川村渇真の「知性の泉」

実現できる他の機能


実現可能な他の機能もある

 情報中心システムで実現予定の基本的な機能は「研究中の機能と進捗状況」で列挙したとおりだが、他にも追加すべき重要な機能がある。これらも並行して研究中で、システムの一部となる。情報中心システムの狙いを理解してもらう意味で、いくつか紹介しておきたい。

あとでアイデアを試行錯誤できるメモ機能

 アイデアをメモしながら考えをまとめる機能は、今後のコンピュータではますます重要となる。どのメモがアイデアとして発展するのか予想できないだけに、メモする機能とアイデアを発展させる機能は一体化しなければならない。どんな内容でもまずメモして、そのうちの一部を後から呼び出し、さらに発展しないかと考えて試行錯誤する。また、その結果は、再入力せずにプレゼンテーション機能や分析機能に渡せる必要もある。
 ここで重要となるのは、構造を持ったメモ機能だ。既存のコンピュータでは、図や絵を描く機能が手書きほど簡単でないため、紙にメモするよりも使いにくい。逆に紙では、一度書いた内容を変更しづらく、一部を自由に動かしたり合成したりできない。この両者の長所を合わせ持ったものこそ、新しいメモ機能である。箇条書きの言葉、構造を持った関連図や流れ図、自由に描いた絵などを、簡単に組み合わせられるだけではない。各要素を合成したり分割したりといった、試行錯誤を支援する機能も必要だ。また、入力したメモは、通常のデータと同じ形式で内部的には保存する。これによって、他の全部の機能でメモデータを利用可能になる。
 このメモ機能は、「創造レベル」の機能を実現するまでの暫定的なものとして、情報中心システムの初期段階から組み込む。途中から「創造活動支援」機能に吸収され、メモする機能だけは発展的に残る。
(研究進捗レベル=20)

分かりやすい説明の作成を支援する機能

 情報中心システムでは、理解しやすく情報を表現する機能が備わる。しかし、文章のように構造を持たずに作った説明内容は、自動的な表現機能を利用できない。説明する内容を作成する時点から、論理的に整理した形にしないと、理解しやすい説明にはならない。
 機能の実現方法としては、説明内容の作成を支援する形になる。単純な長い文章として作るのではなく、段落として分割した文章を組み合わせ、全体として論理的な構造を持った説明内容に仕上げる。文章だけでなく、いろいろな形式の図を多用して、より分かりやすい説明内容を作る。情報中心システムには各種説明図の自動生成機能があるため、図の作成は非常に簡単だ。
 支援機能が中心に置いているのは、説明内容の構成である。どんな要素が必要で、どのように並べるべきかを考えながら作っていく。さらに、説明の論理構造を確認しながら作り進めるので、説明をより論理的に仕上げられる。
 この機能は、「説明技術」をコンピュータに取り込んだものだ。きちんと体系化された理論をもとに支援する機能なので、本格的に役立つ形で仕上がるだろう。
(研究進捗レベル=10)

知識ベースと連動したシミュレーション機能

 シミュレーション機能は、コンピュータの特徴を活かせる分野の1つだ。ただし、これまでのものは、アプリケーションとして独立しているとともに、専門的であまり使いやすくない。今後のシミュレーション機能は、ユーザーの一般データを簡単に利用できるとともに、初心者でも容易に使える必要がある。
 情報中心システムで実現するシミュレーション機能は、知識ベースとの連動が最大の特徴となる。知識ベースに各専門分野のシミュレーション情報を入れ、専門家以外でも簡単にシミュレーションができる環境を実現する。それに加えて、一般データとの連携も重要だ。シミュレーションで必要な元データは、ユーザーが通常入力したデータを簡単に呼び出せるし、シミュレーション機能で得られた数値も、他の機能で利用できる。
 初心者のシミュレーションを実現するのは、知識ベースに入れる専門分野ごとのシミュレーション・テンプレートだ。これを簡単に作成するためのツールも用意することで、各分野の専門家が、いろいろなテンプレートを提供するだろう。それによって、より多くの分野のシミュレーションを、専門家以外でも使える環境になる。
(研究進捗レベル=15)

(1995年9月6日)


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