ALCATRAZZ + Joe Lynn Turner. 


2007年5月30日: 渋谷O−EAST

グラハムボネットがアルカトラスとして来日!」
ベストヒットUSA直撃世代にして今もなおHR/HMラブ、ほのかな加齢臭を漂わせ始めた
30過ぎの現役メタラーなら感涙して喜ぶであろうこのニュースを聞いたその日から、
これだけは何をさておいても見にいかねばなるまいと万全を期し、また万難を排して
準備してきた(主にジョブ調整)そのライブ当日が遂にやってまいりました!
というわけでいつもよりテンション若干高め設定で渋谷はO-EASTまで出向いてきました。


Joe Lynn Turner

あ、そいや今回はダブルヘッドライナー構成ということで「ジョー・リン・ターナ」も
一緒なんでしたっけ。すっかり忘れてましたよイヤッハハ、というわけでまず最初に登場
してきたのは元レインボー/元ディープパープルのジョーリンさん。実際、この人自身も立派
に伝説な筈なんですけど、どことなく感動が薄いのはたぶん3年前に「ヒューズ&ターナ」で
鑑賞済みだったからだと思います、そういうことにしておいてください。登場するやいなや
ご披露なされたそのとんでもなくポコってるビールっ腹にまず萎えてしまって何もかもが
どうでもよくなってしまった、なんてことは決してないですからイヤッハハハ…
と、まあ、ただでさえ出だしがどことなくヒキ気味だったことに加えて、はじめの2曲が
あまり評判芳しくないソロ作からのチョイスだったもんで、場内人口密度ほぼマックスの
満員御礼状態だったわりには、いまいちお寒い立ち上がりだったかなと。

ところがですね、3曲目以降の「Rainbow」パートに入った途端、それまでの葬式状態が
嘘だったかのごとく盛り上がり始めるわけですよ。いや、日本における虹人気の凄まじさを
まざまざと実感させられた一幕でしたね。ジョー自身も唐突にサングラスとかかけ始めて
ノリノリになっちゃってるし。そら、かっての盟友グレン・ヒューズに「あいつは過去の曲を
やたらとプレイしたがる。過去に立ち止まってる男だよ」とか言われちゃった末、同盟解除
されても仕方ないかもなと。しかしまあ、よもや演るとは思っていなかった後期の名曲
"Street Of Dreams"のイントロが奏でられた瞬間にゃ僕も感涙寸前でしたので、筋金入り
の虹信者同様、ミー自身も彼をこのようにしてしまった要因の一端を担っているという事実
を否定しきれませんな。ここにマリアナ海溝よりも深く反省したいと思います。

で、ふと右をみればそこにはジョー以上にノリノリと化して、若き頃のリッチー先生よろしく
左右にゆっくりと首振りながら恍惚の表情を浮かべている恐怖のヒキガエル男こと梶山先輩の
姿があったというわけで、余裕たっぷりに弾きこなしてるつもりが案外と手元ガン見だったり、
肘を曲げた拳を目の前に突き出して観客を煽るそのアクションがわりと噴飯ものだったりと、
もはや人間国宝級の域にまで達していると思われるそのダサさここに極まれりなステージング
でもって極一部のアキラマニアを熱狂の渦へと、そしてその他の人々を抱腹絶倒地獄へと叩き
こんでくれていました。

まあ、本人だけ本気汁たっぷりなわりに実は笑い要素たっぷりだったその仕草はともかく、
ジョーと共同で作ったという「Fire Without Flame」からの1曲"One Day Away"を聞く限り、
その作曲センスの方はまごうことなきホンモノさんなんですけどね。その後にプレイしたジョー
のソロ最新作からの"Blood Red Sky"も名曲とまでは言わないものの、十分に佳曲の条件は
満たしていそうな出来のいいハードバラードだったし、あまりにもオーソドックスすぎるその
R&Bスタイルが露骨に新鮮さを奪っているといった欠点さえ除けば、楽曲自体はそう悪く
ないんですよね、このコンビ。でも自信作である筈のソロ曲は実際、反応薄いと。そして再び
「Rainbow」を演り始めた途端、俄然盛り上がってしまうというこの地獄ループ、もし本人が
この流れを望んでいないのだとしたら、それを断ち切る為の鍵もまた「Rainbow」にあるので
はないかとも思ったり。例えばリッチーと再度組んでこれまで出した名盤を超えるような新作
を出すとか。もしくは絶対最終手段としてもう一度インギと… いや、なんでもないです。

