イベントレポート(1998年8月〜11月)

 1998年8月〜11月の同人誌即売会を中心としたイベントのレポートです。
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1998年8月〜11月

 11月23日 コミックシティ in 東京 & コミティア46 東京ビッグサイト

 この日の有明は、これ以外にも、デザインフェスタ、コミックライブ系のゲームコミケが開催され、有明ほぼ全館を使っての、秋のおたく祭りの様相を呈している。こうした枠組みもこれで3回目。各イベント・即売会の相乗効果もあって、秋のイベントとしてはなかなかの人手であった。シティに関して言えば、ホールあたりの動員は、10月10日より多いと思う。これで、もう少し時期的に早く開ければなおのことよし、というところなんだろうけど、日程的に融通がきかないところが、つらいところ。
 コミティアは、1500サークルオーバーという過去最高のサークル数。ビッグサイトに負けない規模での開催である。この日に限り、一般参加者へのカタログ購入の義務づけがなし。コミックシティや他のイベントに来場した人間を自分のところのお客として少しでも取り込もうという姿勢は、さすがである。実際、参加サークル数に負けない一般来場者があり、これが今後につながっていけば…、というところであろう。

 11月 3日 コミックレヴォリューション24 池袋サンシャインシティ

・文化会館2F「ウナギの寝床」の光景。ほぼお昼過ぎ。[写真上左]
・文化会館とワールドインポートマートの間から見た一般行列。[写真上右]
・サンシャインプリンスホテルからの朝の下界の様子。D先生写真ありがとうです。[写真下]

 恒例秋のレヴォリューションである。カタログの書店事前販売が好調で、早々に売り切れが続出していただけに、かなりの混雑が予想されたのだが、案の定、春を上回る人出で記録更新。前回でもギリギリで運営されているなぁという感じがあったのだが、今回もよくなんとかなったものだ。文化会館の上下交通とかは、限界目いっぱいだし、一般参加者の朝の待機スペースも収容能力を超えつつある。ということで、本ページの春のイベントレポートでも指摘したが、現状の拡大ペースは、サンシャインシティでの開催規模の限界を超えつつある。とはいうものの、専従の事務スタッフがいるわけでもないし、スタッフの大部分はコミケットと掛け持ちということを考えると、規模拡大がベストの策というわけでもないのところがCレヴォとしてもつらいところ。また、もともとコミックレヴォリューション自体には、「即売会そのものを楽しもう!」という色彩がある。これは、大きくなったコミケットでは、もうどう逆立ちしても実現できないところで、いたずらな規模拡大は、これとも矛盾する。つまり、物心両面ともに「大きくすれば、解決!」というコミケット的対応(正確には、「大きくすれば、うやむや!」と言ったほうがいいかも(笑))は取れないわけで、主催者の匙加減が問われるところである。
 それでは、サークルの状況を見てみよう。Cレヴォでは、最初に入場する館ごとに一般参加者の列を分けて待機させている。この列が、多数の大手美少女サークルが配置された文化会館2Fの「ウナギの寝床」に入る列よりも、CUT A DUSH!と冗談じゃないよっ!が配置されたワールドインポートマートの館へ入る列の方が長い、というのが時節柄(笑)。特に、CUT A DASH!は、どう見ても4千冊近い持ち込み(これは、サークルスペースの梱包の量で判断した)を午後の早い段階で完売。おそらくは長いCレヴォの歴史の中で一番売れた本になるんじゃないだろうか? 夏コミケの新刊の版型が変わった再版でもこれだけの人気とはさすが今一番旬なサークルである。冗談じゃないよっ!は夏コミの新刊の残りと新グッズの便箋セットが販売物。ここも長蛇の列を作っていた。その他、ものすごい列になったのは、まるあらい。ここの所人気上昇中の新井和崎だが、予想以上の行列にちょっとビックリした。
 最後に忘れちゃいけないのは、野火ノビタ(榎本ナリコ)の批評総集編が出たこと。野火ノビタの批評活動が、ここ最近の同人誌における評論のレベルを圧倒的に超えているということは論を待たないところだが、それが一冊にまとまったのは、うれしい限り。予定より遅れての刊行だが、270Pの厚さは圧巻。初期の事実上の未発表作等も収められているので、野火ノビタファンは必読である。

