川村渇真の「知性の泉」

レビュー可能な形式の中身と役割


第三者がレビューできる形式で報告させることが最大目的

 世の中の流れは、情報公開のほうへと確実に向かっている。しかし、情報を単に公開するだけでは、きちんと作業したのかを適切に評価できない。評価できるような形で情報を公開する必要があるのだ。
 では、いったいどのような形式なら、きちんと評価できるのであろうか。その点を突き詰めたのが、レビュー可能な形式である。システム開発などでは、設計者とは別な人がレビューして、設計内容の悪い点を指摘し、より早い工程でミスや弱点を摘み取る。これと同じ考え方を、別な作業にも適用できる形に直した結果が、レビュー可能な形式なのだ。
 レビュー可能な形式で資料を作らせると言うことは、第三者がレビューできるような形式で報告することに等しい。それによって、対象となる組織の作業が適切に行われているかどうか、第三者が的確に評価できる最低条件が整う。
 このようなルールが当たり前になると、作業する人の緊張感が大きく高まり、より適切に作業しようとする意志が働く。また、不正行為がバレやすくなるため、やろうとする意志を抑止する効果も大きくなる。
 もう1つ大きなメリットがある。作業者ごとの成果がハッキリと分かるため、業績の評価が公正に行われやすくなる点だ。個人的な好き嫌いで評価できないため、業績評価に対しても不正行為をやりにくくする。
 加えて、レビューで悪い点が指摘されるため、作業者の能力も次第に高まる。何度かレビューを受けるうちに、実力が付いてくるはずだ。その結果として、作業の質も向上する。総合的に見ると、緊張感と能力向上の両面で、仕事の質を向上させられる。
 レビュー可能な形式の採用とは、まったく逆の発想に、倫理規定による不正の防止がある。倫理規定を設けて、それに違反する行為が発見されたら、処罰するという方法だ。しかし実際には、まさかバレないだろうと思うので、不正行為を防止する効果は小さい。組織全体がぐるになって不正を隠そうとした場合、まったく効果を発揮しない。その具体的な光景を、省庁や一般企業の例で何度も見てきた。

成功させるためには、運営ルールなどの規定も必要

 レビュー可能な形式を採用する場合、前述のような効果を期待している。そのためには、それを達成するような条件を整えなければならない。レビュー可能な形式で報告書の内容を規定するだけでは、ダメなのだ。
 まず、組織内で重要な作業が適切に行われ、その内容が的確に報告されるように、運営ルールを規定する必要がある。また、組織が正しく活動しているのか検査したり、公開した情報への改善案などを受け付け、キチンと対処することも求められる。このように、組織の活動を総合的に検討し、成功させるための条件を整備しなければならない。
 組織の活動内容によっては、自力だけで質を高めるのが難しい場合もある。公共事業の選択では、候補となる企画書がいくつも出される。個々の内容を深く検討するとなると、1つの企画書でさえ非常に時間がかかる。このようなケースでは、自分で評価する前に、すべての企画書を広く公表して、一般の人に検査してもらう方法が有効だ。他のケースでも、自力での改善だけでは難しいなら、組織外の力を積極的に利用して、活動内容の質を高めなければならない。
 いくらルールを厳格に決めても、現場の人が真剣にならなければ、成功するのは難しい。できるだけ成功に近づけるためには、それなりの工夫が求められる。この種の工夫もできるだけ多く実施して、失敗しないように努力すべきだ。
 以上のような条件を満たした形の、レビュー可能な形式を採用した運営ルールや、実施上での工夫がどのような内容になるのか、次ページ以降で詳しく解説しよう。

(2000年8月29日)


下の飾り