川村渇真の「知性の泉」

頭の調子に合わせて行う作業を決める


現在の頭の状態を判断するように習慣づける

 頭にも調子の善し悪しがある。体と同様にだ。どうしても集中できないときなど、考えるのがおっくうに感じる。原因はいろいろ。前日に飲みすぎたとか、寝不足だとか、何等かの理由で調子が悪くなる。また、調子の良い日でも、それが1日中続くわけではない。本当に集中して頭を使えるのは、1日のうちで2時間程度しかないという。考える作業は疲れるので、そんなに長い時間続けるのは難しいためだろう。最初は調子が良くても、ある程度以上作業を続けると調子は低下する。
 考えることが中心の作業は、調子の悪いときに無理してやっても、成果はほとんど期待できない。時間をかけたからといって、それに比例した結果が得られるわけではない。調子の悪いときには、頭をあまり使わない作業をするのが懸命な選択だ。逆に、調子が良い時間は限られているので、そのときに重要な作業を行うことが大切。このように、調子に合わせて作業を振り分けられれば、良い成果を得られやすい。
 以上のような特性があるため、調子の良い時間を有効に活用することが、非常に重要である。その実現には、自分の頭の調子がどうなのか、普段から判断するような癖を付けなければならない。具体的には、次のようにして判断する。作業を始める前に、懸案となっている難しいテーマについて考えてみる。少しでもアイデアが出るようなら、調子が良い状態だと判断する。逆に何も思い付かないなら、もう少し簡単なテーマを選んで考える。このように、3段階ぐらいの異なる難しさでテーマを選択し、難しい順に考えてみると、その時の調子を把握できる。
 面白いのは、頭がボーッとしているときでも、考え出すとシャキッとすることがある点だ。もちろん、そうなる頻度は低い。しかし、可能性が少しでも残っているなら、試みる価値は大いにある。病気や二日酔いのときダメなので、それ以外のときは試してみたい。

調子の良いときには頭を使う作業を優先する

 頭の調子が良いときには、できるだけ考える作業を優先する。それをやって調子が落ちてきたら、あまり頭を使わない作業へと移行する。本当に調子が落ちるまでは、考える作業を続けるとよい。
 調子が良い中にも、いくつかのレベルがある。素晴らしく良いときには、もっとも難しいテーマを選ぶ。まったく新しい解決方法やアイデアが必要となるような、高い創造性が要求される内容こそ、そんなときに最適な作業だ。頭の調子に合わせたテーマ選びでは、調子のレベルを考慮する必要もある。
 かなり調子が良いときには、1つのテーマだけを考えるなんて、非常にもったいない。懸案事項となっているテーマを、片っ端から考えてみる。この際に重要なのは、何も思い付かないテーマは素早く終えて、次のテーマへ移ることだ。調子の良い時間は限られているので、有効活用するためには、どんどんとテーマを変えるのがベスト。もし何か思い付いたテーマに当たったら、そこでじっくりと考える。

調子に適した作業を割り振れるように普段から準備する

 頭の調子に合わせて作業を割り振るためには、普段の準備も大切である。調子が良いと分かってからテーマを探していたのでは、貴重な時間を失ってしまう。懸案事項を書類ファイルに入れておき、それを呼び出してテーマを選ぶ。テーマ名を入れるだけでなく、思い付いたアイデアも入力する。そうすれば次に開いたときに、前回の作業までの結果が簡単に見れるからだ。
 テーマの整理にどんなソフトを使うかは、その人の好みで決まる。一般的には、アウトライン・プロセッサが最適だ。アウトライン機能を持ったワープロ・ソフトでも構わない。階層構造でメモできるし、必要なテーマの内容だけ開いて表示できる。一番上の階層にテーマのタイトルを入れ、すべてのテーマを1つのファイルにまとめると使いやすい。また、難しさを表す数値か記号をタイトルの前に入れれば、適したテーマを選ぶのに役立つ。
 このような方法を用いると、頭の利用効率を最大限に高められる。自分の能力をできるだけ生かすためにも、この種の工夫は不可欠だ。

(1997年7月5日)


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