 01:Your Love Is Life
 02:Devil's Door
 03:Death Alley Driver
 04:I Surrender
 05:Street Of Dreams
 06:One Day Away
 07:Stroke Of Midnight
 08:Blood Red Sky
 09:Power
 10:Can't Let You Go
 11:Can't Happen Here

 12:Spotlight Kid


ALCATRAZZ

ジョーリン終了後、20分程のセットチェンジを経て、いよいよ「やっさん」ことグラハム
率いる「ALCATRAZZ」が登場。でもって至極普通の黒スーツにサングラス姿という葬式帰り
のくたびれリーマンみたいな格好してヒョコヒョコ出てきたやっさん見てまず大笑いですよ。
ついでにそんだけフォーマルな格好しといて何故か下だけスニーカーという抜けたセンスが
ディレイでツボり始めた辺りで、とんでもなく大口開けてこめかみの血管も切れよとばかり
"Eyes Of The World"のサビを大熱唱し始めるというその狂態に… いや違うな、あれは歌
云々を超えてましたね、故に訂正 → 全身全霊の大絶叫というね、実にやっさんらしい口火
の切り方で場内を開幕から沸かしまくり。

そして次曲"Too Young To Die Too…"では、上半身を暗黒舞踏よろしくプルプルと痙攣
させつつ、更には右手に堂々とカンペを持ちながら、再び音程外しまくりの渾身シャウトを
ブチかますというね。本来ならプロとしてあるまじき姿を野晒しておいて何故か大喝采まで
もらっちゃうという、ロックの価値感を根底から崩壊させるがごときグラハムならではの
外道プレイを前に、僕はただただ唖然呆然とするばかりでしたよ。不思議なことにこんだけ
ハチャメチャしまくりなステージングのわりにゃ妙な説得性に満ち溢れてるんですよね。

で、前半からこれだけ飛ばしまくって本当に大丈夫?とか思ってたら案の定、「みんな、
もう声が出ないんだ、協力してくれ!」とか言い出す始末。え?ちょ早、まだ4曲目なのに! 
とまあ、この序盤にして早くも何でもアリ状態と化していた最中に響いてきたイントロが
あの"Stand In Line"だと分かった時の喜びったら…!出だしがいきなり「Rainbow」ナンバー
ってのにも驚嘆しましたけどこれにはもっと驚きました。しかもどこの豚の骨やぐらい
思っていたメタボリック全開ギタリストの「ハウィー・サイモン」が、あの難易度超A級の
ギターソロをほぼ完全再現してのけてまでくれるという。この人、その後もインギが本当に
神だった頃の超絶ギターソロの数々をほとんどアレンジなしで事も無げに完全コピーして
のけてましたし、もしかしたらその風貌も手伝って、現在の本人よりもよっぽどインギー様
らしいかも。

この頃、肝心かなめのグラハム様はどうなっていたかというと、あからさまにズレた方向へ
その絶好調度合いをますます上昇させた末、イギーがなんたら言いながら老いさらばえて
シナシナになりかけてる上半身を恥ずかしげもなく客前に晒したり、ペットボトルの水を
おもむろにズボンの中へジョボジョボと注ぎこんだり、駄目押しとばかり脈絡ないにも程が
ありすぎる三点倒立を唐突に披露し始めたりと、もうありとあらゆる意味でやりたい放題。
それ見させられてるてる僕等はもうすっかり孫のお遊戯見学気分ですよ。もしくは50年遅れ
の学芸会?

