源義経公生誕848年 ふれあい祭り

判官森での 源義経公生誕祭2006

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源義経公奥都城の碑
(2006年7月16日午後2時半 栗駒沼倉判官森下 佐藤撮影) 

今しがた嬉し涙の雨舞ひて判官森の生誕祭終ふ
 

 栗 駒小学校生徒による「鳥舞」について

7月16日午前、みちのく風土館で神事を終えた義経公一行は、昼食後、甲冑神輿を先頭にみちのく風土館から茂庭町の洞松院(曹洞宗 山号は月峰山)に徒歩 で移動、そこからバスにて松倉の三条で下 車し、再び徒歩で、判官森の麓の「JA栗っこ栗駒ふれあい広場」まで向かったのである。降雨もなく無事、会場につくと、午後2時半より「祝賀奉納芸能祭」 が開 催されたのであった。




子供神楽「鳥舞」の奉納
(午後3時20分  佐藤撮影)

鳥舞のリズムに 乗って舞ふ子らの瞳に宿る黒谷神かな


トップバッターは、市立栗駒小学校生徒による「鳥舞」の奉納であった。栗駒は南部神楽 の伝統を色濃く残す神楽の里である。各地区には、「栗原神楽」や「猿飛来神楽」など、地域の名を冠した団体が意欲的に伝統の舞を継承保存している。最近で は旧暦の8月1日に行われる「東北神楽大会」が、今年で57回目を数え、まるで南部神楽のオリンピックの様相を呈する規模にまでになっている。これには岩 手県の早池峰神楽などが各地の一座が大挙して訪れるようになり、南部神楽の一大イベントとして、またこの地方の晩夏を彩る風物詩として全国的にも広く知ら れるようになった。

この南部神楽の伝統の中で、栗駒小学校の「鳥舞」は、そんなに古い歴史をもつものではない。1980年春、栗駒小学校のPTA役員だった千葉洋子氏が、当 時の栗駒小学校の校長先生と相談の上、存続が危ぶまれていた「鳥舞」を、子供たちに教えたら、教育にもよい影響があるのでは、との考えから「栗駒小学校神 楽保存会」を結成したのが始まりであった。千葉さんは、栗駒から山ひとつ越えた文字地区の出身であるが、それからというもの、子供の頃に見よう見まねで 習った「鳥舞」を再度研究、自らで鳥舞の衣裳一切を手作りで制作し、踊りの指導を長年に渡って続けて来られたのである。

以来26年間、地元に「鳥舞」ありとの評判が立ち、栗駒山の山開きなど、慶事に欠かせない芸能として、地元の人に親しまれるようになったものである。成長 期の子供の舞は、大人の舞とは比べられば、けっしてうまいとはお世辞にも言えないかもしれない。しかし私は子供たちが、一心に舞う姿を、実に美しいと感じ るのである。子供たちの舞台を駆け回る姿に、太鼓の原始のリズムと、切れのある鉦(しょう)の音が混じり合う瞬間、得も言われぬ感動を味わう。そして自分 の体内にある血が騒ぎ出すのが分かるのである。おそらくそれは私自身が自らのアイデンティティの何たるかを瞬間に感じ取ったからであると思う。

少し横道にそれるが、宮沢賢治に、「原体剣舞連(はらたいけんばいれん)」という詩があるが、その中に、こんな下りがある。

むかし達谷 (たっこ)の悪路王
まっくらくらの
二里の洞
わたるは夢と黒谷神
首は刻まれ漬けられ

このフレーズで賢治は、坂上田村麻呂によって、征服されたとみられる達谷窟の悪路王を詠っている。栗駒からほぼ北東に10キロばかりいくと、悪路王の根城 だったと云われる場所があり、そこに岩に染み着くようにして、岩屋(御堂)が建っている。これは田村麻呂が、清水寺を模して創建したものと言われている が、この中に入ると、怖いまでの霊気が常に漂っている。この中に封ぜられているものこそ、奥州人の中にあるアイデンティティ(集合意識)のようなものでは ないかと思うのである。賢治は、この詩に「mental sketch modified」という但し書きをつけている。訳せば「心象スケッチ修正」とでもなろうか。剣舞の原始的なリズムに賢治が自らの血の中にある何ものかに 刺激 され、直感的に綴った詩なのである。東北の神楽には、そんな独特の原始的なリズムが内包していると思う。



達谷窟(西光寺)
(2006.7.15 佐藤弘弥撮影)

達谷の窟に封ぜらられしもの嘆き聞こゆる内陣の奥

さて、栗駒小学校の鳥舞であるが、過去において、この舞に触れ、舞った多くの子供たち は、年々大人になり、今ではその子供たちの世代が舞う時代となっている。いつしか栗駒小学校と鳥舞は切っても切れない縁で結ばれたのである。これは地域教 育のひとつのあり方ではないかと思う。地元に伝わる文化や伝統に触れることなく、ただ進学のために勉強することの無意味と無味乾燥を、現代教育に携わる人 々は知るべきである。もっと云えば地元の文化や伝統を蔑ろにするような教育は教育ではない。ふるさとの伝統と文化を愛せずに、健全な愛国心も、家族愛も持 てるはずはないのだ。

2002年、千葉洋子氏は、その功績が認められ、(財)博報児童教育振興会(東京)の第33回博報賞を「伝統文化教育部門」で受賞されている。彼女こそ、 子供の情操を育む現代の指導者と言えるのではないかと私は思うのである。







幼きはかくあら んかな若者の鳥舞姿に牛若思ふ








判官の生誕祝ふ 今日の日に子らの鳥舞奉納に泣く




千葉洋子氏(左端)と「栗駒小学校神楽保存会連」

洋子氏の一念ありて栗駒の郷土自慢の神楽遺れり

 

2006.7.18 佐藤弘弥

義経伝説

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