[MySelf]


9月2日

<アニメのお話>

4回分ほど撮りだめたまま放置していた、とあるアニメを、おととい
まとめて見ていたら、そのうちの1回にものすごい衝撃を受けてしまったので、
その熱が冷めないうちにと、勢いのままに書いてみました


#今までの子供向けアニメの常識を根底から覆す、とてつもない名作ですよ、これは。


9月7日

<動物の扱いに関しちゃ属性がハチクロの森田と同じなんだ、たぶん>

旅立ってたんだ、鹿児島辺りへちょっと。

「こんな私を分かって!」的なエクスキューズ全開の自分語りをミクシに書きかけて
慌てて思いとどまったり、本棚の一番下のそのまた更に奥の方に詰まってるゲームブック
引っ張り出してサイコロふりはじめようとした自分に気づいた時点で、正直、相当ヤバい
とは思っていた。

だけど先日、友達がミクシ内で子猫の里親募集してるのに対して、かなり本気で名乗り
でようとか考えはじめた時点で、これはもういよいよ限界だと悟った。
猫なんか飼った日にゃ、また猫っかわいがりしすぎてノイローゼにしちまうに決まってる。
可愛さのあまり弓矢固めとかロメロスペシャルかけちまうに決まってる。
駄目だ、一時の感情に流されちゃ駄目だ、こういうことはきちんと考えなきゃ駄目だ。


だから旅に出たんだ、南の方へ。疲れた心と体を癒すため。
で、漫然と三日間を過ごしてきたよ。

たいそう豪華な水族館に行っておきながら、そこの自慢の大回遊水槽には目もくれず、
わざわざ小魚一匹たりとていない水槽の前に棒だって、そのどこまでも深みがかった、
限りなく濃艶なブルーを延々と眺めてるうちに危うくホロリと泣きそうになったり。

別府温泉の砂風呂内にてアンドロギュノス風オブジェを創作のち完全放置した折に、
すれ違った幼稚園児らしき男の子が洩らした「……マーマー?マーマー!」という、
多少懐疑的なニュアンスの中にどことなくこめられた、胎内への回帰願望を想起させるが
ごとき、どこか懐かしくも振り払いたくなるような感傷感を、いつか見た夢に重ねて、
軽いデジャヴおこしかけたりした。

あ、そいや桜島で行われたロックフェスにも行ってきたんだった。
「ハイロウズ」とか「GO!GO!7188」を遠目に眺めつつ、その場で飛んだり跳ねたりしてたよ。
氣志團の綾小路翔に「互いに肩組めー」言われてふと周り見たら僕1人だけがぽっかりと
孤立していることに気づいた時にゃ、そのまま黙って下向いて、歩き出して、会場を出て、
入り口付近の草むらにて、交互に草を結んで、せっせと罠を作ることに没頭し続けた。

その最中、ふと思ったんだ。やっぱり猫を飼おうって。とても強く思ったんだ。

で、そんなことを考えはじめた時点で、やっぱりこれはもういよいよ限界だと思った。
でも、やってみないと分からないことってあるじゃんか。そりゃ確かに、確かに過去の
過ちをまた繰り返してしまうことになるだけかも知れない、猫は本当に逆さに落としても
大丈夫なのか実験とか毎日バカみたいに繰り返すことになってしまうだけかも知れない、
仲良くしましょ仲良くしましょって互いの頬を無理矢理スリスリした次の日、絆創膏だらけ
の顔で会社に行くことに、また、なるだけかもしれない… 

でも、それでも、試してみないと分からないことってあるじゃんか?だから帰ったら
その足で婆ちゃん家に行こう、先日、冷蔵庫の裏で大量に自然分娩されたと思わしき子猫を
一匹ひきとって育てよう。そう思ったんだ。とりあえず、思うだけ、思うだけなら大丈夫、
考えただけなら罪じゃない。ほら想像してごらんよ、猫とともにある生活ってものを…

正直に言おう、実はさっそく家にいれた。とりあえず一緒に住んでみた。
やってみないと分からないことって、試してみないと分からないことって、やっぱあるなって、
婆ちゃん家で猫を見た瞬間、再び強く思ったから。
で、結論から言うと、同棲開始からきっかり8時間と53分後、憤怒の形相で突如来訪してきた
妹の「殺す気か!」の一言とともに、彼女はあっさり連れ去られていった。
ダチョウの竜ちゃん気取ってたわけじゃない、完全にマジ怒りのそれだった。

