10月18日(月)

 前回の日記の続報です。ラ・パルマ島の16歳、カルロス君から返事が来ました。前の日記では強調しませんでしたが、彼は"Otaku"です。可愛いので、皆さんにも少しだけ内容を教えます。
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こんにちわ!
ボクは今、来年の夏に日本に行く為に貯金をしてます。
今のところ、200ユーロ(約26,000円)は貯まってます。
まだまだ足らないのは知ってますが、"akihabara"で中古のゲームソフトくらいは買えるでしょう^^.

えぇっと、ボクは、貧乏な映画監督志望です。
この前、学校でボクが考えている映画の説明を友達にしましたが、みんなボクのことを狂ってると思ったみたいです。みんな、ボクが登校前にハッパをキメて来たと思ったみたいでした。
ジョイントなんて吸ってません。とっても高いですから。
ボクは、マンガを買ったり、スタッフ集めとかの為にお金を貯めてるんです。

この島に対してのボクの気持ちは複雑です。愛と憎しみの両方があります。
ボクはこの島で育ったのでこの島を愛していますが、あなたも御存じのように、この島の人は人との距離感が近すぎるんです。親密すぎるというか、しつこいというか・・・
それから、ボクのクラスのみんなはカトリックなんですが、ボクだけ無宗教なんです。
大したことではないかもしれませんが、ボクには重要なことなんです。

えぇと、日本と東京に関していくつか質問があるんですが、お答え頂けますか?

(1)プリペイド携帯ってありますか?高いですか?ボクが日本にいる間に、家族がボクに電話をかけられるようにしたいんです。
(2)東京に学生専用の安い宿とか、とにかく安く泊れる所はありますか?ボクはお金を持ってません。貧乏なんです。

質問は以上です。

Sayorama Yutaka sama
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 とりあえず、宿は、山谷とかを紹介しようと思っています。

 そう言えば、今月末締切りで原稿を書かなければならないことを思い出しました。岩波から出る『ジャーナリズムの条件』という本です。"岩波"、"ジャーナリズム"・・・考えるとツラくなってくるので、とりあえず、また、忘れることにします。



10月13日(水)

 日本での公開のスケジュールがなかなか決まりません。今回は配給の人に全部任せてあるので、どうして決まらないのかは私には具体的にわかりません。前作『新しい神様』は、基本的に自分達で配給したので、その辺りの状況がよくわかって動きようがあったんですが、今回は、動きたくてもやるべきことがわかりません。ただ待っているだけです。精神的に非常によろしくないんですが、仕方ありません。前回の配給がとても大変で、仕事も出来ずお金は出るばかり、という状態だったので、今回、配給会社に任せることにしたので。
 ただ、作家・土屋としては、2003年の作品を2年後の2005年に公開というのは、ちょっとツライものがあります。2年も経ったら、世界も自分も変わります。その時の自分の気持ちをその時に観客の人にぶつけるのがベストなんですが・・・きっと『PEEP "TV" SHOW』の商品価値が低いんでしょう。作品価値も低いと言われるなら仕方ないんですが。まぁ、永遠のテーマですね。

 と、ウダウダと考えていたら、スペインはラ・パルマ島の16歳の少年、カルロス君から可愛らしくも清々しいメールが届きました。内容は以下のような感じ。
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こんにちわ。
先週の水曜日、こっちのテレビで、あなたがこの夏に参加した映画祭のことをやってました。
あっ、ゴメンナサイ、英語が下手で。ボクはまだ16歳なんです。
それでボクは、あなたの映画にとても興味を持ちました。
だけど、ここ、ラ・パルマ島であなたの映画を観ることなんて出来ません。

今年の夏はバルセロナにいたんで、ラ・パルマ島の映画祭には行けませんでした。
テネリフェ島に小さなスタジオを持っているアートディレクターのおじさんに映画がどんなにカッコイイかを教えてもらって、ボクは映画が大好きになりました。
この夏、ボクは映画のシナリオを書いたんですが、撮影は全く出来ませんでした。
なぜなら、ボクはカメラを持っていないからです。
お金を貯めているので、来月くらいには買えるかもしれません。