 10月11日 ときめきパーティセンセーション4 池袋サンシャインシティ

 HIGH RISK REVOLUTIONのあいざわひろしさん主催の「ときパ」もサークル数およそ六百と、ギャルゲー系最大級のオンリーイベントとして、すっかり定着している。かつては、美少女系の一亜流に過ぎなかったこのジャンルがここまで大きくなった理由には、時代の要求があったという大前提はさておき、インフラとしての「キャッスル」と「ときパ」の存在が重要であったことは言うまでもない。今回はこれまでの蒲田のPioから場所を移し、ついに「美少女系の殿堂」(笑)サンシャインシティでの開催となった。一般参加者もかなりの数になったが、あのコミックレヴォリューションに比べればかわいいもの(笑)。しかも現場スタッフの多くをコミケットやレヴォリューションの中堅・ベテランスタッフが固めているので、つつがない会場運営であった。
 即売会としては、新刊はコピー本中心でオフセットの新刊はあまりないというのは、この種の即売会としてありがちな状態だが、「ときパ」だからということでコピー本を出していたサークルも結構見うけられ、この辺がサークルの即売会に対するロイヤリティの濃淡を表しているように思う。最長行列は、門井亜矢。夏の新刊の残りを販売したわけだが、これが夏コミケ後初のイベント参加。この久しぶりの新刊は夏コミケ当日途中で完売しているだけに、買えなかったお客が殺到。長大な行列となっていた。

 10月10日 コミックシティ in 東京 東京ビッグサイト

 この秋一番大きいコミックシティである。今年は会場側の都合で、毎年行われていた一万スペース規模の開催が実現できず、しかも、この日が決まったのが一番最後という悪条件。結局、現在の低落傾向の状態にも関わらず、十月中に3回も東京でイベントがあるというムチャクチャな状態と相成った。したがって、この10月10日こそスペースは満了となったものの、他の日程のサークルの集まり具合は壊滅的。サークル申し込みはあくまでサークルの自己責任であるには違いないが、このようにどの日付で申し込むかでギャンブルを強いられることに、サークルは非常な心理的負担を感じている。
 イベントそのものは、五〜六千人は一般参加者は来ており、最近のコミックシティにしてはマシなレベル。それでも、悪いと言われた去年秋に比べ、さらに一般来場者は半分以下だと思う。しかも、本を買わないことについてはさらにシビアになっている。極端な話、同人誌即売会というよりは、友達皆が集まるためのきっかけくらいでしかないようにさえ見える、と言ったら言い過ぎだろうか?
 その中で、目立ったのは「名探偵コナン」、「頭文字D」、「トライガン」といった最近の流行りもの。特に「トライガン」スペースの盛り上がりはすごく、買い手がスペースを一つ一つ真剣に見て、丹念にサークルをチェックする光景を久しぶりに見たような気がする。一部の大手サークルの中にもこれから「トライガン」本を作るところもあるようで、この人気、冬までは確実に続きそうな感じである。

