川村渇真の「知性の泉」

連載記事の掲載にあたって


ユーザーインターフェースの連載記事を公開

 以前、アスキー刊の「MacTech Japan」にて、ユーザーインターフェースに関する連載記事を書いていた。タイトルが「より使いやすいソフトを求めて」で、サブタイトルが「理想のユーザーインターフェースを考える」だった。雑誌にありがちな、ちょっと大げさなタイトルとサブタイトルだと思う。
 取り上げた内容は、ユーザーインターフェースに関する、既存OS上での改良アイデアである。ソフトをもっと使いやすくするために、具体的には何をどう直したらよいのか、毎回テーマを絞って書いていた。OSに含まれる機能だけでなく、アプリケーション側に関わる部分も対象とした。
 雑誌自体が途中で休刊となったため、1997年12月号から1998年9月号までの合計5回という、かなり少ない回数で終わった。開始当初に12回分のネタを準備してあっただけに、非常に残念である。毎回2ページで5回分しかないものの、このまま埋もれてしまうのはもったいないので、このウェブページ上で公開することとした。書かずに残ったネタも、いずれは本コーナーで公開しようと思っている。
 ウェブ上での公開に際して、いくつかの点で修正を加えた。連載したのはマック関連の雑誌なので、Mac OS環境を前提に書いてある。しかし、書いてある内容は、他の既存OSにも共通する改良アイデアだ。そのため、より一般的な話と感じるように、Mac OSに依存した図版を直すことにした。特定のOSよりも架空のOSのほうがよいので、ウィンドウのデザインなどを単純な形に変えた。また、扱っているテーマと関係のない部分は、思い切って省略した図版にした。これにより、書いてある内容が理解しやすくなるだろう。もう1つ、図版のサイズが小さくなるようにと、図の一部を削ったものもある。これにより画面上で小さく表示されて読みやすいだけでなく、ファイル容量が減ってアクセスも快適になる。なお、本文にはほとんど手を加えていない。

既存OS上での改良には限界がある

 扱った改良アイデアの前提となるのは、アプリケーションとファイルという、既存OSが持つ仕組みだ。正直なところ、コンピュータが使いやすくないのは、この仕組み自体に大きな原因がある。その辺の話は、本ウェブページの「思考支援コンピュータを創る」のコーナーで読んでほしい。世の中には、ユーザーインターフェースを改良することで、コンピュータがまだまだ使いやすくなると信じている人がいる。しかし、それは大きな誤解だ。内部構造を大きく改良しない限り、使いやすさを劇的に改良することはできない。
 だとしても、ユーザーインターフェースを改良するアイデアは必要である。少しでも使いやすくしようと思えば、既存OSでもすぐに採用できるアイデアだからだ。また、アイデアの種類によっては、将来のOSでもそのまま使える。もっと広い意味では、ユーザーインターフェースを設計する視点を与える効果もある。このようなことを考えて連載を書いていた。
 ここで掲載する連載記事を読むときは、以上のことを理解しておいてほしい。ユーザーインターフェースの改良という、使いやすさの向上に関しては限界が低いテーマとして...。

 雑誌で記事を書くと、見本誌として1冊もらうのが普通だ。しかし残念なことに、この連載の場合は最後の1回分しかもらっていない。連載を開始した段階では、編集部へ受け取りに行く時間もなかったので、編集担当者のK氏に電子メールで郵送を頼んだ。ところが、なぜか送ってもらえなかった。そのときは、いずれ編集部へ行ったときにもらえばよいと思っていたいので、何度もの催促はしなかった。そうこうするうちに突然と休刊になり、最後の号だけが郵送されてきた。こちらも非常に忙しかったので連絡しないうちに編集部も解散になり、古い分をもらい損ねてしまった。そんなわけで、第5回以外の掲載号に関しては、本当は何月号に載ったのか確信が持てていない。1〜2ヶ月ぐらいはズレているかも知れないが、あまり気にしないでほしい。まあ、そんなこと気にする人はめったにいないだろうが、些細な部分に文句を言う人がいるかもしれないので、あえて説明しておいた。

(1998年8月25日)


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