えぇっと、どうしてあなたにこうやってメールを書いているのか、自分でもわかりません。
たぶん、監督や脚本家の人と知り合いになりたがっているんだと思います。
でも、こんな世界の果てに住んでいるクレイジーなティーンエイジャーのメールを読まされるなんて、きっとイヤでしょうね。
そう思うんですけど、どうしても読んでもらいたくて・・・自分でもちょっと混乱しています。

ボクは、ここ、ラ・パルマ島に住んでいますが、今、ここを出て行く準備をしています。
この島に住んでいるままでは何の可能性もありません。
だって、この島ではアジア映画も観られないし、"Manga"も買えないんです!

でも、そんなこと、大した問題じゃないのかもしれません。
うまく言えませんが、このモヤモヤとしたボクの気持ちを表すには、映画が一番だと思うんです。

どうか、何かアドバイスをよろしくお願いします。

"Sayonara Yutaka Sama"

"the canarian Otaku"より
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 で、私は返事を書きました。
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メールをありがとう。
世界の東の果てに住んでいる貧乏な映画監督です。

もし、キミが小さなデジタルビデオカメラを手に入れて、大きな希望を抱き続けることが出来たら、きっと、偉大な映画が出来上がるでしょう。
私の映画も物凄く低予算で作ったから、それがよくわかります。

私も16歳の頃、キミと同じように面白い映画なんて絶対に観られない田舎町に住んでいました。
だけど、私は、バイクを乗り回し、たまには本なんかを読んで、そのモヤモヤした気持ちを希望に変えて、結構、楽しんでました。

キミは島を出るみたいだけど、それはイイことだと思います。
ただ、今のキミの16歳のモヤモヤを忘れないで下さい。
その気持ちは映画を作る上で、とても重要なことです。

いつか、東京に来ることがあったら連絡下さい。
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 というわけで、公開のこととかウダウダ考えていないで、次回作のプランでも錬ろう!と思うに至った次第です。(次はSFみたいなの、やりたいなぁ)



10月3日(日)

 あっと言う間に10月です。昨夜は『PEEP "TV" SHOW』の主演の二人や助監督+αの人々とピエンロー鍋というモノを囲みました。そんなに飲み過ぎた記憶はないんですが、しっかり二日酔いです。

 先月11日の上映イベント後、BBSや個人メールで色々と感想を頂きました。「ラストはなぜか爽快だった」という感想が嬉しかったです。決して明るく前向きな映画ではないんですが、ラストで微かな希望を感じとってもらいたかったので。

 今月から来月にかけては、海外映画祭での上映が目白押しです。ベルギー、モントリオール、ウィーン、ハワイ、カリフォルニア、エクアドル、コペンハーゲン、シアトル、スペインと9箇所で上映があります。シアトルは映画祭ではなく、アート系の劇場での特集上映です。結局、今のところ、26箇所の海外映画祭等で上映された(される)んですが、一円も入金はありません・・・上映料を1箇所3万円もらっていたら、78万円になる計算なんですが、「なかなかそうもいきませんよ」(←劇中のひきこもり青年のセリフ)。まぁ、海外の人達に観てもらえる機会が多いというのはありがたいことですし、ネットを通じて感想やらDVDが欲しいとか、そういうことをやりとりするのは面白いです。映画がなかったら絶対に出会うことのなかった人達なので。
 で、11月のカリフォルニア大学のシネマテークでの上映には招待してくれるようなので、行って来ます。ココでは前作『新しい神様』の上映もあります。アメリカで『神様』の上映、というのも乙なモノがあります。原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』等の上映もあって、原監督御本人も招待されるようなんですが、上映日程がズレているので、多分会えないと思います。残念です。

 まだ気持ち悪いので、今日はこの辺で。