川村渇真の「知性の泉」

部下のマネジメント


スキルアップと仕事の管理が中心に

 部下を持つ管理職にとって、仕事の質や効率を向上させるためには、部下のマネジメントが重要となる。その中でも特に重視すべきなのは、部下のスキルアップと仕事の管理だ。
 部下のスキルアップは、本人とじっくり相談しながら決めるのが基本。近い将来と遠い将来の両方を見据えて、どんな風になりたいのか、目標を明らかにする必要がある。その目標を実現するために、どのような能力を身に付けるべきかを求める。こうして検討した結果をもとに、勉強する計画を設計し、実際に試せるような仕事も計画に含める。このようにフォローしていけば、部下の能力が段階的に向上し、貴重な人材として育ってくれる。
 部下の仕事の管理では、管理すべき項目を見極めることが大切だ。これからの時代は、仕事の細かなやり方に注文を付けず、本人に任せる手法が主流となる。その意味で、達成目標、成果物の内容や条件、納期などを明確にして、他の部分は部下の自由にさせなければならない。
 仕事の管理の中には、リスクへの対応も含まれる。部下の一部が予定どおりの成果を上げられないと、全体での目標を達成できない事態にもなる。そんな状況を起こさないために、途中の段階で進捗状況を把握する方法が必要だ。報告する内容や周期を明確に決めてやらせるとか、製作物や設計物を途中で見せてもらうとか、レビューを実施するとか、遅れや失敗を発見できる形で進める。また、達成できないと判明したとき、その対処方法も考えておかなければならない。
 以上のようなことを達成できれば、大きな失敗で困ることは避けられるし、部下が成長してチーム全体の能力が上がり、自分の仕事の質も向上させられる。

部下ごとにアレンジすることが大切

 一口に部下といっても、相手は生身の人間。個々で性格、反応、感じ方などが大きく異なる。すべての部下に同じ対応をするのではなく、部下ごとの細かなアレンジが求められる。
 アレンジして利用するためには、マネジメント手法の手順はもちろん、その目的も理解しなければならない。どのマネジメント手法も、設定された目的を達成するために導き出されたためだ。それを理解すれば、目的を達成するための部下ごとの方法を検討する出発点となるだろう。
 アレンジするといっても、方法を大幅に変えるわけではない。目標を低めに設定するとか、フォローする間隔を変えると、最初のうちは丁寧に教えるとか、勉強と同時に仕事で試させるとか、細かな変更が中心となる。マネジメント手法の根本を変えることはない。
 正直なところ、どのようなアレンジが最適かを見付けるのは非常に難しい。実際に変えてみて、ダメだったら別な変更を試すしかないだろう。どのような変更が適しているのか、何種類もの変更を順番に試し、部下ごとに最適な方法を見付けるのが、結局は近道だと思う。
 部下ごとに個別の対応をする場合、もっとも困るのが根本的にヤル気のない人間だ。どんな仕事でも面倒くさがり、スキルなんて向上しなくても良いと思っていれば、どんなに誠意を持って対応しても、嫌がられる結果となる。残念だが、真剣に相手をしないようがよい。その分の労力を、ヤル気のある部下に割り当てるのが賢い選択だ。

(1999年6月23日)


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