川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2004年05月


●2004年05月31日

言われてガッカリする言葉

 メールも含めた会話の中で、聞いただけでガッカリする言葉というのがある。どんな言葉が該当するかは、人によって異なるだろう。私にとって該当する言葉の1つに「言われると思ってました」がある。たまに遭遇する言葉のようで、先日も聞いてしまった。

 なぜガッカリするのか、簡単に整理してみよう。この言葉は、何か注意された人が、注意した相手に返答する際に用いられることが多い。
 言葉の意味をそのまま解釈するなら、注意される行為を予想してたことになる。当然、注意された内容も含めて。ということは、注意された内容に関して、気付いていたことを意味する。事前に気付いていたのに、それを直さずに失敗してしまったと。
 これは、気付かなくて間違ったよりも、かなり悪い。気付かなかったのであれば、注意されたことで気付き、次回から改善できる可能性が高い。しかし、気付いていて間違ったなら、次回も同じように間違う可能性が残る。どうしたら次回から直してもらえるのか、注意した側としては、有効な手を打ちにくい。
 私の過去の経験から判断する限り、この言葉を使う人には、注意が通じにくい。いくら大事な注意点であっても、無視されてしまいやすい。何度も何度も注意して、ようやく効果が現れる場合が多かった。
 こうした視点で評価するからこそ、言葉を聞いただけでガッカリするのである。「今回の注意は無視される可能性が高そうだな」と、聞いた瞬間に思ってしまう。これがガッカリの一番の原因だ。

 自分では使わない言葉なので、使う際の気持ちは理解できない。それでも、使う理由を少し考えてみた。
 真っ先に思い浮かんだのは、「指摘された注意点ぐらい気付いていると、意思表示したかった」という理由だ。この場合、注意点に気付いている方が、気付いてないよりも優秀だと判断して、この言葉を使っているのではないかと思う。しかし、前述のような視点で評価すると、そうではない。大事なのは、次回から改善されるかどうかなのである。
 もっと別な理由も考えてみたが、つじつまの合いそうな理由は思い浮かばなかった。やはり、自分にとって悪い印象の言葉なので、納得できそうな理由なんて思い浮かばないのだろう。
 この言葉を使う際の特徴として、気付いている点が1つある。注意された行為に対して、謝らない傾向が強いことだ。もしかしたら、謝らなくて済むように、この言葉を使っているのだろうか。だとしたら、非常に困ったものである。

 最後に、もっとも大事な点を強調しておきたい。済んでしまった行為(今回の話題では、注意の対象となった行為)は、既に起こった過去のことなので、後から変えることができない。大事なのは、次回から同じ間違いを行なわないことである(当然ながら、失敗のリカバリーも)。
 加えて、誰かに注意された場合は、注意してくれた人に対して、次回から間違わずに行えると信頼させることも大事である。それが達成できるように、注意への返答で使う言葉を選ばなければならない。今回の「言われると思ってました」は、信頼とは逆の印象を与えてしまう。どんな言葉で返答すべきか、よく考えて選ぶできであろう。


下の飾り