川村渇真の「知性の泉」

浮遊思考記録−2000年08月


●2000年8月9日

酔った状態での思考回路も積極的に利用する

 酒を飲むのが好きなせいで、寝る前に自宅で飲む機会が多い。たいていはテレビやビデオを観ながら飲むため、映像に登場する何かが発想のトリガーとなって、突然とアイデアが思い浮かんだりする。面白いのは、まったく関係ない分野の良いアイデアが思い付く点だ。
 もちろん最初は、良いアイデアが思い付いたことすら覚えてなかった。ところがあるとき、前日に何か良いアイデアが思い付いたことを覚えていた。ただし、その中身に関しては、何も思い出せない。酔っぱらいながら「これは、なかなか良いぞ」などと感激したことだけを記憶しているだけだ。そんな状況が何度か続いたので、本当に良いアイデアかどうか、確かめたくなった。
 どうするか悩んだ末に、紙のメモ帳を使うことにした。パソコンに入力する方法だと、酒がこぼれてマシンを壊す可能性があるので、あえて紙を選んだ。すぐメモできるように、メモ帳とボールペンを飲む場所の近くに置いておく。それだけだとメモしない可能性が高いため、シラフのときに「酔ってアイデアを思い付いたら、これに絶対メモするぞ」と何度も念じてから、飲み始めるようにした。
 何度か繰り返すうちに、簡単な内容ぐらいは忘れずに書く癖が付いた。しかし、1行ぐらいしか書かないため、具体的な中身を理解できない場合の方が多い。今度は、「とことん詳しく書くぞ」と念じてから、飲み始めるようにした。すると今度は、メモする量が数行に増えて、内容が分かるようになった。ある程度まで詳しく書いてあると、それより深い内容がシラフのときでも思い出せる。把握に十分なメモを残す癖が付いたわけだ。
 肝心のメモした中身だが、半分ぐらいはまったく使えないレベルだった。けれども、2〜3割はかなり良い内容が含まれている。「これは、なかなか良いぞ」と感激していたのは、あながちウソではなかったわけだ。
 酔ったときに良いアイデアが出る理由は、よく分からない。しかし、実際にアイデアが出ているので、積極的に利用している。ある程度の確率で結果を出せる方法なので、何も問題はない。
 実は、酔っぱらいながら仕事をするのは、以前からやっていた。雑誌の原稿を書く仕事で、忙しくて時間がないとき、飲み会から帰ってきてすぐに書き始めていた。必要な分量だけ書き終えると寝て、次の日に内容を検査しながら、少し修正してから編集部に送っていた。この方法だと、時間を有効に使えるし、たまにだがシラフのときより良い内容が書けたりする。シラフに戻ってから内容を確認して修正するため、悪いまま提出する心配もない。こういった方法を以前から使っていたので、酔いながら頭を使うのに慣れたのかも知れない。
 一番面白いのは、酔った状態とシラフの状態で、思考結果が少し異なる点だ。いろいろと観察した結果、酔っているときは、思考の柔軟性が増しているように感じている。たまに突飛な発想が出てくる点が、もっとも高い評価ポイントである。ベロンベロンに酔ったら何も考えられないが、ほどほどに酔った程度だと、シラフの状態とは別な思考回路になるようだ。
 以上ようなやり方は、面白いだけなく、かなり有効だと評価している。自分の脳味噌は1つしかないが、酔った状態とシラフの状態という2種類の思考回路を持っているとも解釈できるからだ。同じテーマを2種類の思考回路で処理したら、より幅の広い検討が可能になる。2倍とはいかないまでも、自分の脳力を1.5倍ぐらいには拡大できているのはないだろうか。
 ただし、酔った状態での思考回路には、大きな欠点がある。たいていは関係ないときに思い付くため、扱うテーマを意識的に選んで検討できない点だ。それでも、確実に実績を積み重ねているため、今後も続けて利用しようと思っている。
 酒を飲むのが好きな人は、以上の方法を試してみたらいかがだろうか。人によって異なるため保証はできないが、2年ぐらい訓練をすれば、メモする癖は付くと思う。メモした内容を評価して、シラフの状態とは別な良いアイデアが出るなら、積極的に利用する価値は大きい。


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