川村渇真の「知性の泉」

ダメ仕事からも良い仕事術が見えてくる


ダメ仕事と一緒に良い仕事も知る

 仕事のやり方にはいろいろあるが、ダメと評価されるものもある。「こんなやり方では、レベルが低いと思われても仕方がない」と言われるような悪い方法も存在するし、ときどき見かける。そして、ダメと知らずにやり続ける人がいる。ダメ仕事をする大きな原因の1つは、ダメなことだと知らないこと。まず最初に、ダメ仕事が何かを知る必要がある。
 当然のことだが、仕事のやり方がダメだと判断するには、きちんとした理由が存在する。意味もなくダメだと判断するわけではない。また、ダメな理由が分かれば、それを解決するための方法も導き出せる。ダメ仕事の説明では、その逆に位置づけられる良い仕事術が常に存在する。ダメ仕事の内容を知ることで、良い仕事のやり方も一緒に分かる。
 ダメ仕事の理解には、大きな意味がある。まず、ダメ仕事の内容を覚えると、そんなやり方をせずに済む。自分の仕事全体で見ると、質が向上するわけだ。また、ダメな理由を理解することで、新しい種類の仕事に出会ったときでも、どのように行動して良いのか自分で判断できる。現実の世界では、いろいろな状況が起こるので、自分で判断できたほうが良い結果を得られやすい。

ダメな理由を知ることで考え方が向上できる

 ダメ仕事の理由は、時代とともに変化する。今までは問題なかったやり方が、これからはダメ仕事と判断される状況も起こる。できるだけ新しい価値観で、やり方の良し悪しを評価しなければならない。何が悪くて何が良いのか、時代に合った価値観で判断することこそ、これからの時代に必要な能力である。判断基準の中には、人権や環境問題、社会との関わりなどが含まれる。
 時代に合った適切な方法で仕事を進めるには、新しい価値観の理解が不可欠となる。その意味から、ダメ仕事の種類を知るよりも、その理由を理解することのほうが重要なのだ。また、ダメ仕事をするのは、仕事に対する考え方が悪いだけなく、社会問題に対する基本的な考え方が悪いためだいえる。仕事と社会問題を比較すると、社会問題に対する考え方のほうがかなり大きくなった。そういう時代に変わりつつあることを、深く理解しなければならない。世の中で起こっている多くの不祥事は、時代の変化に付いて行けてない人々が起こしている。ダメ仕事の典型的な例である。
 これからのプロ意識は、狭い意味の仕事を上手にこなすだけでは不十分だ。人権や地球環境、社会の仕組みといった点に関しても、新しい価値観を理解していることが求められる。それらを考慮した上で仕事のやり方を決定し、質の高い成果を生み出さなければならない。そのことは、人間としての成長にも大きく関係する。

(1997年8月29日)


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