川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2002年09月


●2002年9月10日

短期間で効果的に勉強する方法

 コンピュータ関連の仕事をしているため、新しいことを常に勉強しなければならない。とくにソフトウェアの分野は、ここ数年で新しい技術が次々に登場し、ついて行くのが大変な状況になっている。できるだけ広く使えそうな技術を選び、1つずつ習得し続けているのが現状だ。
 新しいことを学ぶ際には、どうしても時間がかかってしまう。また、せっかく勉強しても、あまり使わないと内容を忘れてしまう。こんな特徴があるため、ただ本を読みながら勉強する方法は適していない。そこで、勉強方法も少しずつ改良しながら今に至っている。その方法と設計視点を紹介しよう。

 どんな分野の勉強でも一番大事なのが、その対象内容の全体像を的確に把握すること。全体像さえ正しく理解していれば、構成要素の役割や位置付けも正しく理解できる。そのため、勉強の初期段階では、全体像の把握だけに集中する。良い資料には、全体像を把握できるような内容が含まれていて、短期間で把握できるように配慮してある。しかし、該当する資料は非常に少なく、それを見付けるのが大変だ。もし見付からないときは、全体像の把握に役立ちそうな資料を選び、自分で整理するしかない。考えながら整理するほど、頭を使うので簡単には忘れない。
 全体像を把握できたら、個々の構成要素の内容を理解する作業に移る。できるだけ時間を使わない形で。そのため、大事だと思う箇所だけに集中し、他の箇所は斜め読みで済ませる。集中する箇所では、その内容を自分で評価してみるなど、頭を使うことを重視する。そうすれば、正しく理解できるし忘れにくい。
 もう1つ、忘れた後でも、大事な内容だけは思い出しやすいようにしておく。思い出すのに便利な道具を、勉強しながら作る方法がお勧めだ。後から実際に使いそうな内容を見極め、それを道具の形で作る。もちろん、勉強しながら。また、何かを設計したり作る作業が大事なときは、簡単にでも経験しておく。その際に、作業中に気付いたメモを残すと、本番で作る際に役立つ。
 以上の内容を整理すれば、次のようになる。意図が伝わりやすいように、条件と工夫という形でまとめてみた。

勉強方法が満たすべき条件と工夫
・条件:大事な部分だけは忘れないようにする
  ・工夫:全体像を理解しようと考えながら勉強
    ・必要なら、全体像を体系図か表にまとめる
  ・工夫:幅広く役立つ内容は真剣に評価する
    (汎用的な考え方、行い方に属する内容)
・条件:できるだけ短い時間で済ませる
  ・工夫:内容の全体像を早めに把握する
  ・工夫:大事でない点や細かな点は斜め読み
・条件:忘れた後でも、大事な内容だけは思い出せる
  ・工夫:後で使う際に役立つ道具を作りながら勉強
  ・工夫:価値があると思えば、実際の作成を経験
    ・作業中に気付いた点をメモとして残す

 これらのうち、役立つ道具に関して少しだけ補足しよう。どんな道具を作るかは、勉強する内容によって異なる。プログラミング言語であれば、主な機能の表記と意味を一覧形式でまとめておく。何かを作る作業が含まれているなら、その形式と意味を箇条書きでまとめる。もし体験が必要なら、簡単なサンプルを作ってみて、その作成物も残しておく。このように道具以外も作る。全体把握の段階まで含めると、代表的な作成物は以下のとおりだ。

勉強しながら作成するものの例
・全体の体系図または表:勉強対象の内容が複雑なとき
・書き方の要約集:プログラミング言語など
・作成物の形式:作成作業が含まれるもの
・試しの作成物:設計や作成を経験した方がよいとき
  ・作成時に気付いた点をメモとして残す
・自分なりの評価結果:価値や位置付けを明確にしたいとき

 こうしたものを勉強しながら作っておくと、実際に使うときに最初から勉強し直さなくてよい。また、これらを作ることによって、勉強の質もかなり向上する。さらに、暗記の必要性がかなり減る。多くの面でメリットがあるわけだ。ただし、かなり凝って作ると時間がかかるので、対象となる内容の重要度を見極め、大事な内容だけに限定して適用するとともに、上手に手を抜いた方がよい。それ以外の内容では、ここまでやる必要はないだろう。

 このような形で勉強していると、毎回思うことがある。勉強に用いる資料に、こうした内容が含まれていれば、自分でわざわざ作る必要がないのにと。数は少ないものの、プログラミング言語では書き方の要約集を、何か作る作業では書式と作成例を見たことがある。該当するのは一部であり、割合としては低い。世の中の解説書には、工夫する余地がまだまだ多くありそうだ。


下の飾り