理由はあえて聞かなかった。心当たりがありすぎるから。
いまさら結果はどうでもよかった。気にしてもしょうがないから。

重い鉄の扉がガチャン!という音をたてて閉まると同時に、僕の手の中をすべり落ちて
いった「可能性」という名の未来。手の平をじっと見つめた後、ゆっくりと携帯を手に取り、
しかるのち妹に電話して、そして小さな声で一言、呟いた。

 「何ならいいの?」

…近いうち、時間を見つけて、ペットショップへ赴こうと思う。
別に大きくなくていいけど、でも小さすぎてもダメなんだ。
もちろん長生きするやつ。いっそのこと二匹飼おう、名前は既に決めてあるんだ。
沙羅と双樹。

30過ぎからはじめるカメ飼育、なんてのも、そう悪くないと思う。


9月14日

<錬金エクスプロージョン>

「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。
 何かを得るためには同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則だ」


茹でる必要のある袋入りラーメンとか、魚を切り身にして捌くとか、コンビニで売ってる
アルミ容器内包式の鍋焼きうどんを暖めるとか、後はせいぜい玉子焼きとかベーコン焼きくらい? 
まあ、そういった補助的な調理に関してなら、やったことがないわけでもなかったけれど、
本格的なそれってことになると話は全然別で、そう、確かに僕は、これまでの人生において、
料理というものと真剣に向き合ったことが、ただの1度もなかった。

その理由は至極簡単。興味が特に沸かなかったのに加え、必然としてやる必要を、今までの
生活の中において一度も認めなかったから。

そんな僕にこのたび、料理を試みるに至る一つの必然性が指し示された。
っていうほど大袈裟なことでもなかったのだけれど、ま、要は、遊びに行った先の家主様が、
「突然ではあるが、余は、お前ら下僕の手料理を食し、かつその味を評したくなってきたで
 おじゃる。もちろん必要な場所及び道具は貸し与えるが故、皆のもの、存分に腕をふるい、
 余の舌を満足させることができるよう最大限の努力を払うでおじゃるよ、オッホッホ」
みたいなことを唐突に宣いだしたその結果、僕は今までの人生においてただの一度も経験した
ことのなかった「クッキング」なる未知の作業を、半強制的に強いられる羽目になってしまった
というわけで。まあ、正直いって大ピンチ。

が、実は結構やる気満々だった、内心ちょっと自信あった。だって料理ってアレだろ?
いわば錬金術みたいなもんだろ?ならマジ楽勝だって。この僕とて、伊達にここ1ヶ月、
「鋼の錬金術師」にトチ狂いまくった生活を送ってきたわけではないのだ! 
というわけで、料理イコール錬金術と置き換えてしまえば、極めて簡単にそのロジックを
解明できることに閃いてしまった僕は、その論理をすかさず脳内で展開させ、錬金術三原則
であるところの「理解・分解・再構築」にのっとったテーマ選定と、それに沿った食材選びを
速やかに行うことで、他のライバル達に先んじて、早くも一馬身以上のアドバンテージを
得ることに成功したのである。

そんな僕が、厳選に厳選を重ねて選び抜いた食材がこちら。
 ・バナナ
 ・豆腐
 ・しいたけ
 ・豚肉
 ・パプリカ
 ・ジャンの素

ここで「なんだこの統一感のなさは」とか思った奴は間違い無く素人。
や、料理の経験度数という観点から考えれば、僕より素人という人間はこの世にあまり存在
しない筈なんだけど、錬金術学的に見るならば、僕の選んだテーマと上記食材群を見て首を
ひねるような奴は確実に素人であると断言せざるをえない。

では、ここでそのテーマを発表しよう。「柔もて剛を制す」である。ほら、納得したろ?
なに?まるで意味が分からない?食材との関連性も皆目不明?チっこれだから素人さんはよう。
仕方ない、お前等ハクチーどもにもよく理解できるよう丁寧に説明してさしあげるから、
いいこと?ようくお聞きなさい。

今回、僕が選択したテーマは「柔もて剛を制す」。この言葉を料理に当てはめ、それを
紐解くならば、その着地ポイントは「意外性」。もちっと分かりやすく説明するならば、
「硬質な歯ごたえの隙間からこぼれ落ちる柔らかな食感」が、今回の僕が追い求める
意外性の正体なのです。ガリっという擬音を想起させるようなパプリカの固き外殻に若干の
戸惑いを覚えつつ、いざそれを口にした途端、人々はその隙間からこぼれ落ちる内容物の
そのフルーティ極まる味わいに驚きを覚え、硬さと柔らかさを同時に味わうことのできる
その食感に感動し、次に、そこから包み込まれるような幸福感を得ることでありましょう。
そして、人間と同じく、料理も決して見た目だけでは量れないということを如実に実感
することになるのであります、これぞ味のみにとどまらない心の料理…!(拍手喝采)

