川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2002年02月


●2002年2月13日

自分の時間を最大限に有効利用する読書法

 インターネットが発達してきたものの、いまだに本が重要な役割を持っている。価値の高い内容は、本として登場することが多いからだ。価値の低い本の割合は非常に高いものの、それで良い本の価値が下がるわけではない。
 私は以前、本屋に行って良い本を見付けたとき、必ずは買わなかった。「次に来たときでいいや」と考え、買わないときが多かった。しかし、後で思い出して読みたいと考えたとき、買おうと思っても買えないことが何度か続き、悔しい思いをした。こうした経験から学んだ今では、読む価値のある本だと感じたら、読む時間があるかどうかに関係なく、必ず買うと決めている。

 こんな買い方なので、未読の本がどんどんと増える。仕方がないので、本の読み方を改良することにした。読む価値を3段階に分け、それに応じた読み方を選ぶ方法に。もっとも重要な本は、最初から最後まで全部読む。もっとも価値の低い本(といっても、読む価値があると思って買った本なので、それなりの価値は持っている本)なら、全体の構成と主な内容の理解だけで済ませる。その中間の価値なら、重要な箇所だけ真剣に読むといった具合に。
 たいていの本は、書いてある内容の細かな部分まで理解する必要はなく、概要だけの理解で十分だ。細かな内容は、必要になったとき読めばよいからだ。もし全部を読んだとしても、細かな内容は使わないと忘れてしまう。逆に、概要なら覚えておけるし、それがあれば細かな内容の存在も思い出せ、必要になったとき困る可能性は低い。
 このような特徴があるので、細かな内容が必要な本だけ、最初から最後までを読めばよいと分かってくる。それ以外の本なら、頭に入れるのは、本に書いてある内容の大まかな考え方とか、中心となる内容で十分だ。使える時間が限られているので、それに合わせた読み方を選んだほうがよい。

 上記の3段階に分けた本の読み方の欠点は、最初に価値を判断しなければならないこと。当然、判断を間違うと時間が無駄になる。判断の間違いに気づくのは少し読んだ後なので、読み方に改良を加えた。読む前に判断するのではなく、読み進みながら判断し、途中で価値の判断結果を変えられる方式に。
 改良版の読み方では、すべての本を価値が低いとして読み始める。こうして読んだ結果、本の価値が中程度または高いと思ったら、それぞれに応じた読み方で続ける。もし中程度の価値の読み方で読み終わり、その結果として価値が高いと分かったら、残りの全部を読むことになる。
 この方法は、時間がない人に向いている。全部読む価値がある本でも、最初に概要をつかむだけの形(価値の低い本の読み方)で読むので、短期間に概要を理解できる。本当に時間のないときは、この方法で未読の本を次々と読破する。そして少し時間ができたら、中心的な内容だけを詳しく拾い読みする(中程度の価値を持つ本の読み方)。その中でも、急いで必要になりそうな本だけ、読んでない部分だけ読む(価値の高い本の読み方)。このような方法なら、時間の余裕に合わせた読み方が可能だ。

 3段階の読み方も少し解説しておこう。概要だけつかむ読み方では、最初に目次を読み、本全体で何を提供しようとしているのか考える。もし分からないなら「はじめに」を斜め読みする。それでもダメなら、概要が書いてそうな箇所を目次から探して、見付けたページを斜め読みする。そして見付けたら、そのページを真剣に読めばよい。これを続けると、目次を見るだけで、重要な箇所が見付けられるようになる。
 中心的な内容だけ詳しく拾い読みする方法では、目次を見ながら、書いてある中身の構成を考える。何かの問題点を解決する方法の説明なら、問題点、原因、対処方法、効果、実例という要素が挙げられる。何かの解説なら、必要な理由や背景、対象の概要、特徴、現状での価値などが挙げられる。こうして挙げた要素に該当するページを探し、そこだけ読んで終える。書いてある内容にもよるが、全体の2〜4割を読むことになるだろう。読みながら不足すると感じた点が出てきたら、残りのページの斜め読みで済ませる。
 本の最初から最後まで読む方法では、一部の主要箇所しか読んでないなら、最初から読み始めても構わない。もし3割程度を読んだ後なら、読んでないページだけ最初から読み、読んだページは斜め読みする。意外に大切なことだが、読んでないページを全部まじめに読む必要はない。重要度が低いと判断したら、斜め読みに切り替え、短時間で読み進める。重要でない内容ほど、読んだ後で忘れやすいのだから。

 以上のような読み方で、数多くの本を読むようにしている。読書で大事なのは、書いてある内容の重要部分を“理解する”点にある。黙々と読み続けるのではなく、考えながら読むことが大切だ。また、ときには、書いてある内容を評価する必要もあるだろう。こうした意識で読むと、書いてある内容が身に付きやすい。もちろん、そのままの形で身に付く場合と、改良した形で身に付く場合の両方がある。


下の飾り