MOTION CITY SOUNDTRACK.


2008年2月19日: 渋谷O−EAST>

目下「エピタフ」にて絶賛売出中、米はミネアポリス出身の「Motion City Soundtrack」。
パンクというジャンルにおけるセカンド・インパクトの筆頭格「Bad Religion」のギタリストにして、
パンク専門レーベルのこれまた筆頭格「エピタフ」の社長でもあるブレット・ガーヴィッツ自らがその
ライブを見ずに音だけを聴いて即座に契約を決めたという逸話からなんとなく興味をもってはいたものの、
06年の「Epitaph Showcase」では仕事とぶつかって見逃し、フジロック07ではよもやのガチ寝坊で
これまた見逃しとどうにも縁がなかったバンドだっただけに、三度目の正直を試される今来日こそはと
万全を期して、渋谷はもはやホームグラウンドとなった感のあるO−EASTまで行ってまいりました。

客入りの方は、対バンが今やエルレと並ぶジャパンパンクの筆頭格「BEAT CRUSADERS」だっただけあり、
かなりの盛況っぷり。どこをどこからどう見ても「ビークルしか知りません!」みたいな格好した若者が
やたら多かったんで、正直トリの「MCS」が始まる頃にはフロアが空いちゃうんじゃないかとかなり心配
だったんですが、全然そんなことはなくてまずは一安心。

で、実際に彼らの生音を聴いてみてまず思ったことが「あ、想像以上にエモいわー」って。
所属しているレーベルのカラーもあってか一応パンクというジャンルに位置づけられてはいるものの、
優しくて柔らかいジャスティンの声質といい、ポップ感迸る美メロが前面に押し出た曲調の数々といい、
こりゃ確実にエモいわと。
この手の純正エモ系ってな、良質でしっかりとしたメロディを作るだけじゃ弱くて、楽曲毎の個性も
しっかり立ってないと全体の印象がボヤけがちになって即座に飽きられてしまうという、一見敷居が
低いようで実は非常に難易度の高いジャンルだと勝手に思っているんですがMCSはそういった基本を
「Jimmy Eat World」ばりにきっちり抑えた上で、かつ演奏も非常にしっかりしてるところなんかが、
かなり好みなんですよね。

そんな爽快メロディーの数々が作り出す開放テイストに、1人まるで似合わないメタル的な動きを
しまくって皆の視線を1人占めにしていたのがこのバンドの名物キャラ、キーボードのジェシー。
鍵盤を倒さんばかりに揺らしたかと思えば、昔の火傷の跡を隠してまーす的なアニメキャラばりの
髪型でもってのヘドバン風車、更には突然ジャンプして空中でこれでもかというくらいエビぞるわ、
とどめが鍵盤の上に逆立ちしようとするわと、まあふんだんにやりたい放題。正直こんなに動きの
激しいキーボーディスト見たのは「Dragon Force」以来ですよ。よっぽど浮きまくるかと思いきや、
これファンの皆さんにはお約束の予定調和アクションだったみたいで、みんな孫のお遊戯でも見ている
かのような牧歌的表情で、道化丸出しの彼をどこまでも生暖かく見守っていらっしゃいました。

そんなお笑い要素含みの視覚的ハイライトはさておき、演奏面におけるそれを挙げるとするなら、
美メロでもってしっとり聴かせた"Last Night"で場のノリを一旦落ち着かせた後の直情メロコアナンバー、
"Don't Call It A Comeback"はまずハズせないかなと。その弾けた疾走感に照明のフラッシュ効果も
相成ってフロアのアガりっぷりは相当なものでした。
また"My Favorite Accident"・"Time Turned Fragile"とともに勢いのある高速レンジの楽曲
でもって場のギアを一段階上げておいてから、哀愁含みのサビメロが秀逸な"Broken Heart"へと
繋げてそのグルーヴを弾けるシャボン玉のごとくパっと昇華させた流れや、ライブ終盤ということも
あって最早シナっとなってしまっていた「実験に失敗した博士ヘア」いわくその無重力ヘアを両手で
グッと逆立ててからの入りが格段にカッコよかった"Everything Is Alright"あたりも中々にグッド
フィールだったかなと。

表と裏のトーン切り替えを含んだ楽曲が多かったせいか、もしくはこれまでの強行ツアーの疲れがきた
せいか、もはや声がカスれて歌っているというレベルに至っていなかったラストの"Future Freaks…"
をオーディエンスが合唱で助けるという心温まるシーンも含めて、若さ溢れるエモーショナル・ポップの
良さをバンド・その客の両サイドから存分に味わえたいいライブだったと思います。
ただスタミナは(声帯の耐性も含めて)もう少しつけておいた方がいいかも。


<今日の一枚>

 「I Am The Movie」 / Motion City Soundtrack

03年リリースのMCSメジャーデビュー作。
良質のメロディが支えるポップパンクよりのパワーポップにシンセのアクセントを利かせた
音づくりは聴きやすさ、入りやすさともに保証付き。今ほど極端にエモエモしていないので
その手の層にも十分アピール可能な快作。
とにかく楽で軽くてほんの少しだけ切ないポップを聞きたくなった時などにオススメ。


<今日の無駄T>



#いつも黒が基調のメタルTばっか買ってるので、こういった色合いはかなり新鮮。
 とはいえ、ハンバーガーに巻き付くコブラというあまりに謎すぎるデザインはやはり普段着には
 いかんともしがたく…



<セット・リスト>

01:Fell In Love Without You
02:Better Open The Door
03:Capital H
04:Last Night
05:Don't Call It A Comeback
06:Make Out Kids
07:This Is For Real
08:L.G. FUAD
09:My Favorite Accident
10:Time Turned Fragile
11:Broken Heart
12:Antonia
13:It Had To Be You
14:Everything Is Alright

15:Attractive Today
16:The Future Freaks Me Out


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