川村渇真の「知性の泉」

情報中心システムの機能の実現順序


5段階に分けて機能を拡張する

 情報中心システムで実現予定の基本的な機能は、「研究中の機能と進捗状況」で列挙したとおりだ。これらの各機能は、他の機能の実現が前提になっていて、その関係により実現順序が決まる。ただし、下位の全機能を最初に実現するとは限らない。どの機能を組み合わせて実現したら、より役立つシステムとなるかも、重要な考慮点となる。それと機能の依存関係を一緒に考えて、実現する順序が決まる。その結果は、以下のとおりだ。

情報中心システムの5つの機能レベル

 情報中心システムの機能進歩は5段階で、5つの機能レベル(L0〜L3+)として定義する。それぞれのレベルで実現すべき機能により、大まかな全体像は決まってくる。各レベルの概略を以下で解説する。

L0:データハンドリングの向上

 単行本「オブジェクト指向コンピュータを創る」で解説した内容で、データの扱い方を大きく改良したシステム。既存システムでは当たり前のファイルとアプリケーションという仕組みを否定し、オブジェクト・ドライバとオブジェクト・データで全部の機能を実現する。
 情報中心システム上での位置付けは、本格的な機能を実現するまでの橋渡しといえる。既存システムを段階的に改良しながら、このレベルの機能を実現し、本当の情報中心システムへと発展させる。その意味から、レベルの番号にゼロを付けた。パソコンのCPUの処理能力が急激に向上して現状を考えると、このレベルのシステムを通らずに、次のL1の機能を一気に実現するのが現実的となった。もし、既存OSを改良しながら情報中心システムへ移行するなら、実現しても良い。

L1:情報中心システムの基本機能を実現

 情報中心システムと呼ぶに相応しい機能を、最初に実現するシステム。ソフトを操作するという感覚ではなく、情報を直接扱うという意識で操作できる。既存OSとの比較では、比べものにならないほど使いやすく、より高度な機能を実現する。この段階で実現する内容を、雑誌連載の「思考支援コンピュータを創る」で紹介してる。

L2:情報機能をより柔軟に改良

 情報を評価して表示するとか、より複雑なデータ加工を簡単な操作で実現するとか、より高度な機能を追加したシステム。改良の中心は、データの加工や分析の作業を容易にすること。基本構造に大きな変化はないものの、細かな部分での使いやすさは向上する。

L3:創造的な作業の支援を実現

 創造的な作業の支援機能を内蔵する最初のシステム。いくつかの支援機能から、自分に合ったものを選んで使える。また、いろいろな学習機能を内蔵し、ユーザーの使い方に合わせて環境を自動改良してくれる。

L3+:創造的能力を向上させる支援機能の追加

 情報中心システムの最後段階で、創造的な能力を向上させる支援機能を追加したシステム。情報中心システムの上位である人間中心システムへ、スムーズに移行するための橋渡しの役割も持つ。その意味から、3にプラスを加えたレベル番号を付けている。

(1996年4月17日)


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