 9月27日 サンシャインクリエイション1 池袋サンシャインシティ

 ポストコミックキャッスル戦争第二弾。コミックキャッスルからの正式な後継オファーを受けた関係もあって、クリエイションとしては異例に順調な(苦笑)サークル申し込みがあった。しかも、コミックキャッスル側もご丁寧なことに、サンシャインクリエイションの申し込み締めきり直前にもう一度かつての参加サークルにDMをうって、サンシャインクリエイションへの参加を事実上促したりと、フォローが行き届いている。こりゃ、クリエイションとしてはブロッコリーの木谷氏には足を向けては寝れまい(笑)。おかげで、スペース満了どころか、配置を変更してサークル数を増やしてもまだ足りず、一部のサークルが抽選漏れになるといううれしい悲鳴となったようだ。
 即売会としては、いくつかの大手サークルがオフセットの新刊を出したが、後はコピー本だらけという感じで、この辺はコミックキャッスルとほぼ同じ状況。サークル側の位置付けとしてもコミックキャッスルとほぼ同レベルというところだろう。まずは上々の滑り出しとなったのは、ご同慶の至りである。
 ただ、いくつか指摘すべき点はある。ひとつは、カタログの表紙。別に島田ひろかずが悪い作家というつもりはまったくないが、新しい即売会の第1回目のカタログにふさわしいかといえば疑問が残る。特に、サンシャインクリエイションがキャッスルの後継イベントとしての性格を持つ以上、ゲーム系・美少女系にディペンドするのは致し方ないところである。ならば、それにふさわしい作家を選んだほうがより即売会の性格に合っていたように思う。この辺は、クリエイションスタッフが実はあまり美少女系サークルに強くないという弱点がモロに出ているところだ。
 もう一つ問題なのは、これまでのコミッククリエイションに参加して来たサークルとの整合性である。実際当日いくつかの女性系サークルは、ほとんどまったく本が売れず(当たり前だ)、これほど男性向けのイベントであるとわかっているなら、サンシャインクリエイションには申し込まなかったという声を聞いた。確かに、コミックキャッスルとの継承性というところには注意が払われていたが、既存のコミッククリエイションとの兼ね合いについてはあまり意識されていなかったように思われる。男性の立場からすれば、キャッスルの後継=ゲーム系・美少女系という図式は簡単に導かれるが、女性サークルから見れば、その辺はよくわからないところで、額面どおりオールジャンル即売会と信じてしまったかわいそうなサークルがいくつかいたわけである。この当たり、もう少し細やかな配慮が必要だったように思う。
 そして、最後に注視していきたいと思っているのはクリエイションの方向性である。初めてのスペース満了でしかもたくさんの一般参加者を迎えてスタッフの意気が上がっているのはよくわかるが、自分たちが最初に立てた「約束」は忘れないでほしい。同人誌即売会の収益で会社を運営していくということだけを考えれば、サンシャインクリエイションだけを開催し、コミッククリエイションを止めてしまったほうが効率的であることには間違いはない。しかし、それでは他の企業系即売会と大差はなくなってしまう。「コミケットから生まれた同人誌即売会」と称する以上、志は大切にしてほしい。
 後、これは本当におまけで、苦言を呈するのも何だかなのだが、クリエイションのWebの掲示板のレベルの低さはどうにかならないのだろうか。しかも、内部情報が漏れて、スタッフ同士が足を引っ張り合っているのも丸わかりだし。Webの掲示板というのは、匿名性が高いので、荒廃しやすいのはわかりきっていること。ちゃんとした対応を取れる体制にないのであれば、掲示板など百害あって一利なしである。

 9月20日 第弐次スーパー封神フロンティア 東京文具共和会館

 封神演義のオンリーイベントでは最大規模のイベント。前回は、昨年秋に北とぴあでの行われたが、今回は場所を東京文具共和会館に移しての開催。1フロアを除くての4フロアを使って約3百スペース弱は立派。去年からの封神演義の盛り上がりを反映している。主催は、おしおきローズ。高橋果甫(まんが)さんと羽柴舞子(小説)さんのサークル。ちなみにご存知の人も多いだろうが、高橋果甫さんとは、トルーパー、サイバーフォーミュラ、ガンダムWなどで人気を誇った日向朝衣その人である。羽柴舞子さんもそのご当人の豪快なキャラクターもあって、女性系パロディ同人誌界の名物作家の一人。最近は封神演義の他に、なんとあの「大同人物語」のやおいパロディ本をも出してたりもする(ちなみに、夏コミケでそのパロディ本を進呈された平野耕太はとっても困った顔をしていたそうである(爆笑))。イベントそのものは、封神演義の大手・中堅どころがほぼ揃い踏みということもあって、一般来場者も多く、3回の入れ替えを実施したほど。もっとも、妖精王オベロン岩田((C)塚本ひじく)の陣頭指揮(笑)のもと、スムーズに一般参加者の誘導は行われた。