と、どうよ、この練りに練られた調理プランの壮大さ。
さて、僕の狙いが諸兄の皆様方に十分ご理解いただけたところで、錬金術の基本である
理解・分解・再構築の三段フローに従って、さっそく錬成術式に入ることにする。
(両手をパン!と組み合わせながら)

(1)各食材の特性を理解する為、全てのそれを丹念に指でこねる。
(2)理解完了したところでおもむろに分解。
   具体的には微塵切りにしたバナナ・しいたけ・豚肉を軽くフライパンであぶったのち、
   容赦なくボウルにブチこみ、その上から豆腐とジャンの素を加えて徹底的にこねまくる。
(3)分解作業終了したところで再構築。
   中身をくりぬいたパプリカの中に、ペースト状になった正体不明のそれを、これでもか
   っていうくらいギュウギュウに詰めて、フライパン上にて、丹念に、存分に焼き上げる。

ようし、出来た! さあ、召し上がれ…!(はにかみ気味の笑顔で)





「なに?この得体の知れないクリーチャー?」
「食う気しない」
「とても無理」

そ、そんなこと言うなよ、せっかく作ったんだから。
それに料理は見た目だけじゃ判断できないって、さっきも言ったろ? 
そりゃ確かに外見的にゃちとアレかも知れないけど… でも中身はすこぶるつきの筈なんだ!
いわばこの料理は、僕自身を表現したようなものなんだよ!

「そ、そう?」
「じゃ、じゃあ少しだけ…(パク)」

まあね、正味の話、調理を始めてたったの5分で、こりゃとんでもないことになると、
うすうす気づきはじめてはいたけどね。
それにしてもだ。なあ、普通こういう料理批評のときって、多少マズかろうが、
「…あ、あー、まあ、こういうコンプリケートな味も、たまにはアリだよね」とか
「パンクっぽいアティテュードを感じるよね」とか「ピカレスクな味わいだね」とか
なんとか、曖昧にするもんじゃないの?ダイレクト描写をできるだけ避けて、優しく
オブラートに包むように、そっと表現してあげるもんじゃないの?

「マズい」
「絶望的にマズい」
「壊滅的にマズい」
「正直、マズいという言葉ではとても表現しきれない」
「失礼を承知で言わせてもらうけど、ホント大概にしてほしい」
「ってか、ゲロ?」
「いや、たぶんゲロの方がおいしい」
「確かにサカイさんをよく表している」
「料理名:サカイ」

オブラートに包まないどころの話じゃない。
僕めがけて、考えうる限りの最短距離で、次から次へと飛んでくる罵倒という名の投石。
ピッチング的に見るなら、もちろん、その一つ一つが渾身レベル。
しかも、その石、原始人が矢じりの先に使う石コロばりに鋭利ですから。
って、ねえ?ちょっと、聞いてる?それ、先が尖ってますから!ってねえ!痛い!痛い!

「これでも随分と遠慮して発言してる」
「今は殺意以外の感情がわいてこない」
「はやくしんでほしい」
「これ食うくらいならウンコ食う」
「料理名:サカイ」

いや、まさか。まさかね。たかが料理ごときでね。
「食べる」という、本来なら喜びの部類に属する筈のそれを、まさかここまで、
「怒り」とか「殺意」とかいった、喜びとはまるで逆ベクトルの感情に変換させる
ことができようとはね。やるやるとは聞いていたけれども、まさかこれ程とは…!
正直、驚愕した。ありあまる自分の才能に心底くらめいた。

「うるさい」
「お前、まだ食ってないだろ」
「能書きはいいから、一口、食ってみろ」
「料理名:サカイ」

ま、まあ、そりゃ自分で作ったんだから、当然食べるよ、食べますけどね。
それにしても君達、いくらなんでも言いすぎだったんじゃないの?
そりゃ僕だって、こういう時に場をオモシロおかしくしようってその気持ちは分からん
でもないけれど、でも、それにしたって、もうちょっとやりようってもんが…(パク)


