川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2001年10月


●2001年10月23日

行政がいつまでも信用されない理由

 狂牛病の問題が悲惨な状況になったため、これまで無策に近かった行政も、さすがに必死で動き出した。厚生労働省の発表は、予想したとおり「安全」の連呼。また、こうした大きな問題なのに、発表に大臣が出席せず、副大臣が代理を務めて不自然だった。おそらく、発表された対策の中身では、大臣が「安全」を連呼したくなかったのだろう。
 生命の安全性に関わる問題だと、国民は正直に行動する。危ないものは買わないのだ。当然、急に売れなくなって牛肉の価格は下がり、関係業者はあわてふためく。ここに来てようやく対策が打たれたが、それで国民は信用しただろうか。ニュース番組のインタビューでは、まだ安心できずに食べない人と、食べ始める人の両方が紹介されていた。食べると決めた人でも、完全に安心して食べるわけではない。最低限の安全性が確保されたみたいだし、ずっと食べてなかったのでそろそろ食べたくなったのが、主な理由だろう。つまり、いくら「安全」を連呼しても、多くの国民が行政を信用してないと思われる。
 では、なぜ信用されないのだろうか。その大きな理由は、今まで何度もウソを付いてきたからだ。狂牛病の問題では、「日本では発生しない」と言い続けてきたが、それが間違いだと証明されてしまった。しかし、なぜ間違ったのかの説明はしてない。さらに、羊の狂牛病を隠そうとしてたこともバレてしまった。こんな状態なのに、いくら安全だと力説してみても、心から信じる人などまずいない。
 実は、最初に間違っても信用される方法がある。間違った理由を正直に説明し、再び発生しないような対処まで実施することだ。狂牛病問題であれば、「日本では発生しない」と判断した根拠や決定過程を示し、そのどこが間違っていたのか明らかにする。これによって原因が突き止められるので、同じ原因で間違いが再発しないように、どんな点をどのように改善すべきか求める。後は、求めた改善を実施すればよい。また、重大な問題に関わる判断を発表する際には、第三者がレビューできるような形で、根拠などの資料を発表しなければならない。
 そもそも、税金で運営されている組織では、重大な問題で大きく間違った場合、間違った理由を国民に説明する責任がある。もちろん、再発防止の改善策も含めて。それをまったくせずに、信用してほしいと望むのは虫が良すぎる。しかも、「安全」の連呼で何とか乗り切ろうという意識も、マトモな対応からほど遠い。行っている内容は、いろいろな点でレベルが低すぎる。
 ここでは狂牛病問題だけ取りあげたが、他の問題でも似たようなものだ。これからは、前述の良い対応を厳守して、もっとマトモな行動をしてもらいたい。あまりにも能力が低くて理解できないと困るので、良い対応の要点を以下に整理しておこう。

重大な問題で、行政が守るべき要点
・判断結果だけでなく、その根拠も含めて発表する
 (対処方法の発表でも同様)
・判断結果や対処方法の評価結果を公表する
・判断や対処が間違った場合、その原因を明らかにする
・再発防止のために、対処方法を求める
・求めた対処方法を実施する

 こうした内容が理解できないなら、行政を担当する資格がない。さっさと去って、もっと能力の高い人材と入れ替わってもらいたい。


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