 9月13日 コミックストーリー1 池袋サンシャインシティ

 ポストコミックキャッスル戦争の先陣をきっての開催だが、カラオケ屋という主催者の素性が今一つ見えていないこともあってか、わずか二百スペース、会場の半分しか埋まらない惨敗。様子見の一般参加者こそそこそこ来ているものの、会場はガラガラ。あちこちの大手サークルへ営業をかけていたようだが、やはり二の足を踏んだところが大半だったようだ。で、カタログの表紙を書いているのが、門井亜矢と山文京伝なのだが、お世辞も力の入った絵ではない、というかやっつけ仕事。それ以前にどちらもこのイベントにサークル参加していないのだからお話にならない。それにこれで稼ぐしかないとはいえ、二百スペースでカタログ当日売りが700円は高いと思う。
 責任者が挨拶の放送で「開催中止などのデマも流れましたが」とか言っちゃうところもなんだか。まじめなのだろうけど、あの寒い会場でさらに不安を煽っても仕方があるまい。K-BOOKSがバックにいるという割には後手後手の対応と不思議に思っていたが、聞くところによると、K-BOOKS内部でもどこまでこのイベントに関与するか議論があったそうで、全面バックアップには程遠い状態のようだ。ただ、話を聞いてエグいと思ったのは、コミックストーリーが金を出すから新刊を出してくれと、一部大手美少女サークルに交渉を持ちかけていた点。刷り部数の一部についてはストーリー側に渡して彼らが自分たちでそれを販売して印刷費に充てる、というのが条件だったようだが、その分が、K-BOOKSに流れないという保証はどこにもない。というか、そうなるだろうことは火を見るよりも明らかなカラクリで、もうちょっとスマートなやり方はなかったのかしらと思ってしまった。しかも、参加スペース二百と聞いた途端、話に乗りかけていたサークルもしり込みしてしまったようで(そりゃ、そーだろう)、取らぬ何とかになっちゃったみたい。次回は1月ということだが、このままで継続開催できるのか、心配である。

 9月 6日 コミティアX 都立産業貿易センター

・とても同人誌即売会とは思えない会場風景(笑)[写真左]。
・入り口正面に置かれた各サークルのPRコーナー[写真右]

 久しぶりの都産貿での開催で、"X"の名の通りの番外編。即売会スタッフ女性陣は、ほとんどみんなが浴衣でお出迎え。サークルスペースに普通どおり机を置くか畳を敷くかが選択できたのだが、サークル側も心得たもので机より畳のほうが目立つ。というか、普通に机での出展のほうが肩身が狭そうだったのには苦笑。本を売る以外にも、音楽などの実演、服飾やアクセサリの即売、仕掛け人形のデモ、ビデオやパソコンを使った展示など、各サークル趣向を凝らしての参加が楽しい。同人誌即売会というよりは、学園祭に迷い込んでしまったかのような雑然さが不思議と心地よかった。一般参加者もあまり多くなく、本の売上という意味で満足なサークルはほとんどいないとは思うが、その場のノリを楽しめたならばそれを持ってよしとするのが、この番外編の正しい味わい方であっただろう。
 ただ、そんなアットホームな雰囲気を開場直後にぶち壊したのが、bolzeに並んで列を作った一般参加者。bolzeのメンバーがのんびり売ろうとしたグッズを買い漁っていった。まるで、この周りだけが他の普通の同人誌即売会であるかのようで、ちょっと興覚め。サークル当人たちもこんなはずではなかったという感じで、会場のいい雰囲気を壊してしまったのを恐縮してたのがかわいそうだった。