…あのね。「あまりの美味しさに泣いた」って表現を、小説やエッセイの中でごくたまに見かける
ことがあるじゃない?あれね、僕、今までウソだと思ってた。だって、今まで生きてきて「食べる」
って行為で感動したことはあれど、感涙した経験なんて一度もなかったもの。
だけどね、今日はじめて知った。美味しさで泣くことはなくとも、その逆は確実にあるってことを。
まさか、マズさのあまり半泣きになるとはね。そんくらい素で泣いた。
いや、こりゃマズいなんて生易しいもんじゃない、良く言って汚物、普通に見て終電間際のホームに
よく転がっていそうなお好み焼き、悪く言うなれば、それを表現する言葉がこの地球上に見つからない、
正直そんくらいの代物と言っても差し支えない。その事実を僕の脳が受け入れた瞬間、僕はそれの
存在をようやく自覚した。

それはただ一言、こう呼ばれるものだった





「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。
 何かを得るためには同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則だ」


普通の人は、料理を代価に「喜び」を得る。
僕は、料理を代価にしたその見返りとして、「絶望」を知ることになった。


「料理名:サカイ」




以後、彼は「絶望の錬金術師」と呼ばれることになった。


9月16日

<なあ、どうしてバナナだったんだ?>

好物!

はい、ここで非常に残念なお知らせを一つ。…続き、あんだ(頬を赤らめつつ)。


ほぼ夜を徹して行われた料理対決のあとの帰り道。
うれし恥ずかし朝帰りな気分で優雅に楽しむ筈だった朝マックという名の軽いお茶会が、
何故かゆうに3時間を超える大井戸端会議へとトランスフォームしてしまい、それに徹夜の
ダメージが重なって、体力ゲージの残量はほぼミリ単位。あと波動拳1回防御したら終わりですよ〜
みたいな状態の中、あ、そいや今日夕方からライブあったっけ、みたいなことを漠然と思い出し、
正直とてもライブどころではない自らのあまりの疲れっぷりに思わずよろめいた。

が、今日のライブは暴虐の大スラッシュ大会であり、生粋のメタル野郎どもが延髄
突き割らんばかりにマキシマム・ザ・ヘッドバンカーと化して騒ぎまくる狂乱と狂騒の宴であり、
ここ最近、スリップと銀杏を除けば大人しめのライブ続きで多少なりともフラストレーション
が鬱積しがちだった僕のこの現状を鑑みれば、本日の「スラッシュ・ドミネーション」が
何としても見逃せない内容であることは確かであり。

そこで僕はさっそく現状を整理し、取り扱い方を少しでも間違えようもんならその後に
続く月火水木金の平日デー全てがインフェルノとなりかねない、間違いなく一週間のうちで
最重要であると考えられるこの日曜日の過ごし方について、綿密に計画を練ることにした。

まてよ、今の時間が10時?帰って11時と。で、シード見たりとか風呂入ったりとか
してるうちにたぶん12時くらいになっちゃうだろ?それから寝たとして会場行くまでの
時間を考慮すると… す睡眠時間2時間?む、無理…!

実際には2時間睡眠どころか、自分が昨日こしらえた汚物が下痢を誘発のち爆発させた
せいもあり、ほぼ一睡もできなかった。
しかし、それでも、行かねばならない… 男にはやらねばならない時があるのだ…
そんなたわごとを呟きつつ、這う這うの体ながら何とか会場のある駅までは辿り着くことが出来た。
が、やはり気合だけではどうにもならないこともある。そんな厳然たる事実を改札出た途端
クラっときてその場に昏倒しかけた自らの体でもって骨身に染みるほど実感することになった僕は、
やむなく前半3バンドの観戦を諦め、そのまま漫画喫茶へ直行。
そこで少しでも休息をとり、体力をある程度回復させたのち、トリの1バンドに持てる
全てのエネルギーを注ぎこむ作戦にでることにした。いわゆる「選択と集中」である。

3時間後、万全とはいかないでも、当方に迎撃の用意あり!と高らかに覚悟完了宣言できる
くらいにまで体力を取り戻した僕は、意気揚々とした足取りでライブ会場の入場ゲートをくぐった。
さあ、ようやく待ちに待ったこの瞬間がやってきた! 睡眠時間を削り、苦渋の決断に耐え、
今できることのみに集中し、やっとの思いでつくりあげたこのコンディション…!
全てはこのときのために! さあ、いざ光臨なされませい暗黒の破壊神、高々と振り上げた
そのト−ルハンマーでもって僕の全てをコナゴナに打ち砕いてくれ! テースタメーント!!

