラーチューン"Don't Tell Me You Love Me"。かつて某アイドルグループもパクったほどの印象的
なイントロといい、掘削機のごとく唸るリフといい、そしてツインリードの持ち味を最大限に活かした
ソロパートに至るまで一切の隙がないメロディックハードきっての名曲を前に、場内もこの身もアゲ一色
かと思いきや、レブが一番の見せ場である8フィンガーをトチってしまった時点で、周囲はともかく
僕自身はちょっと醒めちゃったかなと。いや、レブはレブで全然悪かなかったんだけどココ!という
場面においては前任者のジェフにほんの僅かながら及ばないところもあったかも(まあプレイスタイル
違うんで当たり前っちゃ当たり前なんですけど) 加えて最後方という席位置の悪さもあり、ノリノリ
だった前半に反して、少なくとも終盤においては前回ほどの興奮と感動を味わえるまでには至りません
でした。全体的なノリも要所要所じゃ沸いてはいたものの、その熱量が固定席のせいで分散しちゃって
いたせいか、どことなく平坦な感じになっちゃっていたようにも見えたし。

うーん、NRってな、やっぱし座席付きのホールっていうよりも、ライブハウス的なノリで楽しみたい
バンドなんですよね。その辺り、呼び屋さんには(今回はウドー)もうちょっと考えてほしかったかなと。
ただ「あえて言えば」なケチであり、彼等自体の出来が悪かったとか手抜きだったとか、そういうことは
一切なかったです。え?アンコール以降の展開?その途中でブラッドの誕生日を祝う為に出てきた双児な
お姉さんズの超ミニスカとそこからスラっと伸びてた生足が気になりすぎて、それどころじゃありません
でした。エロは音より強し。


<今日の一枚>

 Midnight Madness / Night Ranger

「全米制覇」どころかそれを一気に飛び越えて、チャートをさんざ蹂躙しまくった末、
「世界進出」までをも成し遂げた(唯一の)大出世作。
"Rock in America"を筆頭にツインギター構成を活かした良質なHRナンバー白押し、
加えてそれと対を為すメロ心満点のバラードもふんだんに搭載と全体バランスも良好。
まったく捨て曲のないアメリカンHRの大傑作に仕上がっているだけに、その後の凋落っ
ぷりがかえって目立つ格好になってしまったという不幸も。
「JOURNEY」とか「TOTO」、最近なら「Nickelback」とかが好きな方には特にオススメ。


<今日の無駄T>



#今回も、わざわざ派手な方のデザイン買って、後で見直してみて呆然とする羽目に。
 いかにも「アメリカー!」ってな感じの背面デカ文字とその意味自体が酷さにより拍車をかけてます。



<セット・リスト>

01:This Boys Needs to Rock 〜 Highway Star 〜 This Boys Needs to Rock
02:Tell Your Vision
03:Sing Me Away
04:Touch Of Madness
05:Drama Queen
06:Rumours In The Air
07:Seven Wishes
08:Secret of My Success
09:NaNa-Song:Lights(JOURNEY)〜 Hey Jude(BEATLES)
10:There Is Life
11:Eddie's Comin' Out Tonight
12:Once Bitten Twice Shy(GREAT WHITE)
13:Sentimental Street
14:Forever All Over Again -Acoustic-
15:High Enough(DAMN YANKEES)-Acoustic-
16:Good Bye -Acoustic-
17:Whatever Happend
18:Four In The Morning
19:When You Close Your Eyes
20:Dont' Tell Me You Love Me

21:Sister Christian
22:Your Gonna Hear from Me
23:(You Can Still) Rock In America


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