川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2002年08月


●2002年8月31日

評価通知で悪い点だけ指摘する行為の改善

 上司が部下に評価を伝える際、意外にありがちなのは、良い点にはまったく触れず、悪い点だけを指摘する行為。このような形で評価を伝えると、頑張った部下ほどやる気を失いやすい。たとえ、悪い点を改善するための方法を教えてもだ。同時に、上司の評判も低下しやすい。良い点を誉めずに、悪い点だけ指摘する上司と思われるからだ。
 悪い点だけを指摘するのは、あまり深く考えずに伝えているためであろう。もっとも気にしているのは、悪い点を直してもらうことなので、どうしても悪い点だけを指摘する傾向が強くなる。逆に良い点は直す必要がなく、そのまま続けてほしいので、わざわざ指摘しない。こうした思いが自然に生じるため、考えないで伝えると、悪い点だけを指摘しやすい。つまり、知らず知らずのうちに、やってしまいがちな行為となるわけだ。
 当然、伝える側の上司は、悪気などない。それによって自分の評判が悪くなるなど、思ってもみないだろう。

 こうした点を理解できれば、部下に評価を通知する方法を改善できる。評価結果の良い点も意識的に見付け、悪い点だけ指摘する失敗をおかさないように。実際の行動では、評価結果を事前に整理する。そのときに、悪い点だけでなく良い点も洗い出せばよい。
 悪い点を説明する際には、改善方法などを一緒に付け加えるだろう。良い点に関しても、同じように考えてみよう。良いといっても最良とは限らないので、改善する余地はまだ残っていることが多い。それを見付け、どんな点を良くすればよいのかや、どのような方法で実現できるかを説明する。
 良い点を伝える際に一番重要なのは、相手を誉めることだ。この誉めるという行為は極めて重要で、部下のヤル気を大きく増す効果がある。改善の余地を伝える場合でも、まず誉めた上で、さらに高い目標を持つように導く。このようにしてヤル気を増やしながら、部下の能力を高めることも、上司の重要な役割である。

 ところで、良い点も一緒に加える方法だが、それで十分なのだろうか。この点を判断するためには、適切な評価に関する知識が欠かせない。評価結果というのは評価方法を適用した結果であり、評価方法は評価基準から求める。どんな評価でも評価基準と評価方法は必須であり、これらなしに評価しても、マトモな評価とはいえない。
 このように評価基準と評価方法を用意すると、それに従って評価すればよいだけになる。評価基準は複数の項目になるので、個々の評価基準ごとに評価結果が求められる。通常は、良い結果と悪い結果が含まれるだろう。それを全部説明するだけで、良い点も悪い点も漏れなく伝えることになる。さらに、総合的な評価も適切に伝えられる。このような形が望ましいし、評価される側でも納得しやすい。もちろん、評価基準や評価方法が良いことは必須で、不十分ならだんだんと改善していく。評価される側の良い意見も取り入れながら。
 もう1つ大事なのは、評価基準や評価方法を、事前に公開することだ。この場合の事前とは、業績評価の対象となる仕事を開始する前なので、評価の対象期間が始まる前となる。そうすれば、部下は何を重視して仕事をすればよいのか理解し、成果も能力も高くなりやすい。

 以上の話で一番重要なのは、何といっても評価技術である。それを身に付けないことには、部下の評価に限らず、適切な評価など困難だ。小さな対象まで含めると、評価する機会はかなり多いので、評価技術の基礎ぐらいは習得した方がよい。


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