そして暗転するライト!そこらで飛びまくる黄色い歓声!遂にその姿を見せた4人の男達!
それを見て狂喜乱舞するゴスロリ軍団!

え?ゴスロリ?

「みんなー、トばしていくぞー!」

え?何故に日本語? しかも流暢?

ば、馬鹿な。だってステージ後ろのバックドロップにはちゃんとDir en grayって…

ディル!?(アン!グレイ!!)


あのね。これまで書いた文章の中で幾度となく「唖然」って言葉を使ってきたけど。
正直、過去の用法、ちょっと間違ってた。この状況に比べたら、全然ヌルかった。
ここまで「唖然」という表現にマッチする状況があろうとは、正直、思わなかった…!

「唖然」 いや、まだニュアンスが弱い。

じゃ「愕然」 これでも若干生ぬるい。

明らかに言葉の使い方を間違えていると分かっていてなお、こう表現せざるをえない。

「騒然」

だって僕の頭の中で、7人の愉快な小人達が騒ぐんだ。
「おーい」って。「どういうことになってんだー」「こりゃどうしたことだー」って

「おーい」
「返事しろーい」
「こりゃどうしたことだー」
「おーい」
「どうなってんだー」
「まさかなー」
「やっちゃったかー」
「やっちゃったのかー」
「とにかく返事しろー」
「おーい」

おい小人、今日の日付けは!? 「11日!」
チケの半券は! 「18日!」 ようし!(ガッツポーズ)

「キタ!」「ビンゴ!」「流石」「ヤター」「きたこれ!」「おめ!」「やるじゃない!」


<もし、僕が今> 〜作詩:サカイ〜

 もしも僕が今、ロビンマスクであったなら。
 アトランティスに、首を絞められていることだろう。
 もしも僕が今、ロビンマスクであったなら。
 きっと額からは、セントヘレンズ大噴火。
 もしも僕が今、ロビンマスクであったなら。
 ウォーズマンに、反抗されてるバラクーダ。
 あの奥さんは、ロビンの顔をみたことあるのかな?
 あの綺麗な奥さんは、ロビンの素顔をみたことあるのかな?

そう頭の中で唱えつつ、7人の小人達の背骨、タワーブリッジで全員へし折った。


まあね、正直言うとね。会場に入ったときからアレっ?とは思ってた。
いくら何でもスラッシュメタルにそのゴス・ファッションはないだろって内心笑ってた。
でも、明らかにその比率が多すぎるってことに気づいたときには、既に手遅れだった。
むしろ浮いてるの僕の方?って気づいたときには、会場内ほぼフルで埋まってて、
物理的に後戻りできない状況になってた。

だから逸らしたんだ、目を。

止めたんだ、思考。

その結果が。これだ!

そんな脳内の盛り上がりっぷりを他所に、リアルで盛り上がりまくる会場内。
たぶん約一名を除くけど。
ノリまくってるゴス集団にされるがまま、群集という海の中を漂っていく男。
たぶん死んだ魚の目をしてる。

…つまるところ、なんだ。つまり、アレか?
つまり、眼前で行われているライブに対する興味の大きさはブドウ球菌の直径以下であり、
チケの間違いに気づかなかったボケ係員の手によりその半券は完膚なきまでに破られており、
それが意味するところつまり本来見に行くはずだった来週のこの時間に再入場できないという
ことであり、膨大な時間と多大なる労力を費やしてようやく得られたものが狂熱の中で体感
できた筈のエクスタシーでなくして、−8500円の損失のみ、だったということか?

その事実を僕の脳が受け入れた瞬間、僕はそれの存在を再び自覚した。

それはただ一言、こう呼ばれるものだった





こんにちはー絶望さーん、また会ったねー!
「望みを絶つ」と書いて絶望と読む、うーん、その名に恥じないナイス仕事っぷり!
相変わらずいい絶ち具合だねー、今回の絶望っぷりにゃ久々にほれぼれした!感服した!
だからね!今日はもう思いきって捧げちゃう!この身!全てを!さあ小人達も御一緒に!

