川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2005年07月


●2005年07月31日

ワイドショー媒体の人間的な醜さ

 テレビや週刊誌を中心としたワイドショー媒体で、若貴兄弟の話題が取り上げられている。以前は仲が良くて理想的な兄弟のように取り上げていながら、今度はまったく逆の取り上げ方だ。こうした扱いを見て、皆さんはどのように感じただろうか。私はと言うと、人間的に醜い行為を見たと感じ、ただただ気分が悪いだけである。もちろん、若貴兄弟に対してではなく、ワイドショー媒体の制作者に対してだ。

 ワイドショー媒体による若貴兄弟の扱いだが、以前はほとんどが良い内容だった。仲の良い理想的な兄弟であり、とくに兄の方は、人間的に凄く良い人という感じで。この時点でもう信じられない内容だが、なぜか良い話ばかり扱っていた。
 最近は、まったく逆の内容が中心となっている。兄弟の仲が以前から悪かったとか、両親や妻も含めた人間関係も良好でないとか、相続問題や年寄株のことまで含めて、いろいろなことを扱っている。その多くが、印象の悪い内容だ。
 それにしても、凄い変わりようである。同じ人を扱っているのに、こんなに極端に変わるものだろうか。それと、以前に正反対の内容を示しておいて、その訂正もしないのであろうか。
 よく考えると凄いことである。自分たちが勝手にイメージを作り出し、それを放映して(書いて)お金を儲ける。今度は、勝手に作り出したイメージとは違うことをウリにして、再びお金を儲ける。まるで、自分たちがまいたシロアリを駆除するためにお金を取る、シロアリ駆除業者のようだ。シロアリをまくときもお金を取るので、より悪いと言えるだろう。
 もう1つ不思議なのは、ワイドショー媒体の多くが、同じような内容を放映して(書いて)いる点だ。ワイドショー業界には、事実を調べて掲載するとか、自分たちの昔の間違いを表立って訂正する媒体はないのであろうか。私には、業界全体が揃って、人間的に醜いことをしているようにしか見えない。

 ワイドショー媒体の過去の行為を観察すると、信じられない現象の繰り返しが見付かる。有名人の中から特定の誰かを選び、ターゲットとして設定する。ターゲットを悪く扱う場合には、バッシング対象として、徹底的に悪く放映する(書く)。それを、ワイドショー媒体の多くで行なうのだ。
 もちろん、ターゲットを悪く扱うのではなく、良く扱う場合もある。その際には、ワイドショー媒体の多くで、同じように良く扱う。以前の若貴兄弟も、この良いターゲットだった。しかし、今度は悪いターゲットに設定されたため、非常に悪く扱われている。
 こうした方法を採用しているのは、おそらくお金のためであろう。視聴率を上げるとか、雑誌を売るために、徹底的に行なっていると思われる。お金儲けのためなら、何を放映しても(書いても)構わないのだろうか。
 こうしたやり方なので、事実かどうかなんて気にしていないようだ。また、間違っていることが判明したとしても、表立って訂正などしない。今回の若貴兄弟のように、良し悪しが途中で反転した場合など、その矛盾が明らかに見えてしまうので、過去の内容を表立って謝る良い機会である。それでもやらない点こそ、ワイドショー媒体の悪い特徴を端的に表している。
 さらに気になるのは、プライバシーの侵害に関してだ。たとえ有名人であっても、プライバシーに関しては、勝手に好評できないはずである。犯罪にでも関わってない限り。ワイドショー媒体では、そんなことを気にせず、売るためなら何でも扱う考えのようだ。

 今度は、バッシング対象となった側から見てみよう。業界全体が揃って悪く言うので、本当のことを訴える機会が得られない。そもそも事実など扱う気がない媒体ばかりなので、強く訴えても、事実だと証拠を見せながら訴えても、通じない可能性が高い。
 裁判で白黒付ける方法もあるが、日本の裁判は判定まで時間がかかるし、勝った際の保証金も少ないので、有効な対策にはほど遠い。全体としては、バッシングされた損害しか残らない。バッシング対象に設定されたら、たとえ悪い点が小さくても、悲惨な状況に決まったようなものだ。そんな悲惨な状況を作っているのが、ワイドショー媒体なのである。

 では、自分がバッシング対象に設定されたら、どうしようもないのであろうか。現在なら、少しは反論の機会がある。インターネットが普及したからだ。具体的には、次のように行なえばよい。
 バッシング対象となった場合には、ワイドショー媒体の放映した(書いた)内容を、できるだけ多く集める。もちろん、証拠として使うために。そして、放映された(書かれた)内容のうち、明らかな間違いを丹念に洗い出す。一覧表形式で整理すると良いだろう。
 整理した間違い項目について、証拠を示しながら1つずつ反論を作る。それを、できるだけ分かりやすい形で、ウェブページに載せていく。どの媒体がどのような内容を取り上げたのか、その間違いの指摘と証拠という組み合わせで。
 加えて、ワイドショー媒体は信頼できない点を知らせるために、過去の間違った放映内容(記事)を集めるとよい。それも一緒にウェブページへ掲載して、いかに信頼できない媒体なのか、多くの人に知らせると良いだろう。間違いを訂正しない点も含めて。過去の間違い内容を調べられないときは、趣旨を説明して、ウェブページ上で募集すればよい。今回の若貴兄弟のような例が、簡単に集まるだろう。なぜなら、ワイドショー媒体はとんでもない内容を何度も扱ってきているのだから。
 もう1つ、大事な注意点がある。ワイドショー媒体の書き手は、一応プロである。素人が反論する場合、表現の下手さが原因で負けてしまうことも考えられる。そんなときは、論理的思考と執筆の両方が得意な人に、手助けを求めよう。ワイドショー媒体の内容はかなりレベルが低いので、頭の良い人が味方になれば、簡単に反論できてしまうはずだ。

 以上の方法を実施しても、少しだけ問題が生じる。騒ぎが大きくなるほど、関係ない人間が意見を述べ始め、その中にはひどい意見も出てくることだ。それへの対処も、最初から考えておかなければならない。
 いろいろな意見が出るものの、そのほとんどはセコイ行為による悪口である。別な表現をするなら、議論の姑息手段を使った悪口だ。こうした悪口の対処には、姑息手段であることを指摘しながら、1つずつ反論していくしかない。
 最初のうちは大変だが、ある程度まで反論が揃うと、似たような悪口としてまとめて反論でき、最後は楽になる。また、姑息手段への反論は、それを読んだ人が賢くなると言う特徴もあるので、積極的に労力を使う価値も大きい。世の中へのボランティアだと思い、地道に続けるのがよいだろう。

 ここまでの説明でワイドショー媒体と表現しているが、媒体自体が内容を勝手に作るわけではなく、中身を作っている人間が必ずいる。記事を書いている人、放送する(書く)内容の方向性を決める人、放送や掲載の判断を下す人などだ。このような人が、ワイドショー媒体の被害を作り出している。
 そろそろ、自分たちの行為の人間的な醜さに、気付いても良い頃だろう。世の中は、少しずつだが変わりつつある。今までのような醜い行為を、そろそろ止めて良い時期だと思う。

 ワイドショー媒体による若貴兄弟の話題を見ながら、以上のようなことを考えてしまった。かなり大事なことであるが、世間で話題になることは少ないようだ。そもそも、ワイドショー媒体に関わる人に、人間性を求めても無駄なのだろうか。


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