延年てふ古き舞あり不易
なる舞の形の源流なれば ひろや
2007年も正月が明け、この1月14日から、平泉の毛越寺では、「二十日
夜祭」(はつかやさい)とという祭儀がはじまる。その結願(けちがん)の日にあたる1月20日の夜、開催されるので「二十日夜祭」と呼ばれるのである。最
近、この祭は、「平泉の心を伝える祭り」と言われ、特に注目されるようになった。この祭の正確な起源は不明だが、毛越寺を創建した慈覚大師円仁さん
(794 -864
)から伝わる古い祭と言われている。式の場所は、大泉が池の奥にある常行堂である。例年、この時期、堂内は凍り付くような寒さにある。静まりかえった堂内
に、読経の声が響き渡り、それが終わると、祭のハイライト延年の舞が始まる。すると、堂内は華が咲いたようになり、不思議な温かさに包まれるのである。延
年とは、この地とこの地に住まう人々の平穏と長寿を願って神仏に祈りを捧げることである。
常行堂には、阿弥陀様が本尊として座し、その背後には見えない形で「摩多羅神(またらじん)が鎮座している。この神は円仁さんが、中国からの留学の帰途、
目の前に現れて、円仁さんを加護してくれた神である。それがいつしか阿弥陀様と集合して常行堂の奥に祭られたものである。
とかく、人は目に見えぬものを信じないものだ。しかし真に大事なのは、目に見えるものではなく、人の「心」のように目には見えないが、確かにそこに在る何
かである。また人は過去の伝統や歴史というものよりも、現在の流行を追い求めるものだが、真に大切なものは、人里を離れ山野を分け入った奥沢からこぼれで
る源流一滴にある。
二十日夜祭で奉納される延年の舞を見ていると、その後様々な形で生成変化する日本の舞の源流を観る思いがする。(佐藤弘弥記)
小夜更けて灯明暗き堂内に鈴の音すがし延年の舞 ひ
ろや
延年の舞 老女
(2005年1月20日 佐藤信行撮影)
人老ひて小野小町も老醜を晒すと言ふかそれも美し ひ
ろや