QUEENSRYCHE.


2007年6月1日: 新宿厚生年金会館>

今やHR/HM界史上にその名を刻む名コンセプトアルバム「Operation: Mindcrime」を88年に
リリースして以降、その時代・風潮に合わせたメッセージ色の強い作品を定期的に出し続け、
その象徴的な詩の世界とマッチしたメロディックかつプログレ臭漂う特徴的な楽曲の数々でもって
今もなお地味ながら安定した人気を誇る、米はワシントン出身のハードロック・バンドにして
プログレッシブ・メタルの先駆者「クイーンズライク」のライブを見に、新宿は厚生年金会館
まで行ってまいりました。前日がわりかしスカスカ気味だったと聞いていたんで、実は客入りの方、
ちょっと心配していたんですが、蓋を開けてみたら1Fはほぼ満員、2Fの方もかなり入っていた
みたいで、ここ数年ほぼ泣かず飛ばずだったその低迷っぷりが嘘のような埋まり具合、いかに
彼等の人気が根強いものであるかを実感できたひとコマでしたね。

そして開幕するやいなや聞こえてきたスラッシーなリフと「イラクから撤退せよ」と書かれた
看板をもって飛び出してきたジェフテイトを見て、初っ端から"Revolution Calling"キター!
とばかり場内はいきなりアゲ一色の大興奮ムードに。そしてよくよくステージを見れば端っこ
の方にソファーは設置されてるし、テイトはヘッドセットマイク着用の完全アクターモードだし、
これはもしかして「Operation: Mindcrime」をミュージカルモードで完全再現というもっとも
おいしい展開なるか!? とワクテカしながら次の展開を待っていたところ、曲が終わると
同時にステージ上が暗転、どこからともなく電話のコール音が響きだし、数秒間をおいてガチャ、
そして例の「ハロー」ですよ。はい、この時点で完全再現確定ー! そして照明が再び灯った
舞台上にシスターメアリー役のパメラとドクターX役に扮するテイトの姿を見つけて僕自身も
すっかり興奮状態に。あれ?でも主人公たるニッキーは?腐敗した社会を憎む革命ジャンキーは
一体何処?と更に舞台上を見渡してみたところ、単なるスタッフとしか思えない典型的メタボ君
がその小太った肉体をフヨフヨと揺らしながら懸命にニッキーを演じているらしき様をどこまでも
はっきり確認してしまうことと相成り、僕は自ツラがみるみる真顔に戻っていくのを如実に感じ
とってしまうのでありました。

その後、壮大なる悲哀劇を危うくほのぼの喜劇に変えてしまうところだったその小太りさんが
舞台袖に引っこんでジェフ自身がいざニッキー役を演じ始めたまでは良かったものの、今度は
その次に続く筈の、メアリーが娼婦からシスターへと対極の変貌をとげる下りを示す"Speak"が
ばっさりカットという、このパートを楽しみにしていた僕にとって大変悲しい出来事が起こって
しまい、それに加えてこの時点で完全再現の夢を打ち砕かれたミーのテンションはその後の静かな
展開のせいもあってか、穴の開いた風船玉のごとくシュルシュルと急速収縮していくことになる
のでした。

というわけですっかりショボくれきった末、そのまま消滅してしまったマイ元気玉でしたが、
ニッキーがメアリーにベタ惚れる下りを示す"Suite Sister Mary"における、徐々に緊張感
高まる展開辺りからムクムクと再誕、そのまま彼等の持ち曲の中では群を抜いた疾走度を誇る
"The Needle lies"へと繋げられた時点ですかさず起爆と、それまでのダウナーっぷりが嘘の
ごとく一気に絶頂へともっていかれることに。実際、彼女の予期せぬ告白、ドクターXからの
メアリー殺害依頼、葛藤・苦悩し尽くした末、組織を抜けて彼女とともに逃げる決意を固める
ニッキー、ヘロイン中毒に苦しむ中での逃避行、と目まぐるしく変わる場面展開を象徴するか
のようなそのスリル感とその中に終始みなぎる重圧を示すかのような圧迫感溢れるプレイにゃ
マジたまらないものがあったなと。「Operation: Mindcrime」をここまでの名盤に仕立て上げた
屈指の見せ場といっても過言じゃないんじゃないでしょうか。

第1編におけるその他見所としては、メアリー殺害シーン直後、ニッキになりきったテイトが
「メアリー?」を連呼しつつ観客席の中からいきなり登場してきたところとか、
その後、ドクターXの陰謀によりメアリー殺害の罪をなすりつけられてしまったニッキーが
絶望し精神を病んでいく最中にて"Eyes Of A Stranger"の悲哀極まりないイントロが響き
わたり始めたその瞬間とか、ニッキーの狂気を表現するかのごとき途中の情感むき出しなソロ
と合わせてかなり鳥肌ものでしたね。全身に拘束衣を着せられた末、車椅子に乗せられてスモーク
立ち込める中に退場していく衝撃的ラストシーンもまた、破滅的な曲調とその締め方にマッチして
いて最高にペーソスかつドラマチックでした。

