川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2003年11月


●2003年11月15日

アンケート記事を読んで考えたこと

 日経ビジネスの2003年11月10日号で、中日ドラゴンズの落合監督が成功するかどうかのアンケート結果が載っていた。記事から察するに、アンケートの狙いは「オレ流と呼ばれる独自の流儀を貫いた一匹狼が、組織を束ねる立場に就いたこと」に関して、読者がどう思うのかを調べることだろう。成功するかしないかだけでなく、そう思った理由まで含めて。
 アンケートの質問は3つあり、第1問は「監督として成功すると思うか」だ。回答は「成功すると思う」、「成功すると思わない」、「分からない」の3つに分かれている。「成功すると思う」が29.8%とほぼ3割で、「成功すると思わない」が47.5%と5割に近い。
 編集者がこの記事で一番見せたかったのは、第2問の「成功すると思う理由」と、第3問の「成功すると思わない理由」ではないだろうか。読者がどんな理由を挙げるのか、ビジネスパーソンから見た意見を紹介したかったのだと思う。

 以上のような意図とは関係なく、別なことを考えてしまった。最初の出発点は「自分なら何と回答するか」で、第1問の3つの回答から選ぶとすれば「分からない」しかない。しかし、本音を正しく表現するなら、「分からない」ではなく「分かるはずがない」である。
 その理由は簡単で、たとえ「どう思うか」であっても判断材料が必要なのに、その材料を私がほとんど持っていないからだ。落合氏には監督の経験がないため、過去の実績から判断するのは不可能。また、コーチの経験があるかどうか知らない。加えて、管理能力がどの程度なのかも、まったく分からない。判断に必要な情報が皆無に等しい状態なので、「分かるはずがない」と思ってしまう。
 分かるはずがない以上、第2問と第3問には回答できない。これが、アンケート記事の意図とは関係なく考えた内容だ。真面目に分析した結果でもある。

 今回のアンケート記事は、真面目な分析を求めるものではなく、単なる“お遊び”として作っている。当然、回答する側も単なる“お遊び”として回答しているだろうし、記事を読む側も同様であろう。
 たとえ“お遊び”だとしても、回答する前に「判断するためには何が必要か」を自然に考えられることが重要となる。自然に考えるというのは、考える癖が付いているのに等しい。そうした癖を持っていると、いろいろな場面で不適切な意見を述べることが大幅に減る。
 さらに加えると、お遊びでない場合、「アンケートや質問などの内容に意味があるのか」や「質問の内容が適切か」まで、回答する前に判断すべきだ。さほど意味のない質問や不適切な質問が、意外に多いのだから。

 せっかくなので、お遊びとして思った結果も紹介しよう。残念ながら「成功すると思う」や「成功しないと思う」にはならなかった。お遊びだったとしても、「分かるはずがない」は否定できなかった。代わりに思った内容は「成功してほしい」である(これが第1問への回答)。しかも、「今までの監督とはまったく違った運営方法で」という条件付きで(これは第2問の回答にはならないが、広い意味では回答に少し相当する)。選手としては、オレ流で独自の道を歩んで成功したのだから、監督としても同じように、ユニークで面白い結果を期待したい。


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