しかし老いてなお盛んといったその奇行に反比例し、前半から出し惜しみなしだったシャウト
の調子はますます苦しくなっていくばかり。特に"Jet To Jet"での上半身を真っ赤にしつつ
の力みっぷりとか、もはや立っていられなくなったか床に膝ついたまま声を振り絞ってる
その必死っぷりとかあまりに痛々しすぎて見ていられないほど。もう「お爺ちゃん頑張れ!
頑張れ!」って心の中でひたすらエールですよ。それが"Hiroshima Mon Amour"の頃にゃ
何故か「お爺ちゃんが死ぬ!死んじゃう!」に進化を遂げてました。もはや完全に老人虐待
レベルの域です。そんぐらい「酷い」ステージなんですけど、でもフェイク等の小細工一切
なしでひたすら体当たり勝負を仕掛けてくるグラハムのその姿に、体の奥底から立ち昇って
くるような類の感動を覚えてしまうのもまた確かだったかと。

というわけで、原曲自体の発声キーが元からあまりに厳しすぎる「ALCATRAZZ」ナンバー
連発の時間帯は見ているこっちもハラハラドキドキもんだったんですが、それ以降の「MSG」
&「RAINBOW」ナンバー目白押しな、旧来からのHR/HMファンにゃ垂涎ものの時間帯に入った
途端、それまでの音程はずしっぷり&息も絶え絶えのあえぎっぷりが嘘だったかのごとく
見事に立ち直って、フィナーレへ向けての終盤を彩るに相応しい歌いっぷりを見せてくれて
いましたね。
特にわざと滅茶苦茶なシャウトの掛け合いを客に仕掛けてそのお祭り騒ぎ的な混沌っぷりを
楽しんでた"All Night Long"での貫禄っぷりと、流れるようなドラムロールから一気になだれ
こんでいった"Lost In Hollywood"における弾けっぷりからは、先ほどの老人介護的な斜め
視点からでなく、真正面から素直に大スターとしての確かなる輝きを感じましたね。

しかもセカンドアンコールじゃ、再登場してきたジョーとともに肩を組みあってロニー時代
の名曲"Long Live Rock'N'Roll"をデュエットという、見ているこちら側がちょっとやりすぎ
なんじゃないのと思っちゃうくらいの過剰サービスまで披露してくれるというね。
まあ手に堂々とカンペをもってそれガン見しつつ、なお歌えていなかったというこれまた実に
グラハムらしいボケっぷりはあったものの、あの「RAINBOW」の第2期と第3期を支えた伝説
のヴォーカリスト同士が競演しているという、そんな夢のようなシーンを目の当たりに出来た
だけでも十分満足。今日来て本当に良かったなあ〜と心の底から思わせてくれた瞬間でしたね。

 01:Eyes Of The World
 02:Too Young To Die Too Drunk To Live
 03:God Blessed Video
 04:Stand In Line
 05:Big Foot
 06:Jet To Jet
 07:Sons And Lovers
 08:Kree Nakoorie 〜 Hiroshima Mon Amour 〜 Kree Nakoorie
 09:Will You Be Home Tonight
 10:Island In The Sun
 11:Desert Song
 12:All Night Long
 
 13:Since You Been Gone
 14:Lost In Hollywood
 
 15:Long Live Rock 'N' Roll


<今日の一枚>

 NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL / ALCATRAZZ

レインボーをつい勢いで追ん出ちゃって失意のドン底にあったグラハムと、
熱き野望を胸に抱いて単身スウェーデンから上米してきたばかりのインギ、
類稀なる才能と特異極まる個性を併せもつこの両者の、もはや二度とないと思われるコラボ
によって生まれた、HR史に燦然とその名を残す歴史的名盤。ハードとポップの対極テイスト
を共存させることに長けたグラハムのセンスと、「ネオ・クラシカル」という言葉を後に誕生
させるに至るインギの超絶技巧がものの見事に協調しあい、かつ互いを強調しあっている点に
着目して聴いてみてほしい「ハードポップ・ミーツ・クラシカル」、唯一かつ随一の逸品。
両者がまだ血気盛んだったあの頃だったからこそ作りえた、という当時の背景を鑑みるに、
万が一彼等が再度組むことがあってもこの作品を超えられることはまずあるまいと思われ。
故に心して聴くべき!


<今日の無駄T>



#これまた慌てて作ったことがバレバレなぞんざい極まりないデザインに、見た瞬間、萎え。
 でも、まあ、やっさんの為なら買うんですけどね。(本気でお金に困ってるっぽいし)


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