 8月30日 コミティア45 池袋サンシャインシティ

 Good Comic Cityの後に足を運んだのだが、途中首都高速の東池袋の出口渋滞で捕まり時間を無駄にした。しかも、その後は、横田守さんのサイン会(荻窪のまるゲ屋)に行くことになっていたので、滞在時間一時間弱。したがって、あまり多くは語れない。
 文化会館4Fのみということで、数的には六百サークルといつものコミティアと比較すると大幅減。夏コミケあわせの新刊をそのまま売っているサークルがほとんどというところ。ここ最近サンシャインでの開催となると、サンシャインの呪われた何かがそうさせるのか(苦笑)、「エロティア」になってしまいがちだったのだが、開場から見ていた友人たちに話を聞くと、今回はさほどたいしたことはなかったようである。

 8月30日 Good Comic City 東京ビッグサイト

 コミケット直後のComic Cityというのは、コミケットの落穂拾い的要素があって、以前からかなりのサークル・一般参加者が集まる即売会であった。特に、夏コミケ直後のGood Comic Cityは、参加費千五百円という格安価格もあって、1万サークルという大規模で開催されている。今年のGood Comic Cityも東全ホールを使用し、1万サークルを超える規模となった。しかし、やはりこのところのコミックシティと同様、一般参加者が少ない。朝九時半の時点で一般参加者の列に並んでいるのは、たったの八百人ちょっと。午後まで含めても、五〜六千人程度の来場者にとどまっていたようだ。これは赤ブーブー通信社にとってかなりつらいと思う。なぜなら、Good Comic Cityは、サークル参加費が安い分、当然にカタログ収入への依存度が高いイベントだからである。もちろん、Good Comic Cityには、年に一度のサークルへのサービスという側面もあるので、1回のイベントとしての単独収支を問うのは無意味ではある。しかし、サービスにも限界はある。これまでは、コミケット直後というだけで、それなりの数の一般参加者が見込めたわけで、安い参加費をカタログ売上である程度補完し、出血サービスを押さえることができた。しかし、今回程度の一般参加者では、それも厳しかろう。

 Good Comic Cityのようにサークル数が多い即売会の場合、いつもは一般参加者の人間がサークル参加で申し込む。特にGood Comic Cityのような参加費が格安ならなおさらである。で、当然ながら、そのままではその分一般参加者は減る。その一般参加者が減る分を普段はコミックシティに来ない人間がやってくることが期待される。つまり、スケールメリットに期待したり、コミケットのフォローのためにくるというような目的で、いつものコミックシティに参加しないような一般参加者が来なければ、結局はゼロサムで結果的には大きいイベントほど一般参加者が減ってしまう(減らないまでも確実な来場者としての分母が怪しくなる)ということなのだ。
 ところが、ここのところのジャンルの拡散傾向で、1ジャンルあたりのサークル数は減少している。元々女性読者というのは、ジャンル・カップリングへの依存傾向が高いから、1ジャンルあたりのサークル数の減少というのは、必然的に好きなジャンル・カップリングの本を探すのが容易になる。新興ジャンル(最近で言えば、「トライガン」とか「頭文字D」のような即売会への参加申し込みの後に盛り上がって、ジャンルによって、ブロックが分かれていないパロディなどがそれに当たる)を除けば、好きな本を見つけるのはコミケットで十分、わざわざコミケのフォローでコミックシティまで行く必要がない。しかも、同人誌に関する眼も肥えているので簡単には本を買わなくなっているし、このサークルの本を買わなければ死んでしまう! というような(笑)かつての情熱も薄れている。さらに、おたくの懐を狙う商売は花盛りで同人誌以外の使途の金は増えてるし、そもそも不況で可処分所得そのものが減少している。なんだかんだで、一人の人間が同人誌を買う量そのものが大幅に減っている。この状況ではわざわざGood Comic Cityにいつものコミックシティには来ない一般参加者がたくさん来るはずもない。

