川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2000年10月


●2000年10月28日

タバコに付いてる注意書きに疑問

 嗜好品であるタバコは、吸う人の健康を害すると判明しているため、注意書きが義務づけられている。昔は「健康のため吸いすぎに注意しましょう」だったが、その後「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」に改められた。タバコを吸わないので最近の注意書きは知らないが、おそらく似たようなものだろう。
 これらの注意書きの文面を見て、いつも感じることがある。他の先進国と比べて、日本の注意書きが甘いという点ではない。もちろん甘いと思ってはいるが、気になるのは別な点である。
 タバコによる健康の害は、吸っている人だけでなく周囲の人にも及ぼすと、テレビ番組や雑誌で何度も見た。たしか、タバコの先から出る副流煙の方が、タバコを直接吸う煙よりも、有害物質が多いという内容だったと思う。
 職場、食堂、待合室、乗り物など、タバコの煙から簡単に逃れられない場所は意外に多い。タバコを吸わない人なら、かなり強く感じているだろう。もちろん、自分のその一人だ。そんな経験をすると、避ける最大の方法は、できる限り外へ出ないことだと気付く。このように、喫煙は、目に見えない迷惑を多くの人にかけている。
 既存の注意書きを読むと、喫煙者本人の健康だけを問題にしている。習慣性の高い嗜好品という問題もあるが、本人が好きで吸っているのだから、本人の健康を害するのは自業自得であろう。それより注目すべきなのは、何も関係ない第三者の健康まで害する点だ。こちらのほうが、より重大な問題である。
 注意書きが長くなっても構わないので、その点も注意書きに加えてほしい。たとえば、「周囲にいる人の健康まで害します。これは犯罪と同じです」というのはどうだろう。この文面の場合、「犯罪と同じ」という部分を目立つように強調してほしい。さらに「そんな行為を続けて何とも思わないんですか?」や「周囲に人がいない場所で吸いましょう」といった文を続ける手もある。そもそも、注意書き自体が目立たなすぎる。タバコの一番広い面を用い、その半分を使うぐらいの規則が必要だろう。
 もちろん、注意書きを強くするだけではダメだ。待合室や乗り物の中で、定期的にアナウンスするなど、周囲の人に迷惑をかけていると知らせる努力が必要である。たとえば、完全禁煙でない航空機の中なら、運航中に「喫煙は副流煙によって周囲の人の健康まで害します。これは犯罪と同じです。機内での喫煙は極力我慢しましょう」と何度もアナウンスする。他の場所でも、同じようにアナウンスすればよい。
 このような注意をいろいろな場所で繰り返すと、喫煙者にプレッシャーがかかる。非常に吸いづらくなるはずだ。その結果、吸う本数が減るし、「こんなんなら真剣に禁煙しよう」と思う人が増えるだろう。そうすれば、本人にとっても良いことだし、余計な迷惑を受ける人も減る。
 もっと別な改善方法が考えられると思う。ともかく、タバコを吸わない周囲の人に迷惑をかけるのだけは止めてほしいし、迷惑をかけているという自覚を持ってほしい。タバコの注意書きの話題を聞くたびに、こんなことを考えてしまう。


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