そしてライブはいよいよ第2部へと突入、1部終了間際における「I Remember Now」の言葉通り、
復讐鬼と化したニッキーが再び現実社会へと戻ってくる冒頭の場面にて、めちゃめちゃ弾けてる
感じでアタッシュケースからお札をバラまきつつ"I'm American"を熱唱しているテイトの姿を
見ていきなり笑っちゃいました。一部ラストにおけるあの陰鬱フィールは一体何処へ?ようやく
自由の身となれたニッキーの「フリーダム!」全開感が、超絶ハイな曲調と重なって、第1編の
開始時に勝るとも劣らぬアガりっぷりを見事に演出していましたね。

が、その後の展開、復讐を誓ったニッキーがドクターXを探し回る下りにおける中盤以降のノリ
はあまりよろしくなかったように見受けられました。たぶんこれ、新譜の出来がどうとかステージ
パフォーマンスが云々の問題じゃなくて、ただ単純に「OM2」の認知度がまだ低いだけのこと
じゃないかと思ってるんですが、その欠点を埋める工夫が何もなされていなかったことに関しちゃ
少し残念だったかも。どうせここまでミュージカル風にやるならいっそ背後に巨大スクリーンを
配して、ストーリーの流れを示す歌詞の字幕くらい出してほしかったかなと。加えてドクターXと
ニッキーが直接対峙する場面を歌う"The Chase"がカットされていたのにも若干の不満を覚えま
したね。新譜においてその役割を演じているディオ様を呼ぶのは不可能としても、せめて代役の
誰かを連れてきて演じさせるくらいのことはして欲しかったかも。

そんなこんなで、どことなく特徴が薄いことを除けば曲調や演奏自体は決して悪くないのに
何故かノリはダルダルという不完全燃焼帯が続き気味だった第2編でしたが、テイト自身、
「OM2一番の見せどころ。全てがこの場面に向けて作られている」と新譜のライナーにて
語っていた"Murderer?"における、憤怒にまみれているかのような後半の激情ソロには至極
痺れましたね。…序盤にニッキーを演じていた小太りさんがドクターX役として再登場しさえ
しなければ… いや、だって殺るか否かをさんざ悩んだ末、結局は前者を選択してしまうニッキー
の人としての最後の葛藤を描く名シーンな筈が、殺される役のドクターXがどうにもお笑い
テイスト満載なもんだから、緊迫感という名のスパイスが希薄になっちゃって、どことなく
間抜けな感じに見えちゃってるんだもの。歌いながら演じているテイト自身の表現力や演奏自体
のそれは悪くなかっただけに、そういった細かい粗がより気になって仕方なかったですね。
場内の雰囲気を見る限り、ここでそう思ったの僕だけじゃないんじゃないかなと。

そんな第2編の微妙ノリに反比例して、と書いていいくらい、ステージ内外が一体となってアガり
まくっていたのが「Mindcrime」終了後のアンコール編における"Empire"。エッジの利いたリフが
醸し出すヘヴィネス、そしてドラマティズムが内包されたプログレ色、この二つの特濃エッセンス
が同居するこの曲こそ、今をときめく「ドリーム・シアター」の"Take That Time"と並ぶプログレ
メタルの道標といっても間違いじゃないでしょう。
全体的な感想を言えば、「見る」というよりは「観る」の要素が濃かったがゆえ客ノリ的には多少
厳しかった面もあったけれど、でもまあ、終わりよければ全て良しなんじゃないかなと、そんな事
を感じたラストでした。


<今日の一枚>



「QUEENSRYCHE」と言えば、切っても切り離せない関係にあるのが「Operation: Mindcrime」
シリーズですが、音だけ聴いてもいまいち弱いんですよねー、というわけで今回は映像付き
のDVDをアフェリでドン!と意地汚な根性全開でもって御紹介。いや、むしろこれミー自身
が購入する為用のリンクです。1&2のフルセットを完全収録な上、今公演ではカットされて
いた"Chase"におけるディオ様との夢の競演も収録とあって、最近興味を持ち始めた若葉マーク
から筋金入りのコア層まで分け隔てなく万遍なく楽しめる作品! ……な筈…
(というのはこの時点ではまだ発売されてないから)


<今日の無駄T>



#後日、アキバでこのTシャツ着てる人をみかけた時はマジびっくり。
 流石アキバ、できておるわー、と思いました。



<セット・リスト>

01:Revolution Calling
02:Operation: Mindcrime
03:The Mission
04:Suite Sister Mary
05:The Neelde Lies
06:Mary's Death Scene
07:Electric Requiem
08:I Don't Believe in Love
09:My Empty Room
10:Eyes of a Stranger

11:I'm American
12:One Foot in Hell
13:Hostage
14:The Hands
15:Signs say Go
16:Murderer?
17:If I Could Change it all
18:An Intentional Confrontation
19:Fear City Slide
20:All the Promises

21:Jet City Woman
22:Empire


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