「…げる」
「…げる」
「…げる」
「…げる」
「…げる」
「…げる」
「…げる」


そう呟き続けながら家に帰った。
なあ、そろそろ教えてくれてもいいだろう?この世は一体いつになったら終わるんだ。


月27日

<明日を生きる勇気をくれ>

最近、ボクサーパンツなるものを愛用しはじめた。

もともと間違って買っちゃったパンツだったんだけど、使ってみたらこれが実によい。
トランクスみたいに、裾がジーンズのベルト上からだらしなく出たりしないし、
何よりもあの腰まわりをキュっと締めつけるフィット感が得も知れず気持ちいいのである。
そうか、女子の皆さんが好んでストッキングとか体型補正下着とか付けるのには、
こういった理由があったからなんだな。くそう、ズルいなあ、こんないいことを秘密に
していたなんて。

お稲荷様のポジションがきちっと収まるべきところに収まるところも最高だ。
これでもう電車の中とか飲み屋の席とかで冷や冷やしながらズボンの中に左手を
突っ込まなくてもよくなるし、その作業を一秒でも速く完遂させようとするあまり
勢いあまって根元を爪で突き刺してプギャーとかならずに済むし、何よりもそこまで
してなお、「あっ今、位置をなおしましたね!」とか突っ込まれて、表面上平静を
装いつつ心の中で七転八倒の身悶えとかしなくてもよくなることがとても嬉しいのだ。
筆舌に尽くしがたいあの屈辱をもう味あわなくてもよいのだ。
「なに、右向き?」「あっ左なんだ」「う、うん」「とりあえず手ェ洗ってこいよ」
とか、もうそんな不毛な会話をしなくても、これからは生きていけるんだ。

まあ、正直 女子の皆さんには分かりかねるだろうが、そのくらい健全な男子と
パンツの中身と袋のポジションというものは、切っても切れない関係にあるものなのだ。
何せその位置が正中線から大きくずれているだけで、頭に意識がいかなくなりだすもの、
当然仕事とか超やる気なくなる。次に下半身がむずがゆくなってきてモジモジしちゃう。
そのうち平衡感覚を保てなくなる。つまりアレだ、健全な男子にとって袋の位置と
いうのは、いわば猫のひげみたいなものなのだニャー。

けど、女子の皆さんにはそういうことってないのかな。
例えばブラの位置がずれて気持ち悪いとか、大陰唇の両皮がぴったしひっついちゃって
気持ち悪いとか、クリの包皮が何かの拍子にむきだしになっちゃって気持ち悪いとか、
そういうことはないのかな。
あっ、いけない、むき出しよ。よし、素早く左手突っ込んで直すのだ。あーん、きもちいい〜 
なんだ、気持ちいいのか。じゃあ仕方ないね。僕らは相容れない種族だった、残念。
何の話してたっけ。

そうだ、とにかくボクサーパンツはカムフォータブルという話をしていたんだった。
そんなわけでここ最近、すっかりボクサーパンツ愛好家となってしまっていた僕は、
その枚数を更に増やすべく、パンツを買いにコンビニへと出かけたのだ。
が、その際、ついサイズを間違ってしまい、Lを選ぶ筈がMを購入してしまった。
まあ、ボクサーパンツはもともと伸縮自在の凄い奴だし、多少きつかろうがそんなに
問題はなかろうと、とりあえず装着することに。
では、念心!合体!ゴー、ボクサーパーンツ!(アクエリオン調) 生きてるゥ〜
容赦なく下半身を締めつけるそのフィット感を心ゆくまで味わったのち、
そのまま朝まで熟睡をきめこんだ。 が、今、思えばこれがいけなかった。

もうね、とんでもない悪夢みたよ。
得体の知れない何かにひたすら下半身をキュッキュッキュってやられ続ける夢を見た。
それも物質的な質感じゃないの、明らかに生体系の感覚。しかもちょっと気持ちいいの。
でも、明らかにイヤなの。分かりにくいね、曖昧すぎるよね。でも夢なんて大抵がそんな
もんだよね。

で、汗びっしょりで目覚めた。即、パンツ脱いでシャワー浴びる。
腰回りにはゴテンクスのギャラクティカドーナツでキュイっと締められたがごとき
赤いスジが、もうくっきり入りまくり。
いや、マジやばかった。ボクサーパンツを甘く見た。ボクサーパンツを舐めすぎた。
と同時に、今回は背伸びをしすぎたかなあって、ちょっと反省した。
どうやら僕にボクサーパンツは早すぎた。まだトランクスが恋しい年頃だった。
まずは初心にかえるべきだった。

だからはじめることにしたんだ、身の丈レベルからはじめるパンツ選び。
サカイ、30台、独身、ひきこもり、趣味、ネット。パンツ、グンゼの白。そんな感じのスローライフ。
そういうのもわるくないよね。  



って誰か言ってくれー


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