 さすがこの辺の機微には敏感らしく、今回目立ったのは、そもそもGood Comic Cityには参加しなかった女性系大手サークルの急増である。これまで、女性系の大手サークルのコミケットとその直後の即売会の参加パターンは、1.コミケット、2.翌週のインテックス大阪のコミックシティ、3.さらにその翌週のビッグサイトのコミックシティ、というローテーションをこなすのが普通であった。ところが、この夏を見てみると、コミケットと大阪のコミックシティには参加しているが、最後の東京のコミックシティ(つまり、今回のGood Comic City)には参加していないサークルが非常に増えている。大手サークルにとっては、参加費が安いということはあまりメリットではないわけで、一般参加者の動員が落ちているイベントに参加する必要はないという判断が働いている。

 これまで、コミックシティが東京で高収益をあげてきたイベントは、年に4回あった。それは、夏・冬のコミケット直後、十月の1万スペース、五月のスーパーシティである。ところが、十月のシティは今や通常のシティに毛が生えた程度、夏・冬のコミケット直後は上に述べたような状態。スーパーシティも、印刷所の親父たちが、コミケット準備会に「春コミケをやってくれ!」と申し出たという一件からもわかるように、勢いを完全になくしている。つまり、赤ブーブー通信社にとって、東京でフリーハンドで儲かる即売会は現状でひとつもないのである。今、赤ブーブー通信社の金城湯池といえるのは、夏・冬のインテックス大阪での開催のみである。しかし、インテックス大阪は赤ブーブー通信社の思い通りには以前から予定がなかなか取れない(実際この秋は開催できなかった)会場でもある。赤ブーブー通信社が、インテックス大阪からの天下りを引き受けたのも、その辺の関係の深化を狙ったものであろう。現状でインテックス大阪が生命線である以上、効果が期待できるのであれば、企業判断としてそれは正しいと思われる。しかし、それは既存のパイを守る効果でしかない。これも以前に述べたが、コミックシティに欠けているのは「場」の機能である。同人誌の売り買いの場のみを提供し、即売会としての魅力は、売られている同人誌に依存するという方法論は完全に行き詰まっている。コミックシティに行けば面白い、という自らの「場」としての魅力を発揮しなければ、ジリ貧に歯止めはかかるまい。例えば、今度の11月のように、コミティアのような毛色の異なる即売会と同時開催するというやり方は悪くないと思う。せっかく普段コミックシティには来ない同人誌ファンが同じ会場内にいるわけで、それをうまく吸引することによって活性化を促すというやり方もあり得ると思う(現実はたぶん何も考えちゃいないとは思うけど)。
 さて、過去のさまざまな経緯などもあって、このコミックシティの衰退には同情する向きがほとんどないが、実は同人誌界全体にとってもあまり楽しくない結果をもたらしかねないということはひとこと言っておきたい。もし、コミックシティがコケた場合のことを考えてみよう。他の中規模即売会は、美少女系やオリジナルに特化するといった特色を持つ場合には受け皿にはならないし、受け皿になるような即売会は、コミックシティと同じ衰退要因を抱えているので、代わりにはならない。そして、コミケットへの一極集中はさらに進むことは確実で、現状でもピークぎりぎりのコミケットの能力を確実に超える。また、個人主催のオンリー即売会も個人が管理できる限界があるので、これもまたできることに限りがある。
 しかし、愛されていない即売会がいくら細工をしても、それは参加者の心には届かないであろう。最近も、児童ポルノ法案に刺激されて、これまでのシティでは販売を認めていた同人誌を、事前通告なしでいきなり問答無用で販売停止にして、サークルとトラブってもいる。こういうやり方に象徴されるような運営体質は相変わらずで、サークルの共感は得られていないのが偽りのないところであろう。やっぱり、まずはそこからなのではないのかしら?

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